長い長いお医者さんの話 (岩波少年文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001140026

感想・レビュー・書評

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  • 1つ1つのお話がとても長く感じるのが不思議。タイトルからどんな話なのか想像し、読み始める。最初は想像からかけ離れてはいない。なのにいつの間にやら「これ何の話だったっけ」というくらい遠くへ連れて行かれる。途中で新たな人物が突然出てきたり、「あなた主人公だった?」という人が長々語り出したり。でも最後はちゃんと面白い結末が待っています。親子で気に入ったのは「宿なしルンペンくんの話」。ルンペンくんの「待つ」タイミングが可笑しい。チャペックの実兄が描く挿絵がとてもユーモラス。

  • チャペックの童話集。話がどんどん、想像していたのと違う方向に向かっていく、型破りなところがいい。中野好夫の訳も名人芸の域。

  • この本はね、子供時代に学校の図書館で何度も借り出したお気に入りの童話集だったんですよ。  でもその後、この物語のことはすっかり忘れてしまって、さらに言えば子供時代には作者が誰かな~んていうことはあんまり気にしていなかったので誰の作品なのか知らないまま KiKi は大人になっちゃったんです。  で、大人になったら同じチャペックの「園芸家12ヵ月」に出会ってクスクス笑いをさせてもらって、ふと気が付けば「この2つ、同じ作家の作品じゃあ~りませんか!」となってそれからますます愛着がわくようになったという物語集です。

    この「園芸家12ヵ月」の現在市販されている文庫本の表紙は KiKi が持っているものとは別(Amazonの方が新しい)なんだけど、KiKi が持っている古い文庫本の絵は本日読了した「長い長いお医者さんの話」でも挿絵を担当しているお兄さんの絵で、実にほのぼのとした味わいのある絵なんですよね~、これが。  お話もどこかとぼけたところのある語り口(それはどちらの本にも共通している)なだけに、この挿絵との相乗効果には絶大なものがあると信じて疑わない KiKi です。

    さて、我が家には実はこの「長い長いお医者さんの話」は2冊あったりします。  1冊は冒頭でご紹介した現在も販売されているこのヴァージョン。  そしてもう1冊は「岩波少年文庫 愛蔵版 全30巻」の中の1巻でこちらは装丁が実に美しいんですよ。  しかもハードカバー。  実はこれ、KiKi の宝物です。

    こういう装丁の本、KiKi の子供時代には多かったんですよね~。  日本の製本技術は優れているから現在のソフトカバー本であっても、アメリカなんかのペーパーバックと比較すればはるかにしっかりできていて、その割にはお値段も安くて文句のつけようもないとは日々感じていることだけど、それでもこういう厚紙仕様で風格のある本っていうのは本を読む前の心構えみたいなものを読む側に要求する独特のオーラを放っています。  で、せっかくだから今回はこちらの愛蔵版で・・・・と最初は思ったんですよ。  でも結局読了したのは冒頭でご紹介した現在市販されているソフトカバー本の方にしました。  その理由はね、実は現在市販されているソフトカバー本の方が収録作品数が多かったんです。

    長い長いお医者さんの話
    郵便屋さんの話
    カッパの話
    小鳥と天使のたまごの話
    長い長いおまわりさんの話
    犬と妖精の話
    宿なしルンペンくんの話
    山賊の話
    王女さまと小ネコの話

    これ(↑)が現在市販されているこの本の収録作品一覧なんだけど、な、な、なんと愛蔵版の方には最後の2つのお話が収録されていません。  せっかくの「全冊読破企画」で読み落としがあるようじゃ勿体ない・・・・ということで、結果的にソフトカバー本を手に取るに至ったのでした。

    とまあここまで本の内容以外のことでずいぶん字数を使ってしまいました。  この本の中の物語の感想についてお話しなくちゃね♪  これらのお話はどれもこれもおとぎ話風のホンワカムードのお話ばかり(これには挿絵の影響もかなりあります)なんだけど、話の進め方に至っては結構奔放であっちへ飛んだりこっちへ飛んだりするんですよね~。  でもそれが不思議と不快じゃなくて何だかチャペックモードに乗せられているうちにスイスイと読み進めちゃうんですよ。

    で、もともと語られたお話に忘れた頃に戻ってきたりもして、挙句そこでちょっと意表をつかれるようなこともあって、どこか人を食っていると言うか手玉にとって遊んでいるというかそんなところもある物語集だと感じます。  でも、読んでいる間不思議と幸せな気分に浸っていられるのですから、やっぱりこれは天才の手による作品なんだろうなぁ・・・・・。

    どのお話も結構 KiKi 好みだったんだけど、今回の読書で一際 KiKi の興味を引いたのは第3作「カッパの話」です。  カッパって、これは KiKi の思い込みだけなのかもしれないけれど日本固有の妖怪かと思っていたら、Far East の島国日本から遠く離れたチェコにもいたんだ!とかなりビックリ!!!  しかもその挿絵を見るとこれがまさに私たち日本人にお馴染みのカッパそっくり。  でも、この挿絵は間違いなくK.チャペックのお兄さんヨゼフ・チャペックが描いたものなわけだからやっぱりチェコにもカッパはいた(と信じられていた)と思うしかありません。

    しかもお国は違えどもやっぱりカッパは水と縁が深い生き物だったようで、この物語の中でもチェコの川にお住まいなんだそうな・・・・・。  しかも本文の中ではっきりこう性格づけられています。

