林芙美子紀行集 下駄で歩いた巴里 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 立松 和平 
  • 岩波書店
3.80
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感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003116920

感想・レビュー・書評

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  • 日本国内だけでなく、シベリア鉄道に乗ってロシア横断してパリまで行っちゃったり、日本国内でも樺太まで旅行されたり、放浪されていてとても楽しそう。わたしも旅がしたくなった。

  • 80年くらい前に書かれたとは思えない。小難しいところはまったくなくてすごく読みやすかったし、おもしろかった。今の紀行文を普通に読んでる感じ。
    何日もかかってシベリア鉄道でパリに着いたら、何日も寝てすごし、朝、目を覚ましてさて何をしたら?と途方に暮れる、なんてなんだかすごく優雅な旅行な感じが。ひとりでカフェで仕事したり、三日月パンとコーヒーの朝食をとったりする林芙美子、かっこいい。
    パリ、樺太、大阪などさまざまな町の情景が読んでいて鮮やかに目に浮かぶような。
    すごく素直な文章で、わずらわしいことをすべて忘れたくて旅に出る、というような思いとか、旅愁、不安とか寂しさ、卑屈な気持ちなんかがたまに出てくるところもいい。

    林芙美子って、貧乏、か、森光子の放浪記の騒いででんぐり返りしてるようなイメージしかなかったんだけど、ぜんぜんイメージ変わった気がする。もっと林芙美子の書いたものが読みたくなった。

    そして、ちょっと旅に出たくなる。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ぜんぜんイメージ変わった気がする」
      思わず「へー」と声が漏れました。影響を受け易いタチなので、私も読みたくなりました(先ず、このお洒落な「...
      「ぜんぜんイメージ変わった気がする」
      思わず「へー」と声が漏れました。影響を受け易いタチなので、私も読みたくなりました(先ず、このお洒落な「下駄巴里」から)。。。
      2012/07/18
    • niwatokoさん
      わたしのこれまでのイメージがまちがってたのかもしれませんが(笑)。文章も、感動や楽しさが伝わってくるけれど淡々としていて、今の女性誌に載って...
      わたしのこれまでのイメージがまちがってたのかもしれませんが(笑)。文章も、感動や楽しさが伝わってくるけれど淡々としていて、今の女性誌に載っているちょっとおしゃれな紀行エッセイみたいだと思いました。(言いすぎかしらん)。
      2012/07/19
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「これまでのイメージが」
      私も同じように思ってました。多くの人がそうじゃないかと。。。
      しかし、下駄でパリって格好良いなぁ←それが気に入った...
      「これまでのイメージが」
      私も同じように思ってました。多くの人がそうじゃないかと。。。
      しかし、下駄でパリって格好良いなぁ←それが気に入った猫でした。
      2012/07/20
  • まず何より、この時代に林芙美子が女一人で鉄道でロンドンまで行った、という事実に驚く。
    なんでも見ようという外へ外へ向かう目と、どこへでも行けるという内側へ内側への切なさがないまぜになっていて、読んでいて一人の旅人の小さな姿が浮かんでくる。

    当時の情勢の中で、彼女は一人のただの旅人。しかしその旅人は、自分の足で行動し、自分の目で物事をとらえる。
    それは途方もないタフさを必要とすることだと思うし、同時に圧倒的な自由だなとも思う。
    芙美子が望んでいるのは、強い自分と不安定な自由? その中で生きていくという覚悟を、彼女は自分に求めて旅の中で少しずつ確かめているのかもしれない。

    楽天的でありながら、旅を求める彼女の切実さが詰まっているように感じられた。林芙美子の著作を読んでみたら、また印象が変わるだろうか?

