銀の匙 (岩波文庫 緑 51-1)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003105115

感想・レビュー・書評

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  • 伯母と過ごした少年の日々を温かく描いている一冊かと思ったら前後編あるし17歳まで成長していく日々を綴っている1冊だった。
    虚弱体質で感受性が豊か過ぎて癪持ちな少年の細かな観察眼が、成長するに連れ身体的な感覚を帯同して自身のみならず周囲の自然や人に及んでいく。
    ずっと伯母さんとの世界だったのが交代のように「お国ちゃん」が出てきて色々な人物が登場してから面白く感じてページが進んだ。
    人が成長する様は読んでいても楽しい。伯母さんの所在を気にしながらも。
    後編の再会の一夜に私は号泣。人は人を経て成長するって分かってるけどさ!

  • 四季折々の描写が美しくて心が洗われました。なんとなく、春はあけぼの…の枕草子を思い出した。子供の目を通して見る世界は色鮮やかで驚きに満ちていて、一日一日が輝いていた。もうほとんど忘れてしまったけど、確かに自分もこんな世界で生きていた…と、しみじみ読みました。
    病弱で、あかんたれで、感受性豊かすぎる主人公を、優しく見守る叔母さんの愛情に心打たれた。また、お国さん、お蕙ちゃん、友達の姉様という3人の女の子たちに対する淡い恋心のような描写も微笑ましくてよかった。
    特に何が起こるわけでもなく、少年の日を淡々とつづった物語ですが、日本語の美しさを堪能できる一冊でした。

  • 夏目漱石がその才覚を見出した中勘助。「銀の匙」は□□の17歳までの体験と内面を描いた小説である。題名でもある「銀の匙」が登場する棚の描写に代表される、心情の機微やきめ細かい描写が柔らかく美しい。純文学が持つ日本語の持つ品性や語感を楽しむ小説である。

  • 誰もが持っている記憶の中の少年時代を、美しい文章で蘇らせてくれる一冊。何度か読み返しているが、その度に、ある種の清涼感を心に与えてくれる。
    銀の匙によって呼び起こされる情景は、波の音や、炎の揺らめきのような、気持ちを落ち着かせてくれる不思議な力を持っているように感じた。

  •  綺麗な日本語といえばこれ。心洗われたいときに読んでる。
     読んでると色と風と味と人の温かさが見えてくる。

  • 子供の鋭い視線、質問には時々どきりとするけれど、まさにそのような子供視点の話。「だって先生も人間だって思うから」とか、好きな子にいつまでも素直になれないところ(!)に中勘助の繊細で心優しい人柄が伝わってくる。
    謙遜しながらも周りから応援されたと聞くけれど、本当に人に恵まれていた方だったんだと思う。

  • 作者の当時の幼少期と自信のそれとは全く時期が異なるし,体験内容も違うのだけれども,幼き頃に感じた印象・思いというのはとても共感できた。
    大人になった今では当たり前の景色でも,子供の頃はやたら不思議に映ってたなぁと妙な郷愁を感じてしまった。

  • 劇的な展開も、あっと驚く結末もないが、少年時代におそらく誰もが抱くあたりまえの感情を、これほどあたりまえに描けている作品は他になかなかない。
    忘れたころにもう一度読み返したい。

  • 表現が美しい。
    短く章立てされているので一つあたりの話に劇的な起承転結があるわけではないが、不思議と引き込まれる。

    子供のころに見えていた世界を透明な水越しに覗き込んでいるような気分になる。景色もそうだが、心情もそうだ。
    周囲と自分との差ーー例えば漢籍を知る主人公と知らない他の子供たちとの中国観の違いのようなーーを感じてしまう時、主人公は他の子供を見下しながらも孤独を覚える。
    皆と同じであることは楽でしかも快感だ。しかし同調できない。協調性の有無ではなく、自分を裏切ることになる行為に諾と言えないのである。
    だから、この小説は水鏡で世界を映したような美しさと悲しさを湛えている。

  • とてもよかった。小学校低学年くらいまでの、友達との遊びに完全に没入できていたあの感覚を思い出した。子供時代については嫌だったことを思い出しがちで、あのころに戻りたいなんて一切思わずに来たから、地層のとても深いところに埋もれていた感覚を再発見した気持ち。戻りたくはないけれど、かけがえのない時代。

    中勘助はとても感受性が強い人で、こんな子が弟だったら大変すぎる。でもこういう人がいて本を書いてくれてよかったと思う。

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著者プロフィール

1885年、東京に生まれる。小説家、詩人。東京大学国文学科卒業。夏目漱石に師事。漱石の推薦で『銀の匙』を『東京朝日新聞』に連載。主な著作に小説『提婆達多』『犬』、詩集に『琅玕』『飛鳥』などがある。

「2019年 『銀の匙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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