正しく生きる ケーズデンキ創業者・加藤馨の生涯

著者 :
  • 岩波書店
3.44
  • (0)
  • (5)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 49
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000614931

作品紹介・あらすじ

終戦直後の焼け野原のなかで妻と二人で始めたラジオ修理店を、全国有数の家電量販店へと育て上げた加藤馨。「会社はそこで働く全員のもの」とする、彼のユニークな会社観、経営哲学はどのようにして生まれたのか。生い立ちから戦争体験、起業、引退後の暮らしまでを、丹念な取材によって明らかにし、その人生を戦後家電流通史とともに描き切った壮大なノンフィクション作品。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 登録番号:1027319、請求記号:289.1/Ta94

  •  大仰なタイトルですが、ケーズデンキを創業した加藤肇と彼のファミリー・ヒストリー。また、戦前から東日本大震災頃まで、市井の民として、どう感じ、どう動いたかも描かれています。

     通信隊として終戦を迎え、加藤電機商会としてラジオの修理から創業。松下のナショナルショップへ加盟後、松下以外も扱う量販店へと拡大。ヤマダ電機とコジマの激安戦争「上州戦争」に、カトーデンキ販売(現・ケーズデンキ)も加わった「YKK戦争」を展開し、その後は、ヨドバシカメラ、ビックカメラといったカメラ群も加わった家電量販競争の歴史は、「そういえば、あった、あった」と思い返しました。そのなかにあっても、戦時中で兵士の命が粗末に扱われた経験から、社員に無用な無理をさせない「がんばらない経営」を掲げ、そのため、逆に全国からのFCの申し出で規模を拡大。

     家電販売業界では「お客には三種類しかない」という言葉があるそうです。価格重視の「金に付く客」、続いて販売員重視の「人に付く客」、最後が「店に付く客」で、この順で客をつかむことが商売繁盛のコツだそうですが、読んでいると本当にそうだと思います。

     内容は、創業者の社員重視の考えを中心にしたものであり、437ページの読後は「清涼感」という一冊です。

  • 店舗が身近にないこともあって、ケーズデンキには印象がなく、「頑張らない経営」などの独自の経営スタイルにも全く知識が無かった。
    本書は創業者の薫氏の評伝だが、個人経営から一部上場の大企業にまで成長させた2代目社長の修一氏の経営者物語でもある。
    会社は誰のものか。何度も問われてきたテーマだが、ややもすると言葉だけ、頭だけの議論になりがち。しかし世の風潮に流されず、創業以来、従業員、取引先あっての会社を公然と表明し、かつ実践し、その上で業績を進展させた会社があることを驚きをもって読んだ。
    電機業界の著作が多い作者らしい、家電量販店の盛衰を描いた部分も良かった。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

立石 泰則(たていし・やすのり)
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。1950年福岡県生北九州市まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。「週刊文春」記者等を経て、1988年に独立。92年に『覇者の誤算――日米コンピュータ戦争の40年』(日本経済新聞社)で第15回講談社ノンフィクション賞を受賞。2000年に『魔術師――三原脩と西鉄ライオンズ』(文藝春秋)で99年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。そのほかの著書に『マーケティングのSONY――市場を創り出すDNA』(岩波書店)、『戦争体験と経営者』(岩波新書)、『さよなら! 僕らのソニー』『松下幸之助の憂鬱』(いずれも文春新書)、『「がんばらない」経営――不況下でも増収増益を続けるケーズデンキの秘密』『働くこと、生きること』(草思社)など多数。

「2021年 『増補新版 フェリカの真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

立石泰則の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンデシュ・ハン...
マシュー・サイド
リンダ グラット...
ジャレド・ダイア...
劉 慈欣
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×