    カッパというものは、なにか水に縁のある仕事でないとやれないのです。

    どうです??  これじゃまったく日本の河童と一緒でしょ?  う~ん、これはカッパについてもう一度学び直してみる必要があるかもしれません。  少なくともこの「カッパの話」を読む限りでは、チェコのカッパがキュウリ好きなのかどうかまではよくわからなかったんですけどね。  これは岩手県は遠野市に出かけて行って「カッパおじさん」のご意見を聞いてみる必要があるかもしれません ^^;  そして可能であればチェコまで出かけて行って彼の地に伝わるカッパ伝承を調べてみる必要も・・・・・。  ま、そんな妄想までフツフツと湧き出してくる楽しい読書だったのです。



    因みに、例の宮崎駿さんの豆本での推薦文は以下の通りです。

    この本を書いた人は、「ロボット」という言葉を発明した人です。  とはいっても、この本はロボットの話ではありませんが・・・・・。  この人は、精神のかがやきのようなものを持っていると感じます。  とても善良で、かしこくて、硬くてキラキラしていて、あたたかいのです。  こういう人がパイプをくわえて、窓辺でジッと考えにふけっている姿を想像して、なんだかなつかしいかんじがします。  ずっと昔、自分もそういうものを持っていたような気がしたりするのですが、ただの錯覚なのでしょう。


    う~ん、カッパ問題のヒントになりそうなことは何一つ書かれていませんねぇ・・・・・(苦笑)

  • チェコの民話。だけどなんだかとっても日本昔話風。
    こういうのも訳者さんの腕なのかも。
    ヨーロッパ人らしいユーモアがあちこち感じられる作品です。

    2011/12/31

  • ホラ噺系の落語のようにどんどこ話が転がっていく。ほかでは味わえない物語の快感。
    中野好夫氏の名訳だが、チェコ語→英語→日本語、いわゆる二重翻訳である。数十年を経て、日本語もやや古びてしまった。
    チェコ語から直接訳した新訳を、いつか読めたらいいなと思う。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      丹後ちまきさん
      はい。
      田才益夫訳は2005年に青土社から、栗栖茜役は2018年に海山社から出ました。
      丹後ちまきさん
      はい。
      田才益夫訳は2005年に青土社から、栗栖茜役は2018年に海山社から出ました。
      2020/12/20
    • 丹後ちまきさん
      2018年ならまだ在庫ありそうですね。
      2018年ならまだ在庫ありそうですね。
      2020/12/20
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      丹後ちまきさん
      あっタイプミスしちゃってた、、、
      海山社は小さな出版社。書店には置いてないコトも多いかも、
      8月に「白い病気/マクロプロスの...
      丹後ちまきさん
      あっタイプミスしちゃってた、、、
      海山社は小さな出版社。書店には置いてないコトも多いかも、
      8月に「白い病気/マクロプロスの秘密」が出て、来年秋には「カレル・チャペックとイギリスを巡る」を予定しているとか、、、
      2020/12/20
  • カレル・チャペックは短編の寓話みたいなものが気に入っていて何回も読みたくなる。訳者さんの優劣ってよく分からないけど、中野さんの訳もとてもいいのかもしれない。

  • 「ロボット」の語を生み出したと言われるカレル・チャペックのナンセンス短編。筒井康隆や小松左京に親しんでいる現代から見れば、ナンセンスのキレには不満が残るかもしれない。ただ関節を外されるようなストーリー展開は面白い。

  • なんとも妙なお話が詰まってました。楽しいホラ話という感じでしょうか。ホラにホラを重ねて、話自体もあっちに行ったりこっちに行ったり、子どもを前にしてお話を考えながら語っているような雰囲気が面白かったです。それでいてちょいと風刺を含ませたりするから、油断出来ませんな。

  • あーー面白いわー!
    タイトルもきいたことなかった岩波少年文庫(知らないのだらけ!)
    チェコの作家さんの、童話がたくさん入ってます。
    お話の中でお話をするお話がたくさん(何これわかりにくい)

    宮崎さんおすすめの本です。

    「長い長いおまわりさんの話」の挿絵だけ見たことあって
    びっくりしました。

    お話の中で、いろんなひとがお話をしていく形態が多くて、
    元は(出だしは)どんな話だったのか読んでるうちに忘れちゃいます。笑

    宛名と差出人が不明の手紙を1年かけて届ける「郵便屋さんの話」や
    大金の入ったカバンをいきなり預けられて誤解で投獄されて死刑にまでなりそうになる「宿なしルンペンくんの話」や
    最後のいちばん長い話「王女さまと小ネコの話」が面白かった

    というか、「王女さまと小ネコの話」は
    脱線だらけというか、ここまで「何の話だっけ?」ってなるお話もめずらしい^^

    おもしろかった~!

  • 表題作ほか7編。郵便屋さんのお話が好きです。王女さまと子ネコの話は長いけど、最初と最後の猫のユーラが自分の家に戻ってヴァシュカを連れてくるところがいいです。

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著者プロフィール

一八九〇年、東ボヘミア(現在のチェコ)の小さな町マレー・スヴァトニョヴィツェで生まれる。十五歳頃から散文や詩の創作を発表し、プラハのカレル大学で哲学を学ぶ。一九二一年、「人民新聞」に入社。チェコ「第一共和国」時代の文壇・言論界で活躍した。著書に『ロボット』『山椒魚戦争』『ダーシェンカ』など多数。三八年、プラハで死去。兄ヨゼフは特異な画家・詩人として知られ、カレルの生涯の協力者であった。

「2020年 『ロボット RUR』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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