新版 史的システムとしての資本主義

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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000233224

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義とうのは、 私という資本が私という資本をより肥やすことを一番の目的として私によってその資本を投資されるようなシステム。

     言い換えれば、貯金を増やすために貯金を使うのことを資本主義というらしくこれはわかる。
     このシステムはずっと昔のヨーロッパで生まれたらしい。ヨーロッパの支配層の人(多分貴族とかだろう)はちゃんとした船ができてインドから織物を買ったり、中国からお茶を買ったりするようになった。これが世界貿易のはじまり。
     今では当たり前のものばかりだけど、そのころは異国の地のとっても不思議な品だったわけで、そりゃもう大流行して金持ちたちは買いに買ったそうな。(ちなみに日本にお茶が入り始めたころ、日本人はお茶をドラッグとか薬として飲んでいた。カフェイン入ってるからラリッてた)これは商売だから支配層の人であっても、代金はちゃんと払わないといけない。で、ヨーロッパ人はどこから金を工面したかというと、未開拓の地を征服して、そこにある金とかを奪って代金として払っていた。
     その後、金の工面がにっちもさっちもいかなくなるやいなや、ヨーロッパ人は相手国を植民地にしてしまった。(イギリスがインドを支配したみたいに)

     そんなこんなで、資本主義は未開のユートピアを漁りながら肥大、複雑化してきた。そして、ユートピアが無くなりかけたここ最近では、今度はシステムの中にいる人を漁り始めた。これが消費者の産声。そんなこんなで、私たちは日々狙われている。

     これはこの本の中の極一部の話で、ウォーラーステインは彼の唱える史的システムとしての資本主義(historical capitalizm)を元にして広い目で世界の金を眺めまくる。とっても悲観的に。

  • 現代の歴史学の古典となりつつある「近代世界システム1〜4」の著書であり、「世界システム論」の提唱者であるイマニュエル・ウォーラーステインが1983年に出した初版と1995年の増補版を合わせ、その歴史観、世界観を凝縮したのが本書。

    資本主義という言葉は様々な意味で使われる、もしくは自明のものとして扱われる。ウォーラーステインは「資本主義をひとつの歴史的システムとして-つまり、その全史をひとまとめにして、その具体的で個性的な実態を-みること」(本書X頁)を行なっている。

    訳が読みやすいが、それでも抽象的で相当な圧縮をしている部分はわからない部分もあり、今生きている上での様々な前提や価値観のほとんどが資本主義の成立のために必要とされる要素だったと言われるのは凄まじい理論だなと改めて思う。その説得力も。

