ガリア戦記 (ワイド版岩波文庫 11)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000070119

作品紹介・あらすじ

カエサル率いるローマ軍のガリア遠征の記録。現地から彼が送る戦闘の記録はローマ余市を熱狂のるつぼに化したという。7年にわたる激闘を描いたこの書物こそ、文筆家カエサルの名を不朽にし、モンテーニュをして「最も明晰な、最も雄弁な、最も真摯な歴史家」と賞讃せしめたものである。

感想・レビュー・書評

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  • 紀元前58年から51年にかけて7年にわたって行われたローマ帝国によるガリア戦役の記録。
    カエサルの筆とされる。著者カエサルである。紀元前のカエサルの著作を読めること、思えば奇跡のようである。

    巻頭に2つの地図を所収。「カエサル時代のガリア」と「同… ガリア諸部族」の2図。現代の西欧にあたる地域を示す広域図で、これは親切な附録である。前者の地図は地名を記しているのだが、なにせ紀元前である。ブリタンニア、ヒスパ-ニア、ベルギウムなど現在に連なる地名も一部あるが、多くは現代の地図帳には残っていない地名である。
    そして後者の「…諸部族」の地図にいたっては、アルウェルニ-族、セドゥ-ニー族など全て未知の名前ばかりである。これは、政治的単位を示すcivitasという語の訳だという。政治的集団ではあるが、国家的な組織と混同しないよう便宜的に「部族」と訳しているという。つまり、国家成立以前のため部族の訳を充てている。
    そのため、本文もまたなかなか読みづらい。アルウェルニ-族と戦った、とかセドゥ-ニー族の土地に入った、と記述されるが、地理的にピンとこない。さらには、それぞれの部族のリーダーの名も多数頻出。馴染みのない地名人名がひしめく。
    そのため、私は、地名も人名の理解にもこだわらず、かまわずに読み進めた。
    ※この点、実際に比較はしていないが、平凡社ライブラリー版や講談社学術文庫版など、他の版では多少は読み易くする工夫があるのかもしれない。

    さて、ローマ帝国のガリア遠征である。
    カエサルの軍が、海を渡りブリターニアまで上陸進軍していたのは驚いた。
    また、各地で川に橋を架けたり砦を作るなど、戦闘のみならず、土木工事など地道なこともやっているのも意外であった。
    そして印象的なのは「殺した」という表現が多いこと。現代であれば、敵の軍勢を殲滅したとか、制圧したなどの言い回しもあるのだが、本書では「兵士を殺した」という表現が多く、ちょっとえぐい感じを受けた。

    さらには、残虐な記述もちらほら。
    「或るものは捕えられて味方の兵士の目の前でいじめ殺された」(Ⅴー45、p177)。
    いじめ殺す…。一見素朴な言い回しだが、逆に恐ろしい。
    他にも↓
    「重罪は、火と凡ゆる苦しみで殺し、軽い罪なら耳を落としたり片目をくりぬいて本国へ帰した。」(Ⅶー4、p222)。 これまた恐ろしい。軽い罪でも、目をくりぬかれてしまう…。読み進めながら、この時代に生まれなくてほんとうによかったとつくづく思うのであった。
    それ以外にも、人質や捕虜、奴隷にされる者も多かったようだ。捕虜や奴隷にされた人々はおそらく悲惨な目にあったにちがいない。
    また、当時の戦では、進軍にともない村や町、民家や穀物を焼き払ってしまう戦術が基本だったようで、これまたむごい。

    欧州は近代国家の揺籃の地であり、現代欧州もまた安定した民主国家が多い。だが、欧州は(つまりガリアの地は)古来(おそらく中世ころまで)本書のように血で血を洗う凄惨な歴史を積み重ねてきた地であったのだと改めて知るのであった。

  • カエサル自身がガリア戦役を記した有名な本…だけど、
    よく考えたら戦役の内容そのものはローマ人の物語で読んでるのよね。

    カエサルの文才を示した名著…らしいのだけど、自分が
    読む限りではそれほどでも、という気もしないでもない。
    確かに分かりやすい文章ではあるけれど。

    どっちかというとガリアのあちこちの敵を叩きつつ、ブリタニアにも渡って、
    最後に全ガリアとの決戦に辛くも勝利、という
    ストーリーの面白さではなかろうか。
    まあこれを実行したのも当人なんだけど。
    これ読みながら、「岩窟王ぐらいの大胆な解釈でアニメ化とかいいんじゃなかろうか」とか考えたり。
    そう言えばモンテクリスト伯で、盗賊にさらわれたアルベールを
    伯爵が助けに行った時、盗賊のボスのが読んでたのがこの本でしたな、確か。

  • 血沸き肉踊る傑作! カエサルの判断力、実行力、作戦、そして臨場感あふれる文章力。対するケルト人の
    勇猛果敢さ。ものすごく格好いい好敵手まで登場して、余すところなし。塩野七生の『ローマ人の物語』
    のカエサルの章と一緒に楽しむと、面白さ倍増です。

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