- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000614658
作品紹介・あらすじ
戦争体験、女優デビュー、人気絶頂期の国際結婚、医師・映画監督である夫イヴ・シァンピと過ごした日々、娘デルフィーヌの逞しい成長への歓びと哀しみ……。その馥郁たる人生を、川端康成、市川崑ら文化人・映画人たちとの交流や、中東・アフリカで敢行した苛酷な取材経験なども織り交ぜ、綴る。円熟の筆が紡ぎ出す渾身の自伝。
感想・レビュー・書評
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印字はわりと大きめで拍子抜けしたけど、岸さんのご経歴を知らずとも一から丁寧に辿ってくれているから、リラックスして読み進められた。(巻末の年表から目を通したけど知っている箇所が数ヶ所しかなくて焦った汗)
幼少期からお母様に似て容姿端麗。それでいて、清々しい程のお転婆っぷり。(ときどき激情型…)表紙のようにキリッとした表情も勿論素敵だけど、ふと頬を緩めて笑顔を見せた時は心の底から安心感がわいてくる。本当に特別な方だけれども、大好きな祖父への慕情とか(おこがましくも)親近感を抱いた点もあった。
「うまい女優」であるよりも「いい女優」でありたい。映画産業が全盛期の時代に芸一本で生きていきたくない、世界と関わっていきたいと考えられていた。”stunning”のワードが脳裏をよぎる。前衛的だけど思い返せば幼少期から近所や旅先で外国人と接する機会に恵まれていたし、そう希求しちゃうのも無理もないか。それ故に国際結婚で成田を発つ場面は最高に輝かしかった。(因みに仲人さんは意外な方…!)
離婚後メキシコを訪問したというエピソードにて不思議な体験をした。彼女が見たハゲタカが、数十年前の空襲で同じく低空飛行していた爆撃機と思いがけず重なった。木に登って爆撃から逃れようとしていた女の子が今、遠い外国でたくましく生きている。「何が何でも生きてやる」という気概に両者通じるものがあったのか。突如として舞い降りたこのビジョンは読了してからもぼんやり揺らめいていた。
「夕空に虹がかかるのを待たず、わたしが虹を咲かせようと思った」
格調高い奥様のイメージが強すぎて、本書の副題負けしない行動力を生涯何度も発揮されているとはつゆ知らず。
本書でそんなカッコイイ岸さんを知ってからは「それでこそ岸さん」と何度も手を叩いた。ご家族との団欒を惜しむのは確かに少しでも取り戻していって欲しいと自分も思う。でももっとやりたい事にも沢山踏み込んで、引き続き世界と関わっていかれるところも見ていたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岸惠子の好奇心は衰え知らず 円熟と若々しさが同居した自伝 - 映画な生活 - 芸能コラム : 日刊スポーツ
https://www.nikkansports.com/m/entertainment/column/aihara/news/202104220000204_m.html?mode=all
岸惠子自伝 - 卵を割らなければ,オムレツは食べられない(岩波書店刊
https://www.iwanami.co.jp/kishikeiko/
岸惠子自伝 - 岩波書店
https://www.iwanami.co.jp/smp/book/b570605.html-
運命すら操る生き方 客観的に
評 中江有里(女優、作家)
<書評>岸惠子自伝:北海道新聞 どうしん電子版
https://www.ho...運命すら操る生き方 客観的に
評 中江有里(女優、作家)
<書評>岸惠子自伝:北海道新聞 どうしん電子版
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/557823?rct=s_books2021/06/21 -
岸惠子さんの名言は自分流に生きる勇気がもらえる! | ハルメク暮らし
https://halmek.co.jp/life/c/tips/41...岸惠子さんの名言は自分流に生きる勇気がもらえる! | ハルメク暮らし
https://halmek.co.jp/life/c/tips/41092021/07/02