  • 史的システムとしての資本主義
    (和書)2009年09月07日 21:25
    1997 岩波書店 I.ウォーラーステイン, 川北 稔


    階級化というか2極化されている世界のシステムを明確に批判していてとても参考になった。次の世界システムを模索するという視点がとても新鮮だった。

    資本主義というシステムの暗部を照らしていて、それを正当化する論理を批判(吟味)している。生贄の論理を批判(吟味)しているところが秀逸だと思った。

  • 「世界システム論」のウォーラーステインによる、歴史的に見た資本主義論。歴史的見地から、的確に資本主義が何かを解明している。スケールの大きなヴィジョンに感銘を受けたが、まだその意見に納得できない。今後他の著書も読んでみたい。
    「資本主義は歴史の産物にほかならず、それが演繹的につくられたモデルと食い違っているとすれば、間違っているのはモデルの方なのである」p vii
    「史的システムとしての資本主義は、明らかに馬鹿げたシステムなのである。そこでは、人はより多くの資本蓄積を行うために、資本を蓄積する。資本家は、いわばくるくる回る踏み車を踏まされている白ネズミのようなもので、よりいっそう速く走るために常に必死で走っているのだ。その過程では、良い暮らしをしている者もあれば、惨めな暮らしを余儀なくされる者もあることは間違いない。しかし、良い暮らしをしている人々にとっても、どこまでその生活水準を上げ続けてゆけるというのだろうか。客観的にも、主観的にも、もっと以前の史的システムのもとにあった時代と比べて物質的にさえ恵まれていないと思える」p47
    「(資本主義の障害として)他国より高い効率を生み出した諸要因は常に他国によって模倣されてしまう」p73
    「史的システムとしての資本主義がカバーする全時代、全地域を通じてあくなき資本蓄積が展開されたということは、すなわち、このシステムのもとでは実質的な格差がたえまなく拡大し続けてきたことを意味している」p94
    「人種差別こそが史的システムとしての資本主義の唯一のイデオロギー的支柱であったし、それはまた、適当な労働力をつくりあげ、再生産してゆく上で最も重要なものであった」p107
    「(真理の探究といった)普遍主義への信奉こそは、史的システムとしての資本主義が組み上げたイデオロギーのアーチの頂点に置かれた要の石であった。真理の探究こそが、すべての知的活動の存在理由であると、主張し続けてきた」p108
    「宗教は民衆にとってのアヘンである(マルクス)」p109
    「資本主義的世界経済が新しい地域を吸収して膨張してゆく過程では、いろいろな文化的圧力が作用する。キリスト教への改宗、ヨーロッパ語の押し付け、特定の技術や生活習慣の強要、法体系の変更などがそれである(西欧化とよぶ)」p110
    「世界労働人口の大多数は農村地区に住んでいるか、農村と都市のスラムのあいだを往ったり来たりしている人々で、彼らの生活は500年前の祖先たちのそれと比べて悪化しているのである。食料は不足しているばかりか、栄養のバランスも悪くなっている」p139
    「社会科学には幸福の度合いを測るメーターは存在しない(ジャック・グーディ)」p140
    「平等や公正の度合いを最大限に高め、また人間自身による人間生活の管理能力を高め(すなわち民主主義をすすめ)、創造力を解放するような史的システムでなければならない」p154
    「資本主義は、生産効率を高めることによって、全体としての富を激増させた。この富は不平等に分配されてきたのだとしても、これ以外の、いかなる既存の史的システムの下においても人々が享受しえなかったほどのものを、間違いなくすべての人が受け取れるはずであった」p163
    「特権を持たない、世界の人口の50ないし85%を占める人々にとっては、この世界が以前のどの世界よりも悪いものであることは、ほぼ確実である」p193

  • ポスト資本主義社会への展望というよりも、具体的な現システムに対する批判に見るべきものがある。たとえば資本主義世界における「政治闘争」は、「資本主義的「世界経済」の制度や構造を修正して、特定の構成員に自動的に有利に作用するような世界市場を作り出すように仕向ける闘争である。資本主義の「市場」は決して与件などではなかったし、まして不変などではありえなかった。それはつねに再生され、修正されていく創造物だったのである。」
    「科学的文化はかつては「才能に基づく自由競争」と呼ばれ、今は「メリトクラシー=実力主義社会」として知られる概念にぴったり適合したのである

  • 1章はもろに経済学の話だったから面白かった。それ以外の章も優れた洞察に溢れていて退屈しなかった。
    しかしながら、少なくとも自分にはやや難しい本だった。時々何についての説明かわからなくなるところがあったり、何回か読み直さないとわからないところもあった。やっぱりもう一度じっくりと精読しなおす必要がありそう。

  • <メモ>

     ちょっと長い目で見て、資本蓄積がつねに他の諸目標より優先されているといえるようなら、そこには資本主義的なシステムが作用していると言ってまちがない。・・・中略)その上、この利潤を得た者が、それを保持していてしかるべきときに投資できる条件が整っていてこそ、
    はじめて最初の生産点に戻って全過程が更新されるのである。
    じっさい近代に成るまでは、この一連のプロセス―――資本の循環とよぶこともある―――が完結することは
    めったになかった。
    ・・・中略)したがって、史的システムとしての資本主義は、それまでは市場を経由せずに展開されていた各過程の広範な商品化を意味していたのである。
    資本主義は自己中心的なものであるから、いかなる社会的取引も商品化というこの傾向をを免れることはできなかった。資本主義の発達には、万物の商品化へとむかう抗いがたい圧力が内包されていたといわれるのはこのためである。


     じっさい今日、むきだしの人種差別は世界的には支持されなくなってきている。とはいえ、これまでのところは、人種差別こそは史的システムとしての資本主義の唯一のイデオロギー的支柱であったし、それはまた、
    適当な労働力をつくりあげ、再生産してゆく上でもっとも重要なものであった。しかし、労働力が再生産されるだけでは、あくなき資本蓄積をすすめるには不十分であった。中間指導者層(カードル)によって統制されるのでなければ、労働力が効率的かつ継続的に機能し続けると期待することはできなかった。しかもその中間指導者層もまた、ここで生み出され、社会化され、再生産されなければならなかったのである。