  •  猫が殺される描写がある。そういうのがあると私は読めなくなってしまう。流し読みに近くなってしまうけど、それでもリアルで濃厚な内容だった。難しい漢字や描写も多いけど、全てが詳細で引き込まれる。猫の部分がなければ星5つだったかもしれないな。

  • 私からすれば林芙美子の、外国を一人旅する勇気はすごいなあ、と溜息ものなんだけれど、本人にしてみればこれらの旅はひどく切実なものだったのだと思う。行きたいから行く、というよりもむしろ、行って、自分の故郷が日本だということを、確認しているような。

  • 林さんの行動力、強さが滲み出た作品だった。

    巴里に行くまで乗り継ぎをしながら電車で行く所。言語の違いもあるのに現地の人と楽しく会話する所。
    文学作家として文章を綴り続ける所。

    私も一人旅が好きだけど、ここまでは正直出来ない。貧しい幼少期を生き抜き、自分の作品を売り歩いたり、戦時中も記録員として戦場へ行ったり…。こうした背景も踏まえると行動力の塊だ。

    そして単純に読んでいて楽しい。当時のパリってこんな感じだったんだと思う描写も多々。パリに行く時があれば再読してから行きたい。

  • フランス旅行に行くので持って行った。
    巴里は眠くなる天気、御伽話のような街並みという感想は現代でも共感できる。

  • 先日尾道に行った際に林芙美子の足跡に触れたこと、内田百閒の紀行文に日本郵船の船上で林芙美子と話したとあったことのなどから興味を持って読んでみた。「下駄で歩いた巴里」という秀逸なタイトルどおりの面白い内容で、戦争に突き進む昭和初期の日本で、これほど精力的に国内外各地を観て回る肝の座った女性がいたのかと驚かされた。「放浪記」も読んでみたい。

  •  放浪記とは違うまた新しい発見や驚きがあった。戦前の日本各地の街並みや自然の様、庶民の生活の様子、庶民と呼ばれていた人々の思いを知ることができた。今は行くこともできない樺太、ロシアの人々や文化に関する記述、戦前のヨーロッパの様子、戦前のヨーロッパでの日本の受け止められ方…「どこでもドア」のような本だった。
     もう暫くは林芙美子氏から抜け出せそうにない。

  • 特に何の前提知識もなく読み始めたら、第二次世界大戦ちょっと前くらいの話で驚いた。特別に裕福というわけでもない若い女性が、北京にもシベリアにもパリにもひとりで行ってしまう。
    戦争の気配はそこここにあるし、著者もそれを感じ取って書き残したりしているのだけど、それはそれとして彼女はぽくぽくどこでも歩いて行ってしまうし、旅先の部屋に転がり込んできた知らない女性の面倒もみてしまう。片言で何でも手に入れてしまうし、何だかよく分からないものも買って食べている。強い。
    軽やかな文章でするする読めるし面白かった。旅先で何が何銭だったとか書いてくれているのが、分からないなりにリアリティを感じる。

  • なんとまあ、こんな随筆があったとは。
    有金はたいてシベリア経由で巴里へ行っては、「ああ帰って死ぬほど仕事がしたい」と嘆息し、金を借りてやっと帰国しては「ああどこか行きたい」と涙する。さすが芙美子女史。破天荒こそ楽しけれ。

  • 林芙美子の昭和初期の旅行記。

    中国旅行記では、大連や上海、北京の様子が描かれている。散歩を白想と言うのが素敵。

    続いては、ハルビンを経てシベリア鉄道に乗って、パリへ渡り冬から4月にかけて滞在しロンドンを尋ねてから船でフランス、ナポリに寄港した旅行記。
    満州事変勃発によるハルビンのものものしい様子、素朴なロシアの人々、ベルエポックのパリのカフェやキャバレー、酒場や娼婦など下町の様子、奈良のようなフォンテンブローの森が描かれている。

    また樺太旅行記では、豊原と知取を訪ねる。茫漠としていて林業が盛んで大王製紙の工場があったことなど。日の光を水のようと表現していて北国の透明感が伝わってくる。

    摩周湖を訪れた北海道旅行記、春の奈良、東京の浅草や郊外の大垂水から与瀬への山歩き、など当時の時勢や時代の移り変わりを知ることができる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/701047

