- Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000241595
感想・レビュー・書評
-
何度読んでも勉強になる。こういう仕方で考えをすすめられるようになれたらどれだけよいかと心の底から思うけど、まあそうそう上手くやれる人はいないよねえ。
翻訳はかなり癖もあるし細かくチェックしていくと雑なところもあるけど、全体を通してかなりよく考えられてると思います。抄訳とはいえありがたい仕事である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原題:The Social Construction of What? (1999)
著者:Ian Hacking
【版元】
■体裁=四六判・上製・カバー・380頁
■品切
■2006年12月22日
■ISBN4-00-024159-1 C0010
〈サイエンス・ウォーズ〉として脚光を浴びた〈社会的構成〉をめぐる論争は,いかなる哲学的意味を持つのか.該博な知識と犀利な分析と軽妙な語り口によって錯綜した議論の状況を解きほぐすハッキングの腕が冴えわたる.現代の代表的な科学哲学者が渦中から距離を置き,冷静な態度でいち早く著した定評ある分析.
<https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/1/0241590.html>
【簡易目次】
はじめに
第1章 なぜ「何が」を問うのか
第2章 多すぎるメタファー
第3章 自然科学はどうなるのか
第4章 狂気――生物学的かあるいは構成されるのか
第5章 種類の制作――児童虐待の場合
訳者あとがき -
訳者:出口康夫(文学研究科)、久米暁
ジェンダー、クォーク、人種、児童虐待…。これらはどういう意味で社会的に構成されていると言われているのか? 「サイエンス・ウォーズ」として脚光を浴びた「社会的構成」を巡る論争の哲学的な意味を冷静な態度で分析する。(「MARC」データベースより) -
威勢のいい文体(翻訳文体)で、テンポ良く読み進めることができる点は、取っつき易くていいのかも知れない。が、内容的には、今ひとつ食い足りない感がある。ハッキングの他の著作を読んでいれば、あえてこの書を読む必要性があるとは思えなかった。個人的には、他の著作のほうが面白い…。
-
「社会的構成」という概念に対する説明と批判を手広く行っている一冊。
社会哲学の必然の運命なのか、先行研究の解説がかなりの部分を占めている。
それだけならまだしも、著者名を記すだけで、その先行研究の中身まで読者がわかっていることを前提としているようなところがあり、それはかなり読みにくい。
一方で、主観ではあるが、自分の捉えた本書全体の主題は、非常に面白いものだった。
つまり、何かを社会的に構成するということは、その作業自体が大きな作用を社会にもたらすのだ、という指摘。
本書の例に従えば、ある子供たちを「児童虐待の被害者」と規定すること自体が、同様の経験を被っている子供が存在するがそういった名前は与えられていない状況では存在し得ない社会的影響をもたらす。
こういった指摘は、されて始めて意識するところであり、凄く新鮮だった。
その上で、インパクトの強さもある指摘だった。
(社会的害悪としての)「児童虐待」という規定が生まれたことで、「(アメリカ人から見て)『児童虐待』(に当たること)は許されるべきではない」という考え方が、強制力を伴って輸出されていった。
倫理とか文明とか、恐ろしい一面を垣間見れる。
多分、身近にも、同じ土壌で語れる実例は沢山あると思う。
その中で敢えて「児童虐待」等、良くも悪くも縁の薄い実例のみが取り上げられていたこと・・・が、一番の残念か。