- Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003100714
感想・レビュー・書評
-
二十三歳の青年が失職したり、家の中で一緒に住んでいた従姉妹への恋や同僚への嫉妬、憎悪や叔母との関係など、人間の仔細な描写の極めて卓越に描かれた作品。明治十九年(出版二十年)、二葉亭四迷が齢わずか二十三にして完成させた作品である。大変おもしろく、夢中になって読んだ。こういった昔の小説で、自分と歳が近い青年の物語というのは、非常に身にしみておもしろく感じられる。2008-11.17.
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人を信じることは大切です。疑いの余地なんて至るところに存在するけれど、疑いは態度に表れ、人間関係を悪化させる。
理想と現実には常にギャップや矛盾が氾濫し、そこに上手く折り合いをつけないと、延々とラビリンスへ迷い込んでしまふ。
気高く、媚びない文三が、没落(リストラ・失恋)していく。真面目に生きる意味なんてあるのか?という問いかけのようで、だけどエンディングを曖昧にぼかすことで、上手く思考の機会を読者に与えてる。
対極の人物だって、表面上は幸せに見えても、実際幸せには描かれていない。
浮雲の「浮」は浮き世、そして憂き世の掛詞なのかな?
四迷はきっと厭世感にうちひしがれていたのでしょう。 -
何てことない話といえばそれまでだけれど、こういう素朴な日常を描いたものって好きです。
恋の淡さも、今の時代から考えると奥手すぎるほど控えめな様子も、
恋心を抑えきれずに右往左往してしまう様子も、じれったいけれど、何か共感できちゃいます。
そして何より、言葉回しがすごく面白かったです。
駄洒落みたいな掛詞や、ひとつの言葉を引き出すための飾り言葉や枕詞(っていうのかしら)が散りばめられていて、
日本語って、すごく茶目っ気があって楽しい・面白い文化だなと思いました。 -
面白い。近代文学でこんなにおもしろかったのは初めてかもしれない。現代にも言えることですね、これは。未完なのは残念だけど。
-
カタカナ遣いがたまらん。ヒロインが可愛らしい。
-
近代初のヒロインになぜこうも魅力がないんだろうか…と思いました。
-
初の言文一致体小説だということで、読んでみました。内容自体は物凄くつまらないので、近代小説が好きな方にはオススメできない本です。小説を「言文一致体」でどのように表現したらいいのか、当時のその苦悩がわかります。
-
坪内逍遥の提唱した近代小説のあり方を履行したのはこの小説じゃないでしょうか。一度ロシア語で書いたものを和訳したんですよね(二葉亭四迷はロシア語学校で学んでいた)未完なのが残念です。
-
秀才だが要領の悪い文三と、ミーハーな従妹・お勢、要領はいいが軽薄な昇の三角関係を中心に、官僚腐敗を批判した、近代リアリズム小説。言文一致を成し遂げた未完小説でもある。
文三と昇、お勢とお政、四者が各々の果たすべき役割をきっちり守り、歯がゆい人間関係を寧ろ整然と見えるほどに演出している。まさに出来すぎた物語だが、不自然ではない。ありがちな男女関係・上下関係を無駄なくさらりと書き上げている。
韻を踏んだ調子のいい文章、諸所に散りばめられる洒落冗談、その奥に含まれた痛烈な社会風刺。処世術を知らない者は惨めな思いをするばかりで、正しいことをしているのに報われない。文三は男としては意気地なしだが、人のいい青年であるがゆえに私は最後まで彼を憎むことはできなかった。