生物の分類を論じた本は、多数ある。そのなかで、この本の大きな特徴は、「名づけること」から説き起こすことである。きわめて日常的で、基礎的なところから話が始まるから、専門的な分類の話ではなく、一般に読める本になっている。
著者は構造主義生物学を旗印とする。それがどういうものかについて、すでにいくつかの著書も書いている。時間とともに変化する事象を、普遍の構造によってコードするのが科学だ。それが著者の主張である。だから、「構造」主義だという。
そうした考え方からすれば、分類学はもちろん重要な科学である。ただし、分類とは、手続きの定まった単なる「作業」ではない。それは、思想を構築することである。そう著者は言う。
池田清彦は生物学の論客である。こんどの本もそうだが、池田が義理を立てているのは自分の思想であって、それ以外ではない。それが、理科系出身の著者による議論としては、きわめてすっきりした印象を与える。池田に悪口が多いのは、義理立てすべき相手が自分以外にべつにないからである。
ところで具体的に分類をどうするか。そこで池田は、一種の古典主義に戻る。常識といってもいい。ただその常識を自分の「構造主義生物学」で包み込もうと意図するのである。
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- 感想投稿日 : 2010年4月3日
- 本棚登録日 : 2010年4月3日
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