思ったよりも、「愛」は感じられなかった。
ギルキーは犯罪者なので、感情移入のしすぎは良くないのだろうけれど、それにしても、作者はギルキーをずいぶん突き放して見ているのだな、と思った。
そもそも、ギルキーは、本を愛しているというよりは、稀覯本をたくさん持っている教養ある自分を愛しているのであって、古書店主たちとは違うわけで。
ギルキーにはギルキーの論理があり、この世界が不公平で不条理であることは確かで、そこから、泥棒への道と諦めへの道との分岐点において、人は何を選ぶのか。
本を所有したい欲求、もっと言えば、美しい本を所有したい欲求というのはある。それは本に限らず、美術作品においてもそうだ。そして、それを手に入れたことで、いつでも手に取れる状態になったことで、満足する、というのもある。誰かに見せびらかしたい、というのではなく、ただ自分の中の満足として。それが「愛」なのか、それとも、愛しているから多くの人の手に渡ってほしいと願うのか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
海外文学
- 感想投稿日 : 2023年5月24日
- 読了日 : 2023年5月24日
- 本棚登録日 : 2023年5月24日
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