     史的システムとしての資本主義が、進歩的なブルジョアジーが反動的な貴族を打倒した結果として勃興してきたというイメージが間違いであることはすでに論じた。そうではなくて、史的システムとしての資本主義は
    古いシステムが崩壊したために自らブルジョアジーに変身していった地主貴族によった生み出された、というのが基本的に正しいイメージである。

  • 高等教育に関心を持ちながら本書の一部を読んだ。大学は太古の昔からあったのではなく、中世ヨーロッパから生まれ、近代に発達した。本書でいう「近代世界を支えるイデオロギーのひとつ」であり、世界の大学全体が「史的システム」なのだろう。

    大学は、民族集団・職業・経済的役割と強固な関係を保ちながら発展・拡大したともいえよう。大学での教育・訓練を通じた労働力の配置換え装置の側面もある。ユニバーサル・アクセス化したとはいえ、大学には、その中で学問分野・研究分野・役割や機能以外に、厳然とした「差」がある。本書でいう「適当な労働力をつくりあげ、再生産してゆく上でもっとも重要なもの」として大学が機能し資本主義を補助したのではないか、という仮説も成立し得る。

    また、科学を通じた真理(veritas)を探究は、大学が行う一般化作業と、普遍主義のイデオロギーとなった旨紹介されている。今日の多くの高等教育に関する政策文書で帰結先となったり大切な論拠となっているのが、このフレーズだったりする。これを越える「事実」はなかなか見つからないのだろう。本書でいうように、「真理」以上の「アヘン」は無いのかもしれない。普遍主義に立脚した、高等教育の西欧化、近代化、さらに国際化という表現は、関係者には便利に正当化されて活用されているふしがある。

  • 資本主義というシステムが現在の世界を如何に支配しているかについて語っている。
    経済のみならず、社会、文化、政治のすべてが資本主義のメカニズムによって突き動かされているという論理の展開は壮大。
    その点は評価できる。

    しかし、基本的なマルクス主義者の言説から抜け出ているわけではないし、
    従属論や周縁性論をベースに少し拡張して考えてみただけという気もする。

    なにより、テーマの壮大さに対して薄い本であるだけに、論理展開が甘く、データの裏づけもない。
    正直、資本家(生産者)の集団がまるで一つの生き物のように考え、
    世界を支配しているのだという幼稚な陰謀論を語っているに過ぎないという印象がぬぐえなかった。

    世界システム論のエッセンセスは取れるのかもしれないが、
    このままでは説得力の無い、ただの「とんでも本」で終わる気がする。

  • 川北稔の訳文が良い。歴史学、経済学、政治学の術語を使っているのに、不正確な訳語は見当たらず。
    内容としては、発展的余地を残した、著者の研究のAbstractとしての側面と、著者の概念の発表文としての側面とがあると思う。
    『近代世界システム』(未読)という大著の中から、社会システムの変遷という時系列的パースペクティヴを排して、極力、資本主義という社会システムを同時代的に、大局的に、さらに晦渋な術語を用いずに説明した点で価値ある作品だ。経済学的な厳密性というものは、日常的言語で語られると、ともすれば蔑ろにされ、不正確な事を堂々と主張できるのだが、さすがはと言うべきか、数式を一切用いずに、経済学のエッセンスをセンス良く配して、先の著者の主張=「資本主義は、不完全な社会システムの一種であり、所得の公平、公正な配分にも、社会全体としての厚生増大にも、殆ど寄与していない。」につなげていた。勿論、この主張を無批判に受容することは、決してあってはならない。所得の公平、公正な配分を、歴史学・経済学横断的に論じた論文を読んだことがないので、大した事は言えないが、おそらく、所得の適正配分は現在の資本主義システムではなされていないだろう。しかし、社会厚生を最大化させるインセンティブは、封建制では決して有り得ないだろうし、社会主義システムでは、理念としては完全な適正配分がなされる筈だが、政治的プロセスの幼稚性からなされないだろう。つまり、資本主義システムは、次善の、そして考えられうる限り唯一の、社会厚生最大化装置なのだ。このことを、おそらく著者は僕よりはるかに正確に、深く理解しているだろう。その上でこの資本主義システムの史的批判書を書いた、と考えれば、この書物の厳しい進歩主義性が感じられる。

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