深まる深まる。物語がすすむにつれて、文体が心地よくなってくる。
ここにきて視点となる者が増えて、サスペンスドラマ感が増す。
主体の2人に対して、ある種の対義語として客体と呼んでみるが、ともかく外からの視点が今後どのように作用していくのだろうか。
面白い点はこの1Q84年という場(時と場を要素にもつ空間)において、2つの月に端的に表される舞台の変化(それはとてもシームレスに行われているので、作中の主要人物である2人を含め我々読者もまったく継ぎ目がわかっていない)は、主体の2人のみが知覚するところであり、その知覚するものとしての主体(いわば認識とのずれ)が織り成す不可思議な物語であった本作が、客体の主人公があらわれたことで世界が確定した感があるということだ。これにより1984年は確かにあの高速で青豆が聞いたシンフォニエッタをきっかけにして1Q84年に移行し、元の次元からは切り離されたことがわかってくる。同様に客体にとってはやはりなんの違和感もなく別の世界に移行がなされていることもわかる。
ともあれ物語は深まり、佳境を向かえてきた。
それぞれの物語(主体の2人だけでなく、登場人物の全員にとっての物語を指す)がどのような終息あるいは収束を向かえるのか期待が高まる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年7月19日
- 読了日 : 2020年7月19日
- 本棚登録日 : 2020年7月19日
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