  • 《目次》
    ・「北京紀行」
    ・「白河[ハクガ]の旅愁」
    ・「哈爾濱[ハルピン]散歩」
    ・「西比利亜[シベリア]の旅」
    ・「巴里まで晴天」
    ・「下駄で歩いた巴里」
    ・「巴里」
    ・「皆知ってるよ」
    ・「ひとり旅の記」
    ・「春の日記」
    ・「摩周湖紀行」
    ・「樺太への旅」
    ・「江差追分」
    ・「上州の湯の沢」
    ・「下田港まで」
    ・「私の好きな奈良」
    ・「京都」
    ・「文学・旅・その他」
    ・「大阪紀行」
    ・「私の東京地図」

  • 作家林芙美子がシベリア鉄道に乗って向かったパリ、ロンドンでの半年の滞在記を中心とした紀行文集。シベリア鉄道の旅が、乗り合わせた人々を活写して最も面白いように思う。昭和ひとけた年代の中国、シベリア鉄道は日本人、ロシア人、中国人そして西欧人が登場して国際的な雰囲気がある。当時ならではの緊迫した事情をうかがわせる描写もありつつ、踏破しかつ観察し共感する、こんな人が当時いたのか、と思わされる。

  • 7月22日 下駄の日 にちなんで選書

  • 2016.12
    船、鉄道乗り継いでパリまでの旅程が楽しい。この時代の旅は浪漫。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00077055

  • 当時の海外の遠さ、鉄道の旅の旅情。彼女の外国人との接し方が面白い。女性のたくましさや優しさをめいっぱい感じる。

  • 『放浪記』で有名になった筆者が中国、シベリア鉄道、パリへの旅行について書いた旅行記。戦前の日本人の目に映る外国模様がリアルに描写される。

  • NHKのテレビ番組でJブンガクというものがあります。
    2010年の7月に 下駄で歩いた巴里 を紹介していたので読み直しました。

    木屑の浮いた日本の優しい壁の色こそなつかしくなってきます。

    というくだりを

    I longed for the gentle color, with chips of wood sticking our here and there, of Japanese walls.

    と訳していました。

    へー,そういう意味なんだと
    下駄で歩いた巴里 の中身と英語の勉強になりました。

    英語にしてみると下駄で歩いた巴里 の良さと日本語の良さを再認識できることが分かりました。

  • この素晴らしいバイタリティはどうでしょう。昭和の初めに、女の人が一人でシベリア鉄道に乗って、中国→ロシア→ポーランド→ドイツ→フランス→イギリスと旅行します。フランスとイギリスには長期間滞在。言葉もほとんどわからないというのに。でも、物書きというのはどこでも仕事ができてうらやましい。

  •  昭和の始め、「放浪記」がベストセラーになった林芙美子はシベリア鉄道の三等列車に乗り、巴里に向かう。女の一人旅。しかも満州事変直前。きなくさい世相を反映し、どの街にも兵士の姿がある。戦いの銃声が聞こえる夜もある。そんな中、籠に缶詰やワイン、パンを詰め込み、アルコールランプや鍋まで持ち込んで、鉄道の旅を続ける林芙美子。三等列車だけあって、乗り降りする現地の人たちはごく普通の庶民だが、彼らを見つめる林芙美子の目は優しくも鋭い。
     日本から巴里までかかった費用が日付ごとに細かくまとめらていて、旅の毎日が実感を持って伝わってくる。長期滞在した巴里でも、倫敦でも樺太や中国でも、旅というよりしっかり日常を生きている彼女の力強さとユーモアは、80年を経た今読んでも色あせない。

  • 今の時代ならともかく、昭和のはじめに女性1人で旅してたなんて、しかもシベリア鉄道に乗ってヨーロッパまで行くなんて、すごくかっこいい。旅の中で見たもの、感じたことが淡々と書かれていて、描写の仕方や視点、表現が素直できれいでおもしろい。

  • 昭和初期の時代にこれだけ活動的な女性がいたことに驚いた。
    そして意外と海外に出ている日本人は多かったんじゃないだろうかと思う。

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著者プロフィール

1903(明治36)年生まれ、1951(昭和26)年6月28日没。
詩集『蒼馬を見たり』(南宋書院、1929年)、『放浪記』『続放浪記』(改造社、1930年)など、生前の単行本170冊。

「2021年 『新選 林芙美子童話集 第3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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