真景累ケ淵 (岩波文庫 緑 3-2)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (484ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003100325

感想・レビュー・書評

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  • 因果応報、ということなのでしょうか。あ、以下ネタバレです。
    主人公新吉らの罪が最後には暴かれ、悔い改め自決。というのはわかるが、そもそもの発端として、親の因果を子が受け継ぎ、背負い続けねばならんというのは何とも。様々の登場人物の血縁・因縁が絡み合うのも面白く、源氏物語に通じるものもあるかと思う。
    ただ、これ、怪談とは言いがたい。円朝自身、冒頭で文明開化により「幽霊というものは無い、全く神経病だということになりました」といっているのだから、紫式部のいうところの「心の鬼」、つまり良心の呵責等といった己の意識の見せるものに過ぎないということなのであろう。故、タイトルの「真景」とは「神経」のことを指すとのことである。
    さて、それでも今際の人間がありえぬ場所に現れたりしているので、幽霊と言えるのかもしれぬが、怪談という意味では本書は全く怖くない。
    豊志賀が自分に恋慕し、嫉妬の余り憤死。遺書に「この後女房を持てば七人まではきっと取殺すからそう思え」とあり、その呪われているとの念に囚われる新吉。しかし、これこそ良心の呵責とも捉えられるわけで、偶然度重なり手にすることになる鎌を、「この鎌は女房のお累が自害をし、私が人を殺めた草刈鎌だが、廻り廻って私の手へ来たのはこの鎌で死ねという神仏の懲らしめ」との因縁と捉えるのも、やはりまた心の鬼のなすところなのであろうと思われる。
    後半、安田一角のあたりはだれている感も否めなかったが、最後の因縁がまとまったところで、一応そのエピソードも無駄ではなかったことはわかるか。
    ・・・故に円朝の思惑通り、怪談よりも神経症寄りで本書は捉えられてしまったのだが、それでも、何故か抗うことのできない因縁、そのように生きざるを得ない人間の業というものは、非常に興味深く面白い。
    普遍的な人間の原罪や情欲、義理や人情といったものが克明に描写されており、時代を超えて共感できるものであろうと思われる。
    また、さすがは落語。耳にしてわかる程なのであるから、非常に読み易い。言葉には知らないものもあるのだが、リズム・語り口・描写その他、実に見事。また、逍遥以前にここまで完成された口語体の文学作品があったことにも驚きである。

    ただ、これが落語っていうことは、一日で話したの?と疑問に思ってしまったのだが、「〜のところはちょっと一息。」などといって段が変わるので、そこで日にちも変わっていたということだったのですね。450頁以上あるので、聞くほうも辛いなぁなどと余計な心配をしてしまっておりましたよ。

  • 映画化するそうなので。

  • 廻る因果は糸車。理不尽な殺害の恨み、怨念は巡り巡って親兄弟。作者のご都合主義は普通嫌われるけれど、このご都合主義はすべてお園、豊志賀の恨み怨念によるものと思えば全て納得せざるを得ない。

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著者プロフィール

1839~1900。幕末から明治の落語家。人情噺を大道具・鳴り物入りで演じて人気を博す。近代落語の祖といわれる。代表作に「真景累ヶ淵」「怪談牡丹灯籠」「塩原多助一代記」など。

「2018年 『怪談牡丹燈籠・怪談乳房榎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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