今までいろんな丸尾作品を読んでおきながら、この傑作に手を伸ばすのをすっかり忘れていました。丸尾先生の作品の中でも、「少女椿」や「犬神博士」と並ぶ、まず間違いなく人気作でしょう。個人的には、どちらかというと丸尾先生の長編よりは短編が好きな方ではあるのですが、やはり長編作品も圧巻です。しかも大判なので、さらに迫力圧巻!
さて今作、「笑う吸血鬼」は、雰囲気としてはライチ光クラブに近いです。かなり荒んだ感じの中学生がたくさん出てきますし、エログロ描写も程よいくらいに洗練されております。まあ何が言いたいかと言えば、解説でいみじくも荒俣さんがおっしゃっているように、グラン・ギニョールな世界観であるわけですな。そして吸血鬼というモチーフであるわけですから、疼かないはずがありません笑。
吸血鬼となって残虐を尽くす毛利耿之介に、非道な犯罪を憧憬する辺見外男、性のトラウマと鬱屈した衝動を抑え込む宮脇留奈……彼(彼女)らの両親が登場していることからも、明らかに思春期の男女の反駁や衝動を典型的に象徴している、魅力的なキャラクター像ですよね。この時点で既に、惹き込まれてしまうのです。そして圧倒的なまでの画力! お耽美ですよねぇ、なんでこんなにも美しいのか……
まとめると、短編に見られるような前衛的な描写はあまりないものの、魅力的なキャラクターと、わかりやすいけれども意を衝くストーリーが堪らない作品でした。やっぱり丸尾先生はすごい! どこまでもついて行きます!
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- 感想投稿日 : 2022年6月13日
- 読了日 : 2022年6月13日
- 本棚登録日 : 2021年8月3日
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