まるまれアルマジロ!: 卵からはじまる5つの話

著者 :
  • 理論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784652079478

作品紹介・あらすじ

幸せに必要なものは愛?信頼?お金?-ぼくの幸せはぼくが見つけます。安東みきえの書き下し短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 安東みきえさんのこの本は‘卵があった’の一節から始まる五つの連作短編集。

    どの短編もハートウォーミングな中にも毒を含んでおり、そのピリリとした刺激が癖になりました。

    『オケラのお月見』
    オケラの家族は土の中から出たことがない。物知りの父さんに聞けば何でも教えてくれるからだ。ある日、子供たちは話を聞いてお月見がしたいと言い出すが...。

    ...土の一粒一粒には‘土の記憶’があって、耳をすませば‘土の声’が聞こえる、という世界観が素敵。土は元々生き物であり物質であるから、だそう。そうだとしたら世界はなんと賑やかだろう、と思った。

    『オオカミの大きな勘違い』
    森の中で卵をみつけた気の弱い狼。
    もって帰ってきてゆで卵にしようと思い立つ。
    一方、卵の中の‘彼女’はあたためようとする彼の行為を勘違い。
    「あたためてくれるなんて何て優しいんでしょう!」

    ...さて、すれ違っている彼らの思いはどうなるのか。これが一番好き。胸キュンです。ラブです。

    『ハゲタカの星』
    「早くカラをやぶって出ておいで」
    優しくて立派なお父さんの声に促されて卵から出てきたハゲタカの雛。けれども想像とお父さんの姿とは違っていて...。

    ...ハゲタカのルックス、生態を上手く利用している一篇。嫌われているハゲタカとして生まれてきた彼はどう生きるのか。

    『まるまれアルマジロ!』
    ダチョウの夫婦が、孵らない卵の代わりに見つけたのは丸まったアルマジロ。アルマジロはつつかれるのが怖くて丸まり続ける。ダチョウの母親は卵だと無理矢理思い込み温め続ける。気づかないフリを続ける彼女らの関係はどうなるのか。

    ...表題作。ほんとうの家族って?と考えたくなる。

    『心配性のコウノトリ』
    天使から人間に赤ん坊を届ける使者として選ばれたコウノトリ。初仕事をすることになる。
    「幸せになるか、不幸になるか、届ける先の見きわめがなによりも大事なのです」

    ...どんな親の家に生まれたら幸せになれる?お金持ち?尊敬されている?愛情深さ?
    あーでも結局はそこだよね、と納得の結末でした。

    児童書だからか、テーマが明確で分かりやすい。中学生くらいが感想文書きやすいかもしれません。もちろん、大人が読んでも面白いし、考えさせられます。
    ハゲタカの話でも書きましたが、いろいろな動物たちの特性を上手に生かして物語を創られています。図鑑やスマホなどで彼らの姿を見ながら読むのも楽しいです。

  • 卵から始まる動物寓話集。
    「心配性のコウノトリ」優柔不断なコウノトリが親を決められないまま赤ちゃんは成長し…。子供が幸せになる保証のある家なんて初めからない。成長、旅立。大切なのは自立する力。

  • 卵からはじまる、緩やかに繋がる5つの物語。
    どれも可愛くて優しくてほのぼのとした物語で、心を和ませてもらえて読んで良かった。

    オケラだってオオカミだってインコだってハゲタカだってハイエナだってダチョウだってアルマジロだってコウノトリだって。
    みんなみんな誰かのことを思いやったり、見たいもの知りたいことが色々あったり歌を歌ったり、楽しくて笑ったり悲しくて泣いたり…生きているって本当に素敵なことだと思える物語だった。
    特に「ハゲタカの星」が好き。
    下和田サチヨさんの絵もとても可愛くて物語のイメージにピッタリ。

  • 動物。寓話。童話。鳥。短編。
    どの話もとても深くて良い話。
    動物の習性を活かして自然を描きながら、人間に暖かいメッセージを送る。
    どれも好きだが、「オオカミの大きなかんちがい」が一番。

  • オオカミのおはなしが好みです。自分は自分。

  • 「頭のうちどころが悪かった熊の話」よりもこちらの方が心に落ち着きました。ユーモアに包まれた中で生き方を指針してくれるあったかい短編集だと思いました。

  • あ、これは子育て本だ。と、言っても、小さなお子様に親が読み聞かせるものではなく、親になった人や、これからなろうとしている人が読むための子育て本。そんな肌触りでした。ちょうど、身近なところに新婚さんがいるので、この本をプレゼントしようと思います。

  • 卵があった
    その卵の中ではヒナが悩んでいた。
    このカラを破って世の中に出ていくべきかどうか。
    出ていくほどの世界かどうか

    卵からはじまる5つの童話。なんとも言葉の使い方が恐ろしい。ダークな村上春樹という感じだ。こういう本は黙読よりも音読の方が味わえる。全部つながっている。ハゲタカも、コウノトリも。

  • 「オケラのお月見」
    地下に住むオケラの家族が月を見るために地上へ出るのですが、コウノトリの卵を月と間違えてしまいます。
    「オオカミの大きなかんちかい」
    落ちていた卵とのなんとも愉快な関係。
    「ハゲタカの星」
    雛が産まれて父親を始めて見た時のショックと実は立派な仕事をしていたことに気付かされる話。
    「まるまれアルマジロ」
    ダチョウの雛と勘違いされたアルマジロ。姿形ではない愛情物語。
    「心配性のコウノトリ」
    天使に連れられて赤ん坊を届ける仕事をもらうのだが。
    最後にハゲタカも登場して見事にループが完成しました。

    何が大切なのかを優しい言葉で伝えてくれる本でした。
    そしてクスっと笑えるところもたくさん!
    安東みきえさんの本、好きです。

  • タイトル通り、卵からはじまる5つの話。

    児童書はいいね。

    どのお話も愛ある素敵なお話でした。

    どれも、優しくてちょっと楽しいお話でしたが、
    「ハゲタカの星」が一番好きかな。

    表題作もよかった。
    正直アルマジロは見た目が苦手だったのだけれど、
    アルマジロにはなんの罪もないのに、
    今までごめんねって思いました(笑)

    でも、ちょっと苦手。ごめんね、アルマジロ。

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著者プロフィール

山梨県甲府市生まれ。1994年に「ふゆのひだまり」で小さな童話大賞大賞、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞、2001年に『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、2018年に『満月の娘たち』で第56回野間児童文芸賞を受賞。主な作品に『頭のうちどころが悪かった熊の話』(新潮文庫)、『星につたえて』『ふゆのはなさいた』(アリス館)、『夜叉神川』(講談社)などがある。

「2021年 『メンドリと赤いてぶくろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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