- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000225595
作品紹介・あらすじ
一九四〇年、ドイツ軍の電撃戦の前に、ダンケルクへと潰走する英仏連合軍。フランス軍参謀将校として従軍していたブロックは、そのただなかで苦闘しながら、自問していた-なぜフランスは敗れたのか、と。ひとりの市民として"暗い時代"を真摯に生き、レジスタンス活動のなかでナチスの銃弾に斃れた、この卓越した歴史家による手記は、今なおさまざまな問題を私たちに投げかける。ブロックの最期を生々しく伝えるG・アルトマンの序文、および政治学者S・ホフマンの新版序文を付す。待望の新訳。
感想・レビュー・書評
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本書は全然関係ない本で知った、多分マニアックな本である。しかし、広く学生からビジネスマンまで学ぶことが多い本に思われる。
著者は20世紀を代表する歴史学者の一人である。1940年徴兵されて、ナチス・ドイツとの戦争に従事した。本書で描かれるのは、「歴史家が描いた戦争」ではなく、「兵士が見た戦争」である。しかも、ただの兵士ではなく、「抽象的な言葉を避け、その背後にある唯一の具体的な現実、つまり人間たちを復元させる」歴史家である。それだけに、描かれる軍の失態は生々しい。現在我々は第二次世界大戦から多くの「教訓」を引き出しているが、その歴史の多くをすでに戦時中に現地で当事者たる一国民として引き出していたその洞察力に恐れ入る。
指揮の無能、官僚組織の無能が事細かに叙述される。読者はその一つ一つに、身近の組織の問題点を考えずにはいられないであろう。地域と時代という文脈は異なれど、そこにいるのは間違い無く人間である。個々の小さな怠慢や過失、傲慢が積み重なって敗北は作られていく。
組織の失敗を描いた「歴史」と称した本は史学からビジネスまで巷に溢れているが、生々しさにおいて本書に勝る本はないように思われる。というより、多くの本は、多くの人が首肯できるレベルに抽象化一般化しているに過ぎず、教訓にもならない具体性の欠いた訓示にとどまる。そうでない本でも、読者は抽象化一般化して捉えてその妙味を逃しているかもしれない。
しかし、著者によれば「歴史学のもたらす教訓は、過去は繰り返され、昨日会ったことが明日もそうだということではない。歴史学は昨日がいかに、そしてなぜ一昨日とは異なっているのかを検証し、その比較において、今度は明日がどのような意味において昨日と異なるのかを予言する手段を見出」す。歴史の教訓を引き出す人がいるとすれば、彼はまず現在と過去との違いを説明できる人だと言えるのかもしれない。が、これもまた抽象化一般化の誹りを免れないだろう。
それを避けるには、結局この本を読むしかない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第二次大戦のフランスの敗因(正確にはパリ陥落)を分析。著者は歴史家であり、実際に情報部隊に従軍していた。敗因の根本は、第一次大戦の方法・システムで事にあたっていたということに尽きる。保守陣営の一貫性の無さ、軍事理論の欠如、官僚組織への統治の甘さ(天下り)など。どこかの国の現状に似ている。