- Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106444203
感想・レビュー・書評
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コロナのお陰で積読本消化月刊。全集を買ってから30年近く経ってしまったが、最近アニメ化されたことによってやっと読む気になった。著者のSFは若い頃よく読んだが最近は偶にという具合になってきた。本作は珍しく推理小説の体をとっているが、この著者が時々やる冗談小説の類だろうと思う。昭和50年代の作品ということで、それ程景気も良くなくバブルのかなり前で、富豪ぶりもかわいいものだ。後に現れる類似ものの草分けのようであるが、文庫の解説にあるようにアメリカドラマに確か「バークにまかせろ」なんていう富豪刑事物もあったっけ。
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TVでドラマをたまたま一度見て、そういえば筒井康隆さんに同名の小説があったはずだなあとか思っていたらやっぱり原作でした。
でもあれの主人公は男だったはずだなあとか思いちょっと読んでみようかなと手を出してみました。
ある作品があるときそれを創作した者の名前を受け手が知っている場合、その名前自体も作品の一部となります。
筒井康隆さんの場合この著者の作品だから面白いと感じられることも多いでしょう。
無名の人間の作だったら無視されるようなものだったとしても筒井康隆さんの作品だと思うと面白く感じられるのです。
今回の場合もそうかもしれません?
べつにこれが悪いというわけではないです。
作者も自分の名前の効果をある程度利用していると思われます。
とりあえず、異物との遭遇が筒井康隆さんですね。
それゆえの夜中の歯ぎしりのような不快感や、逆に、増殖する違和感によるむしろ快感やあるいは笑いがあったりするのですけど、今回の富豪刑事も軽い読み物だけどやはり桁外れの「富豪」という異物が存在するときの状況を描いているとは思います。
異文化コミュニケーションですね。えっ!?
そのギャップが楽しいということになるでしょう。
富豪刑事くん本人の性格自体はむしろ常識人なのですけど。
異物は筒井康隆さん自身のこともありますし、文体とか、作品の手法なんかのこともありますね。
読者が作品に描かれている異物と出会うこともあります。
作品そのものが異物ではありますね。
いったい何を書いているのでしょう?
(2006年06月06日読了)