ナウシカ考 風の谷の黙示録

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000241809

感想・レビュー・書評

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  • 風の谷のナウシカは大好きな作品だったけど、私はナウシカのことを何も分かっていなかった。とおもほどの深い思考がここにあった。
    ナウシカは自己を投げ打ってみんなを助ける聖女のイメージだったけど、そうではなかった。限りなく、他者(それは人間以外の生命を含む)への配慮を持ちつつも、自分の考えを絶対に曲げない、強く賢い賢者だった。導かれし者であり、導く者。しかし、最後には、破壊と慈悲の混沌とまで呼ばれるに至る。そう、一歩間違えれば、とんでもない破壊者であり死神にもなり得る。
    いや、当たり前なのだ。ナウシカも人間であり、人間は、みんなみだらな闇を抱えている。そのことにやけに安心するとともに、王蟲や菌類の友愛の美しさと儚さよ。喰うもの、喰われるものは、表裏一体でここには敵も味方もない。闇や穢れや虚無は人間が持つものであり、生存の避け難い条件。だからこそ、墓場の主が1000年前から構想されていたプログラムを受け入れない選択をキッパリとした。性とは不確実性を孕むもの。世界は美しく残酷だ。もう唸るポイントが多すぎてまとまらない!

    記憶に残るのは
    名付けをめぐる論争の中で、いかに名前が重要かと言うこと。他者への名付けは贈与であり、その人を支配し所有する方法。名前を簡単にあかしてはいけない。これは別の物語、ゲド戦記でも強く描かれたことだった。

    生命を操る技術を持った人々が腐海という攻撃的にして目的を持った生態系を産み落とした。それ自体が異形だ。生命を操る技術は、使ってはいけない。

    すべては闇から生まれ、闇に帰る。
    いのちは闇の中のまたたく光。

    最後はドストエフスキーとの比較まで出てくる展開。それだけこの物語は懐が深い。深すぎる。この物語の壮大さと先見性と、宮崎駿さんも戸惑うような、物語が勝手にうまれて生まれていく過程を、どう理解したらいいのか、まだ分からずにいる。

    2022.02.03

  • オリジナルも深すぎて理解できなかったが、この解説も難しくて理解できなかった。マンガやアニメはただただ面白く楽しみたい。

  • そうであって普通、当然なんですけど、宮崎駿さんや「風の谷のナウシカ」を超えることはありませんでした。

  • マンガ版「風の谷のナウシカ」を様々な観点、切り口から読み解いた本。
    二元論的な思想に抗し、自らの中にことがらの両面を引き受けて生きるということでしょうか。
    最後に示される「ポリフォニックなマンガである」という点が、それぞれの登場人物がいきいきと語り、作者がそれについていっている風ですらある、このマンガのありようを端的に伝えているように思います。

  • 気取った文章で、言いたいことがよくわからない。

  • マニアだな

  • 宮崎駿作品の相互参照で駿作品に通底するテーマを推測すると言った色が強い。多様なモチーフへの言及があるのは考える材料になる(例えば森の人と役行者)が、考察されないまま文脈のない共通点が指摘されるのみ、という印象が強く、通読出来ずに本を置いた。序盤と、森の人、年代記あたりの章のみ読んだ。

  • かなり厳しいなぁ。
    酒飲みながら友達と語り合うようなレベル、と感じられることが難しい言葉を並べて語られているように思われた。
    別にそういうのが嫌いな訳じゃない。
    エヴァの第一期ブーム?の頃に出された考察本みたいなのを読んだ時の感じに似ている。あぁ、この人はこういうの好きなんだなぁ、って言うような。
    でも、なんか自論に自信があるんだか無いんだか分からない言葉が気になった。
    関西人のように「まっ、知らんけど」と、言い切るくらいの覚悟が欲しいなぁ。
    1年半かけてようやく読み終わった。何とか読み終わった。何年か経ったら、こういう評論の評価もされていくんだろう。

  • まんが版ナウシカが完結してから25年あまり。本書の著者はようやく積年の宿題を終わらせることができたという。

    宮崎駿の他の作品との関係性や民俗学的考察など、様々な論点からナウシカが語られる。

    学生の卒論、修論程度ならともかく、実績のある民俗学者がこの分量の書物にまとめてなお語り尽くせぬものがあるというナウシカや宮崎駿の奥深さに驚く。

  • 漫画版のナウシカについて、読み解きを試みているため、漫画を読むだけでは得られなかった視点がいくつか発見できたのは良かったところ。
    著者が後書きで書いている通り、漫画をテキストでどのように論じたらいいのかという点で、苦労された著述だと思う。
    しかしながらこれは著者のくせなのか、著者の所属する学術分野の一般的な方法なのか分からないが、この本がナウシカ論としての論考であるならば、根拠、理由が明示されない箇所が多々あるのは問題ではないか。これは論考なのか、それとも著者の主観、情緒を織り交ぜた感想文なのか。タイトルが『ナウシカ考』なので、読者は論考を期待すると思うのだけれども。その点が読んでいて最後まで気になってしまったので、⭐︎3にしました。

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著者プロフィール

1953年、東京生まれ。学習院大学教授。専攻は民俗学・日本文化論。
『岡本太郎の見た日本』でドゥマゴ文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞(評論等部門)受賞。
『異人論序説』『排除の現象学』(ちくま学芸文庫)、『境界の発生』『東北学/忘れられた東北』(講談社学術文庫)、『岡本太郎の見た日本』『象徴天皇という物語』(岩波現代文庫)、『武蔵野をよむ』(岩波新書)、『性食考』『ナウシカ考』(岩波書店)、『民俗知は可能か』(春秋社)など著書多数。

「2023年 『災間に生かされて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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