流れとよどみ―哲学断章

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  • 産業図書 (1981年5月12日発売)
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大尊敬している方から、イーガンの『万物理論』の感想として「大森荘蔵と野矢茂樹」というキーワードを頂戴したので、これは読むしか…!!となり読み易そうなものを借りてまいりました。
野矢先生は、野矢哲といわれる名物授業を1年生の時に取っていたのですが(めちゃくちゃ教室を覚えている笑)、授業は面白かった!という感想のみで、中身は覚えていないのが残念というか反省ものです…今は退官されて別の大学にいらっしゃるんだな…懐かしいなあ…

本書を読み進めると、これどこかで見た表現かもと思うことが度々あったのですが、野矢先生の授業で見たもののような気がする。他人の痛さは想像できないとか。

以下好きだった箇所
3. 記憶について
しかし、では死んで久しい亡友を思い出すときもその人をじかに思い出しているのか、と問われよう。私はその通りであると思う。生前の友人のそのありし日のままをじかに思い出しているのである。その友人は今は生きては存在しない。しかし生前の友人は今なおじかに私の思い出にあらわれるのである。…そのとき、彼の影のような「写し」とか「痕跡」とかがあらわれるのではなく、生前の彼がそのままじかにあらわれるのである。「彼の思い出」がかろうじて今残されているのではなく、「思い出」の中に今彼自身が居るのである。(p.23)

13.古くて新しい生理学
われわれの住むこの一つしかない世界を科学的に描いたものが物質的生理学、その同じ世界を知覚的に描いたものが感覚の世界、そしてこの二つの描写はただ「重ね描き」さるべきものであって、一方が他方を生んだり感じたりする必要はない。そのように思われる。(p.104)

15.心の中
恐怖と夜の森の話
ありもせぬ「心の中」があるとすれば、それはただありもせぬ心の中でしかあるまい。(p.120)

17.ロボットの申し分 
ということはすなわち、あなたが人間である限り、正気の人間である限り、他人に心を「吹き込む」ことをやめないということです。この「吹き込み」は人間性の中核だからです。このお互いの「吹き込み」によって人間の生活があり人間の歴史があるのです。それによってお互いの人間がお互いを人間にするのです。…どうして私にも心を「吹き込んで」くれないのですか。いや既に吹き込んでいることを認めて下さらないのですか。
どうか今少しあなた方の心を開いて私もあなた方同士の間のアニミズムの中に入れて戴きたい。それによってあなた方の人間性もより豊かになろうというものです。(p.140-141)

21.過去は消えず、過ぎゆくのみ
だが「過去」という言葉も失せるとき一体過去について何を語ることができるのだろうか。それは生の言語で死を語るのに似たことだからである。(p.278)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2024年2月16日
読了日 : 2024年2月11日
本棚登録日 : 2024年2月11日

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