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女優の括りでは収まらないスケール感のある国際人の自伝です。美貌や才能だけではない、人を惹きつけて止まない魅力があるのでしょう。人との出会いが新たな活動の舞台の拡がりになり、それを成功させるから、また、次の世界が広がっていく。そんな人生があるのですね。でも、その家庭を見返らない生活のせいか、離婚を経験し、親子関係もしっくりしません。ところどころで日本のエピソードが挟まれますが、記される日本人の島国根性丸出しには情けなくなります。これからも世界的に活躍する人は出てくるでしょうが、なかなかサン=ルイ島に住まう人は現れないでしょうね。
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2021年5月
岸惠子さんは偉大な女優だと思っていて、作家としての活動をよく知らなかった。なんてこった。
序盤ですぐ著者が素晴らしい作家でもあることがわかる。尊敬する先輩とのエピソードを回想し、その先輩の言葉に自分はそう思わなかったとさらりと書くというのは案外できないものだろう。
様々な思い出が著者独自の視線で語られ、どれも面白いが、とくに興味をひかれたのは50代からの国際ジャーナリストとしての活動である。
フランスで起きたイランの元将軍の暗殺事件に興味を持ち「自分の眼で見て、肌で感じる」ために単身イランへ向かうのが著者51歳の時。一度では何もわからないと再訪するわけだが、このイランでの取材活動が大きな転機の一つだろう。
たまにわたしよりも10歳20歳若い友人の話を聞きながら「わかるよ、わかるけど、それには10年後20年後の人生の続きがあってだな…」なんて思ったりするのだが、この自伝は著者が現在88歳ということで、わたしにわたしの人生の続き考えさせてくれる一冊になった。 -
女優 岸惠子さん。
自分にとっては邦画のナンバーワンである「悪魔の手毬唄」のヒロイン。
しかしながら、その人の人生において女優業は多彩な顔の一つに過ぎない。
女優だけの芸能事務所を立ち上げ、フランス人映画監督であり医師でもあったイヴ・シァンピとの国際結婚を経てフランスに住み、NHK BSのパリキャスターとしてマイクを握り、革命直後のイランや、アフリカ、イスラエルに赴き取材をする、そしてそれらを本にまとめて出版する、、、大事な記念品を機内に忘れて紛失したりする天然ぶりも交えながらそれらの思い出を語る語り口は齢九十歳になるとは思えない「天真爛漫」さに溢れている。
しかし、一方で、故郷横浜で幼少期に遭遇した空襲や疎開先での暮らしや、仕事に熱中するあまり愛する家族を孤独にしてしまい、最愛の家族と距離を置かざるを得なくなってしまう寂しさには、それでも必死に生きてきた重さも感じさせる。
そして、そういう入り組んだ自らの物語をサラサラと淀みなく語る文章の旨さ。
脱帽です。 -
「映画」はよく観るほうです
でも 女優「岸恵子」さんで選んだ映画は
残念ながら…
「たそがれ清兵衛」も観てはいるのですが…
なんとなく エッセイも綴っておられるらしい
というぐらいの方でした
図書館の新刊の棚に
「岸恵子自伝」というよりも
この本が「岩波書店」から出ている
事の方に興味が傾いて
読み始めた一冊でした
いゃあ 見事に 裏切られました
1930年のお生まれ
それからの世相史として
読ませてもらった気がします
むろん
個々のエピソードもなかなかのものですが
自分の目で見て
自分の耳で聞いて
自分の頭で考えて
自分の足で歩く
そこのところが
とても 恰好いい
「凛」としたお人柄が
伝わってきます -
岸恵子さん、そこまで作品見たことがないけど最近テレビでおめがけしないな〜と思って聞いてみた。面白かった。パリにそんなに長く住んでいたなんて。
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岸惠子さん。90歳。女優だけどパリに住んで国際ジャーナリストとして活躍してる。。本書にもある、日本にも欧州にも根付かない生き方。なんとなくモヤモヤしてたイメージ。。本書を読んで、その活躍ぶりにとても凄いお方なのだということがわかりました。
イラン、アフリカ、ロシア、東欧、、、現場に足を運んだエピソードを綴っています。どれも面白い話ばかり。。冒険家高野秀行さんの文章も好きですが、それと同じ感じ。。
読んでると、とにかくスケールでかく生きなければと思わされます。文章も装丁も読みやすい本でした。 -
容姿、実力にも恵まれた女優さんであることは間違いない。ジャーナリスト的活動に転身できたことも、その幸運に一因する部分もあるだろう。けれど本書を読んで思ったのは、想像以上に信念の人であり無鉄砲の人であった。娘家族との別れを「三つ目の卵を割った」と表現し、違和感やひずみを見ないふりせず、甘い幸せに溺れず、また違う場所へ向かい出すところは、少し破滅的なほど。