公教育をイチから考えよう

  • 日本評論社 (2016年8月12日発売)
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オランダの先進的な教育を研究しているリヒテルズ直子さんと、
教育哲学者苫野さんの共著を読んでいる。

随分前のことだけれども、
リヒテルズさんの番組を見て、大いに感動して、学んだことを
学校教育現場で生かそうとしたら、すぐに周りの教員から呼び出しを食らった。

子どもを人格的自由な尊厳を持って見てる人は少ない。

学校はまるで全体主義国家の牢獄みたいだ。

対話が成立しない。
何でも上から押さえつけて、何を言っても否定される。

大学生が教職課程で学ぶ全ての教育論は現場では通用しないばかりかそれを実践しようとすると、クビが危うくなる。

物事をゆっくり考えたり感じたりする余地がなくて、
「そんな余裕はないよ」という洗脳状態が当たり前になっている。

塾も輪をかけて、この「学校教」の洗脳に加担している。

正直、両者で勤務している時は、息苦しさと虚しさしか感じなかったし、
子どもたちの芽をぎゅうぎゅう詰めの畑で悪質な化学肥料漬けにしてそれに合わない者は外に放り出すという流れにしか思えなかった。
十二年間の教育がそのようなものであるなら、日本という国が、根っこから腐っていく以外にない。

力なき思想、力なき理想は無能、を実感させられた。

本を読んで、たくさん考えるのだが、少し光が見えては閉ざされて、憂鬱な日々。

外に出て行って、志のある人と交流していくうちに世界が広がった。

教育に対する根本的な考え方、そして構造自体を変えていかないといけない。

オランダの教育改革で興味深かったのが、
市民革命期に生まれた宗教的政治的なものを排除した中立的な公教育に対するプロテスタンティズム保守派の運動がきっかけで、
「教育の自由」を巡って、九十年間国会で闘争してきた歴史が、
オランダの公教育無償と自由という文化を形成してきたのだということ。

また、オルタナティブ教育は、産業化や都市化によって伝統的共同体が崩壊し、共同体の持つ教育力の低下に危機を覚えた教育者たちがはじめたものである。

自由に反対する保守派が教育の自由を生み出し、
教育の均一化から自由で創造的な教育が生み出される。
歴史の逆説である。

ヘーゲルは、歴史は自由の実現の過程であると述べたが、
ひょっとしたら自由が花咲く一つ手前には、強烈に自由を制限するアンチテーゼが必要悪として存在しているのかもしれない。

「悲しむ者は幸いである」。




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感想投稿日 : 2019年5月1日
読了日 : 2019年5月1日
本棚登録日 : 2019年5月1日

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