水島爾保布の細微で流麗なカバーや挿絵もそうですが、『人魚の嘆き』『魔術師』は、主にイギリスの天才夭逝画家オーブリー・ビアズリーや、ワイルド等の世紀末文学の影響を色濃く受けたエキゾチックな風情に仕上がっています。エキゾチック…と言いましたが、まるっきり外国風情か言われればそうではなく、「美」を表現するのに多用されるペダントリーに満ち満ちた語彙や、数多の香水の名前、美食、珍酒の羅列などは、やはり「耽美派」と呼ばれた谷崎潤一郎という作家にしかできないと思います。要は、西洋への憧憬を日本文学という形で表現している谷崎潤一郎がスゴすぎる…! ということです。個人的に谷崎潤一郎の短編で好きなのは、ダントツでこの二篇です。中井英夫の解説も素晴らしいかったですね。
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- 感想投稿日 : 2022年3月7日
- 読了日 : 2022年3月7日
- 本棚登録日 : 2022年3月7日
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