作品紹介・あらすじ
悪漢淫婦を描くほうに馬琴はより以上に老熟している、と言って魯庵があげた悪玉の一人に素藤がいる。大盗賊の息子に生れ一国一城の主になり上ったこの男、妖術使いの尼僧妙椿と手を組み、犬江親兵衛、里見家と熾烈な闘いをくりひろげる。
感想・レビュー・書評
絞り込み
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この巻は一犬伝。まるっと犬江新兵衛の巻。
蟇田素藤が放った刺客から里見義実を助けた親兵衛。
神隠しにあっていた間どこで過ごしていたのかというと、実はここ。灯台下暗し。
伏姫の霊に守られて、伏姫に文武の教えを受け、身の回りの世話を荒芽山で散り散りになった姨雪代四郎一家。
え?姨雪代四郎一家?
頑なに生死の知れなかった嫁ふたりもピンピンしとりました。
見た目は17、中身は9歳の親兵衛ですが、伏姫のご加護のおかげもあり、とにかく強い。弁も立つ。ちょっとはんかくさい。(北海道弁ですが、標準語でどういったらいいものか…)
あっという間にたった一人で素藤をつかまえて戻ってくると、「極刑を!」という臣下の声に対して「許してあげるのが仁である」と、100叩きのうえ追放するのですが、義成よ、若造の意見を聞きすぎではないか?
と思ったら、やっぱり素藤は妖術遣いの尼・妙椿と組んで戻ってくる。
邪魔なのは親兵衛一人なので妙椿の妖術によって親兵衛を陥れた挙句に、義成に「七犬士を探して来い」と言わせて親兵衛追放。
そのうえで素藤がかねてより所望していた、義成の娘浜路姫を妙椿がかどわかす。
と、そこへ現れたのは伏姫。
浜路姫を取り返したうえに、右足で妙椿の胸を蹴る。
え?姫、なかなか意表を衝いた行動でございますぞ。
城に戻った浜路姫からすべてを聞いた義成が、後悔しようがどうしようが、親兵衛の旅は始まってしまった。
毛野に仇を取らせてくれた河鯉守如の息子、高嗣が今まさに処刑されようというその時にい合わせたわりには、八犬士得意の立ち聞きしている間に事態は変転。
これは如何に?というところで次巻に続く。
子どもの頃に見た親兵衛はヒーローでしたが、大人の目で見ると生意気だな。
謙譲の美!と言いたくなる。
もちろん里見の殿様の前ではちゃんとへりくだっているのだけれど、周りの大人たちにもっと気を遣ったら?って思うのは現代の考え方なのだろうけど。
親兵衛が生まれ故郷に立ち寄ったとき、近所の人たちが詩やら歌やらをプレゼントするのですが、学のない田舎の人たちなので作品の出来はよろしくない。
その描写で“平仄だも整わざる詩(からうた)を、茶良様(ちゃらよう)とかいふ悪筆もて可惜(あたら)唐紙(たうし)に写(かき)ちらせしを、懐にし来て寄するもあり。”ってある。
茶良様って、チャラいの語源かなあ。
ちょっとわくわくしました。
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九歳の犬江親兵衛 活躍中。妖婦 妙椿と悪党 素藤 に対して戦いを繰り返す。
著者プロフィール
1767年生まれ。江戸時代後期の作家。1814年から28年をかけて全98巻、106冊の「南総里見八犬伝」を完結させた。1848年没。
「2016年 『南総里見八犬伝(三) 決戦のとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」
曲亭馬琴の作品