戦争を論ずる時に困難が伴うのは、その規模が大きく、様々な立場からの「見方」が存在するからだと思う。その点、この本は「私の中の」と限定することで現地の所感や考えを詳細に記述していると思う。戦場の死臭や、密林行軍の困難、兵士の心情が現場ならではの描きだされ方をしていて、非常に分かりやすく興味深い。「私の中の」と断りながらも客観的事実はちゃんと切り分けられて論旨も明確。この本で言いたかったのはなんだろう?と思うと「戦場で戦っていない人達の無責任さがいかに戦場を陰惨なものとして、ボロボロの敗戦へ導いたのか。そして、その現象は何時の時代でも変わらず起こっている事だ」ということじゃないか、と感じた。この本を読むと密林の泥が足に絡みつき、行軍の疲れが肩にのしかかるように思える。だが、著者は屹立として「戦場に行った者でなければ到底分かるものではない」と読者の安易な共感を撥ね付ける。長い歴史から見ると今の時代に日本人として生まれた事は如何に僥倖なことか、そしてそれを安穏として貪っているだけではいけない、と思わせてくれる本。リアルな「重み」と「質感」がズッシリと読み応えに繋がっています。
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- 感想投稿日 : 2006年11月5日
- 本棚登録日 : 2006年11月5日
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