ナショナリズム (思考のフロンティア)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 151
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (161ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000264365

作品紹介・あらすじ

ナショナリズム-この奇怪なる現象の本質とはなにか。われわれを魅惑するその不可思議な力は、どこに宿るのだろうか。近代日本における、この観念の思想史的な系譜と変遷を「国体」ナショナリズムという視座から明らかにし、現在のグローバル化がもたらす地政学的な変容のただ中において、新たなる秩序構想にむけたナショナリズムの脱構築がもたらす可能性について考える。

感想・レビュー・書評

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  • 「国体」をめぐって展開されてきたさまざまな言説が置かれている、ミクロな権力構造の磁場を解明している本です。

    著者はまず、近代において成立したナショナリズムが、国民国家という「作為性」と郷土に代表される「自然性」を接合することによって生じたものだと論じています。とりわけ日本の近代においては、伊藤博文がこうしたナショナリズムの性格を自覚し、近代日本の枠組みをかたちづくったと著者はいいます。また、こうした二重の性格をもつナショナリズムを取り巻く言説に著者の考察はおよんでおり、本居宣長の「漢意」の排斥や、リービ英雄の日本に対するアンビバレンツがとりあげられています。

    つづいて著者は、橋川文三の国体論を参照しながら、戦前から戦後にかけて「国体」はその意味が空疎であったがために、さまざまな変容を経て維持されてきたことを明らかにします。とくに敗戦後は、象徴天皇を中核に置く「国体」が、アメリカとの「合作」によって形成されたことに著者は注意を向け、和辻哲郎や南原繁、江藤淳、丸山眞男らがこれに対してどのような態度をとっていたのかということを、批判的に検討しています。

    「ナショナリズム」というタイトルをもつ本としては、あまりにも特殊なテーマに議論が絞られていることが気になりますが、国体をめぐる言説史に関心のある読者にとっては興味深い内容が論じられているといってよいのではないかと思います。

  •  「日本のナショナリズム」がテーマ、という体で、「国体」を扱う本。
     数年前から読み返してるが、知識面で勉強になることが多い。ただ、議論の急ぎ足と分量の少なの二点で読みにくい。


    【目次】
    はじめに [iii-x]
    目次 [xi-xii]

    I ナショナリズムの近代 001
    1 ナショナリズム,近代の「病い」か「救済」か 001
    2 〈自然〉と〈作為〉のあいだ 011
    3 ナショナル・アイデンティティとナショナル・ヒストリー 017

    II 「国体」ナショナリズムの思想とその変容 
    第1章 基本的な視座 023

    第2章 「国体」思想のアルケオロジー 039
    1 「日本という内部」の語り 039
    2 政治と美のデュアリズム 044
    3 繰り返される伝統=自然への回帰 049

    第3章 「国体」の近代 054
    1 作為的〈自然〉としての「国体」 054
    2 「ココロ主義」と「天皇の軍隊」 060
    3 「憲法/(教育)勅語」体系としての「国体」 067

    第4章 「国体」の弁証法 074
    1 「国体の本義」と「空疎さ」のナショナリズム 074
    2 「国体」の境界と変容 083

    第5章 戦後「国体」のパラドクス 088
    1 戦後の原像と「斬絶/連続」のパラドクス 088
    2 「談合体制」としての戦後「国体」 095
    3 「国体」の成熟と喪失 099
    和辻哲郎/南原繁/江藤淳/丸山眞男

    むすびにかえて 147

    III 基本文献案内 157

  • ナショナリズム、この奇怪な現象ほど両義性にみちたものはない。それは、憧憬と鼓舞の感情を呼び起こすかと思えば、嫌悪と痛罵の感情ともつながっているからである。pはじめに iii

    「想像された共同体」としてのネーションへの同一化は、ある意味でグローバル化の加速度的な「液状化」に対する神経症的な反応と言えないことはない。p2

    【ネーションの二重性】p11
    二重性とは、ネーションが、一方では自生的な共同体としてあらわれ、他方では作為的な抽象的統一体とみなされることを意味する。

  • 956夜

  • [ 内容 ]
    ナショナリズム―この奇怪なる現象の本質とはなにか。
    われわれを魅惑するその不可思議な力は、どこに宿るのだろうか。
    近代日本における、この観念の思想史的な系譜と変遷を「国体」ナショナリズムという視座から明らかにし、現在のグローバル化がもたらす地政学的な変容のただ中において、新たなる秩序構想にむけたナショナリズムの脱構築がもたらす可能性について考える。

    [ 目次 ]
    1 ナショナリズムの近代
    2 「国体」ナショナリズムの思想とその変容(基本的な視座;「国体」思想のアルケオロジー;「国体」の近代;「国体」の弁証法;戦後「国体」のパラドクス)
    3 基本文献案内

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  • 姜尚中の本。
    右に傾いている人に対する反論があった。(小林に対して)

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著者プロフィール

1950年熊本県生まれ。東京大学名誉教授。専攻は政治学、政治思想史。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』『オリエンタリズムの彼方へ―近代文化批判』(以上岩波現代文庫)『ナショナリズム』(岩波書店)『東北アジア共同の家をめざして』(平凡社)『増補版 日朝関係の克服』『姜尚中の政治学入門』『漱石のことば』(以上集英社新書)『在日』(集英社文庫)『愛国の作法』(朝日新書)など。

「2017年 『Doing History』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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