ひかりの剣

著者 :
  • 文藝春秋 (2008年8月7日発売)
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「ジェネラル・ルージュ」速水晃一と「ジーン・ワルツ」清川吾郎が医学生だった頃の、そんな二人が主役。

今回の舞台は、1988年の医学部剣道大会「医鷲旗大会」−。それに青春を懸けた医学生達の姿を描いた青春小説。一部「ブラックペアン1988」と重なるので、世良くんと渡海先生がクロスオーバーしてチョロっと登場。

年に一度、夏に行われる「医鷲旗大会」で、手にした者は外科の世界で大成すると言われている「医鷲旗」を巡り、
東城大医学部剣道部の猛虎・速水晃一、帝華大医学部剣道部の伏龍・清川吾郎、剣の才能を持つ二人の男が、全存在をかけて戦う。

面倒見が良く責任感が強いが故に「責任感」の鎖に縛られている速水と、自己主義が強く無責任だがあり余る才能を消化しきれず「才能」の呪いにかかっている清川の、面白いほど対称的な二人の戦い方がこの物語の見もののひとつ。そしてそんな二人の戦いの陰で糸を引くのが、帝華大から東城大佐伯外科に招聘された阿修羅・高階顧問。彼の操る糸により、速水と清川が如何に影響されてゆくか…高階が相反する彼等にどう対峙してゆくのか…

これはこれで青春小説として読めるけれど、今までが現代医療にスポットを当てた小説だっただけに、少々物足りなさを感じるのは否めない。ただ、個人的に清川の弟・志郎が良かった。剣道の腕も勇猛果敢で確かなのに兄には後一歩及ばないし、兄の居る帝華大に入学出来る学力もない。兄に反感と対抗心を抱きながらも、必要以上に兄を意識するあまり青臭い感があったけれど、速水がある理由から主将代行を指名した頃からの成長ぶりが良かった。清川志郎のその後が気になる限り。

この物語の20年後には、速水は「ジェネラル・ルージュ」の異名を取るに相応しくその名を馳せ、救命救急のエースにしてICU部長としてジェネエラルぶりを遺憾なく発揮してくれるし、清川は相変わらず軽妙洒脱で自己主義が強いが、帝華大学医学部産婦人科学教室准教授として頭も切れる一面を見せてくれる。ジェネラル速水は伝説をつくり、清川准教授はトップをゆく−。そんな二人の今後も楽しみでもあり、他の人物も何れ今後の作品でクロスオーバーして登場する事があるかも…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2008年11月19日
読了日 : 2008年11月19日
本棚登録日 : 2008年11月19日

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