ウィキペディア革命: そこで何が起きているのか?

  • 岩波書店
2.97
  • (2)
  • (5)
  • (20)
  • (6)
  • (2)
本棚登録 : 88
感想 : 22
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000222051

作品紹介・あらすじ

2007年夏、ある調査がフランスで話題となった。調査はウィキペディアによる教育の現場の混乱や、そこで不正確で悪意のある書き込みが日常化し政治的な意図をもった情報操作も行われていることを明らかにした。単なるウィキペディア批判ではなく、集合知という情報システムそのものの可能性と内在する問題を根本的に問い直す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ウィキペディアの様々な課題を取り上げている。先日発行された最新事典の内容に失望したことから,専門家を交えてウィキペディアに投稿・編集していくのはどうかと検討し始めたところであり,この本の内容はとても参考になる。p145スタンフォード大学言語情報研究センター運営のウェブ情報源「スタンフォード哲学百科事典」との対比とかも(日本語版で追加された「解説」より。これもまたすばらしい。本文ならp75あたりが関連)。

  • ウィキペディア革命―そこで何が起きているのか?

  • あとがきにウィキペディア批判ではないと書いているが,どう見てもネガティブな立場を貫いている.
    翻訳本なので,原著のニュアンスが伝わっていないところもあるのかも知れないが.
    本編ではなく,後半の木村忠正の解説の方が日本のネットの現状を知るのに有益だったりもする.

  • 本書は、パリ政治学院卒のジャーナリストらによる、「ウィキペディア」の分析について述べたものである。

    近年、クラウドソーシング・集合知およびソーシャルメディアを褒めそやす文献は多い。本書はそれに反して、かなり批判的な立場から世界最大級の集合知メディアであるウィキペディアを分析したものである。「批判的な分析」という点だけをもってしても、一読する価値はあると思われる。

    また、本書を読むことにより、ネイチャー誌が行ったブリタニカ百科事典とウィキペディアの精度における比較調査がかなりいい加減であったこともわかる。STAP細胞論文の査読の件といい、世界最高レベルの学術雑誌だからといって編集部まで最高であるとは思わないことである。

    全体的に定量的・統計的な分析が少ないこと、あまりにも批判的であることが気にかかるが、巻末の木村忠正氏の解説でほどよく中和されていると感じた。

    前述したように一読の価値がある。しかし、フランス語の原著の表現がひねくれているのか、邦訳がひどいのか不明だが、係り受けのよくわからない文章や、抽象的で意味不明な単語の用法には苦しまされる。よって★1つ減じて★4つと評価する。

  • 今や情報源としては、欠くことのできなくなったwikipediaについてフランス人の著者が考察をしているものの翻訳版。

    光と影は必ずあるわけで、本書では、教育現場、雑誌ネイチャー誌の判断、ウィキペディアを支える人、間違い・改ざん、百科事典が相対的に落ちたことなどを取り上げている。

    集合知、アナーキズムなどと分析されることもあるが、やはり問題もあるわけで、そららを実際に取材しながらよくまとめていると思った。

  • 欠かせない情報ソースになっているウィキペディア問題点の指摘。存在する以上、我々はそれを携えていくしかない。

    解説・木村忠正「ウィキペディアと日本社会」集合知、あるいは新自由主義の文化論理、結構読み応えがありました。

  • 2007年夏、ある調査がフランスで話題となった。調査はウィキペディアによる教育の現場の混乱や、そこで不正確で悪意のある書き込みが日常化し政治的な意図をもった情報操作も行われていることを明らかにした。単なるウィキペディア批判ではなく、集合知という情報システムそのものの可能性と内在する問題を根本的に問い直す。

  • wikipediaを取り巻く思想や、wikipedianの哲学について書かれている。WEB2.0を代表するオープンコンテンツえあるwikiが抱えるそのユニークなフロー特性と、集合知への認識、考察が面白かった。

  • フランスのエリート養成大学を出たばかりの、新進気鋭の著者によるウィキペディアとは何なのかという詳細な検討。ウィキペディアの誕生以来その内部でおこった主要な事件のほとんどを網羅しながら、新しい波への単純な拒絶でもなく、賛美でもなく、客観的に徹底的に分析を加えていく。エピソードは、欧米のものが中心なので、巻末に国内の研究者による日本語版のウィキの解説が補説として追加されている。これもかなりの分量のもので読みごたえがある。ウィキペディアを利用している人にはかなりのお勧め。

    ただし、現役のウィキのアカウントユーザーには目新しい話題はないので、退屈かもしれない。

  • ウィキぺディアといえば、誰もが知っているあの有名なオンライン百科事典だ。期末テストの勉強をしている時、本を読んでいて知らない単語が出てきた時、地域研究の調べ物をする時・・・皆が恐らく利用しているだろうし、かくいう僕も頻繁に使っている。僕の友人には、期末課題をウィキペディアの記事を丸写しするだけで済ませる強者もいて(ああ、なんてウィキペディアが便利で素晴らしいことか!)、学生の勉学における友である(笑)

     250以上の言語により750万項目も持つ世界最大の百科事典。もっとも検索される国際的サイト第9位。このオンライン協力型百科事典ウィキペディアに批判的な立場から本書は執筆されている。とはいっても、著者らはウィキペディアを禁止させ、その社会的地位の抹殺を望んでいるわけではなく、批判的精神を作用させることで行き過ぎを押さえたいと述べているのだ。そしてその警告は、特に大学生や中高生、すなわち僕達に向けてなされている。まあ要するに、それだけレポートや勉強にウィキペディアを使う学生が多いということだ。

     この本を読んで、僕がもっとも関心を持ったのが第7章の「ウィキぺディアの賢い利用法」だ。それまでの章では、ウィキペディアによって混乱する教育現場や英国百科事典ブリタニカとの比較、間違い・改ざん・虚偽の危険性の示唆など、ぶっちゃけて言えばよくあるウィキペディア批判の文章が書かれているだけなのだが、この章だけは少しばかり違う。内容は見ての通り「ウィキぺディアの適切な使用法とそれを身につけるには」というものだ。「(ウィキぺディアへの) 全面的な反対は、風車に立ち向かうドン・キホーテの闘いのようなものだ。」と致し方ない感じで書かれている文章なのだが、我々ウィキペディアンにとっては刮目すべき箇所である。

     著者らはこう言う。ウィキペディアを賢く利用するには、二つの利用法を区別することが必要だと。一つは「すぐに利用できる情報を検索し増大する情報量を確認する方法」、もう一つは「百科事典の網羅性が十分ではないため、情報を深め、個人的な考察を組み上げる方法」である。恐らく、我々の多くは前者は実践できていても、後者の利用法を会得している人は少ないのではないだろうか、どうだろう。とにかく、あらゆる情報の収集をウィキペディアに依存しきっている状態は紛れもなく害である。

     我々にとって身近なウィキペディア。身近なだけに、「便利だからいんじゃねー」的な発想ではなく、付き合い方を再考すべき存在である。どういう時にウィキペディアを使えばいいのか、どのように利用すればいいのか、そもそもウィキペディアを使用するべきなのか否か・・・。そういう意味で、色々考え直させられた本であった。

全22件中 1 - 10件を表示

ピエール・アスリーヌの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×