世界史とつなげて学べ 超日本史 日本人を覚醒させる教科書が教えない歴史

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  • KADOKAWA (2018年2月16日発売)
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日本では、社会科教育において、「日本史」と「世界史」が明確に分離されてきた。そのせいもあろうが、日本の歴史は、すなわち世界史の一部であるという意識を持てたのは、つい最近のことのように思う。
やや大げさにいえば、このような意識改革をもたらしてくれたのは本である。例えば出口治明の『哲学と宗教全史』や『全世界史』であり、内藤博文の『地政学で読む近現代史』であった。そして、この『世界史とつなげて学べ 超日本史』もその系譜に連なる一冊である。

鎖国を経て、開国した後の近代以後の日本史においては諸外国との接点も見えてくるが、中世以前の日本史(特に学校で学ぶ「日本史」)は文字通り日本の歴史だけを語っている。だから、聖徳太子が17条憲法を制定したり、律令国家を目指したのも、そこにどう外国が関与していたのかを理解しようとはしなかった(できなかった)。聖徳太子は偉い人で、賢明だったがゆえに、このような制度を生み出したのだと理解していた。
だが、どうしても拭えない一つの疑問があった。江戸時代の「鎖国」制度において、欧州諸国の中でオランダとだけ通商を認めていたのはなぜなのか? この疑問は、長い間ずっと頭の中でくすぶっていたように思う。これは、鎖国しているのにどうしてオランダとだけは貿易ができたのか、ということではない。貿易の対象が、私の中ではより強国だと思っていたイギリスでも、フランスでもなく、むろんアメリカでもなく、「オランダ」だったことが疑問だったのである。
日本史の教科書もその部分だけは丹念に読んでみたことがあったが、書かれていたのは「江戸時代、幕府は鎖国政策をとった。対外貿易は、長崎の出島に限られ、貿易相手もオランダと中国に限定された」という無味乾燥な解説だけであった。

歴史とは、過去に起きた(歴史的)事実をたどることにあるのだろう。だが、事実をたどるとき、そこには本来さまざまな因果関係の連鎖が存在する。ある史実を理解しようとしたとき、その因果をたどることが必要だとすれば、そこに「なぜ(Why)?」という疑問がわくのも当然だろう。
この「なぜ(Why)?」を解き明かすためには、日本史を俯瞰する必要がある。日本史とは、あくまでも「日本」を中心として、日本と諸外国との関係を歴史的事実の中で理解することにある。そう思い、そのようなコンセプトの本を探した。
そして巡り合えたのが本書だと思っている。長年の鎖国にまつわる疑問も、本書によって解消された。鎖国からイメージされるような、日本は世界から「閉じた」国などではなく、古代、中世、近世、そして近代、いつの時代も諸外国と関係を持ちながら日本という国家を維持してきたのだということが、本書のような本を読むことで理解できる。
その意味で本書のタイトルとなっている『世界史とつなげて学べ 超日本史』は、看板に偽りなしと言える。日本史のイメージをドラスティックに変える一冊である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(日本)
感想投稿日 : 2024年3月15日
読了日 : 2024年2月19日
本棚登録日 : 2024年2月4日

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