ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房 (1987年3月10日発売)
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感想 : 4
5

この作品は間違いなく私的オールタイムベストの一冊となりました。『幼年期の終わり』が好きだし、エヴァの人類補完計画も好きなので(?)、そりゃ好きだろという感じなのですが、ベアの『鏖戦/凍月』を読んで感じた美しさ(グロテスクさを内包する美しさ)がこちらでも遺憾なく発揮されていて、もうずっと唸ってた。ベア好きだわとなったので、イーガン読みつつベアも読みたい。これで1983年の作品なのか…
正直、変態する様は気持ち悪いし、どんな感じなのかビジュアルで見たらもっと気持ち悪いのだろと思う。それから変態したあとの人類が語る進化後があまりにも素晴らしすぎて本当かどうかわからないし(作中でそれな?となった)、カルトの勧誘みたいなので抵抗感があったのですが、安部公房の『第四間氷期』を読んでから、「真の未来は、おそらく、その価値判断をこえた、断絶の向こうに、「もの」のように現れるのだと思う」という価値観に共鳴しているので、これですよこれこれとなってました笑

以下好きだったところ
「ブラッドミュージック」という表現。「きいているのさ…音だ。音じゃない。音楽みたいなもの。心臓、あらゆる血管、動脈を、血管を流れる血の摩擦。活動をだ。血の中の音楽をだよ」何度かたとえられる音楽・交響曲という表現が好きだった

「文明ってやつはこれまで愚かな破局を迎えることがわかっている。戦争や環境やー」

「体の中で起こっていること、内奥の宇宙以外、重要なことなどありはしない」

「ヴァージル・ウラムは宇宙になろうとしていた」

「夢だ。市街がゲイルを凌辱する。その上に宇宙の火花がまき散らされる。なんという苦しみ…そしてまた、なんという美がひそんでいることかー共生と変身という、新しい種類の生。」

「あなたの≪魂≫はすでに記号化されているのだよ、バーナード」

「ジャクソン・ポロックの絵を回転させたみたいに見えたぜ」「さもなきゃ、ピカソだ」「わたしにはマックス・エルンストにとってもよく似てると思えたわ」

「ずっと夢に見て来たものを何もかもひとつに集めたみたいだ」…「夢の竜巻か。ひょっとしたら、変化に巻きこまれた人たちみんなの夢かも知れない」
圧倒的なイメージ

「いま、バーナードはヌ―サイトの尺度にちぢんだわけでも、肉体化したわけでもない。彼の思考はただ存在し、それが存在する場所は胸がつまるほど美しかった。」

「ノヴァ」

「放蕩してきた月たちを故郷に迎え入れた。…ヌー領域はその翼をふりひらいた。翼がふれると、星々は踊り、祝い、燃える雪片となった」

何一つ失われはしない。何一つ忘れられはしない。
それは血の中に、肉の中にある。
そしていま、それは永遠になったのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2023年8月4日
読了日 : 2023年8月3日
本棚登録日 : 2023年8月3日

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