「文明論之概略」を読む (中) (岩波新書 黄版 326)

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  • 岩波書店 (1986年3月27日発売)
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【「文明論之概略」を読む 中】
丸山真男著、岩波書店、1986年

福沢諭吉の「文明論之概略」を丸山真男と共に読む岩波新書の第2巻。

「文明は人の智徳の進歩なり」から始まる本巻では、儒教的精神の「徳」よりも、近代的精神の「智」こそが大切なのだ、と論じている。

中でも注目したいのは、丸山が福沢の述べる「智恵」について補足している224頁ではないだろうか。

知の建築上の構造として、下記の4階層の三角形で説明している。

Information (情報):真偽がイエス・ノーで答えられるもの
I
Knowledge(知識):学問(「物事の互いに関わりあう縁を知る」by福沢)
I
Intelligence(知性):理性的な知の働き
I
Wisdom(叡智):庶民の智恵、生活の智恵など

特に「情報」と「知識」の違いを
・第二次大戦はいつ勃発したか? (情報)
・第二次大戦の原因は何か? (知識)
と具体例をもって説明し
ーー
知識とは無数の情報(史料)を組み合わせねばならないので、イエス・ノーで答えが出せないのです。(中略)解答としてあきらかな誤謬は指摘できますが、「正解」というものはありません。
ーー
と言い切っている。
学校の教育とはどうあるべきなのか、根本的な問いかけがあるように読めた。

また、この知識の三角形構造が、「情報優位」の逆三角形になった情報最大・叡智最小の人を「秀才バカ」として「クイズには向いているが、複雑な事態に対する判断力は最低だ」とこき下ろしている。

太平洋戦争へ至る判断を下した政治家、軍部、官僚、学者への丸山の厳しい言葉であると同時に、現在はますますそうなっていないかと自らにも刺さってくる言葉だ。

#優読書

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典
感想投稿日 : 2019年1月6日
読了日 : 2017年7月1日
本棚登録日 : 2019年1月6日

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