- Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003225516
感想・レビュー・書評
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この精神的閉塞感。救いの無い人々の物語が
胸を打った。
ジョイスの4部作を読むには、アイルランドの哀しい歴史を
まず識らねばならない。
そして。ダブリンを舞台にこの4部作を執筆したジョイス自身の歴史
も識らねばならない。(ジョイスのダブリン時代は生涯において決して
長くない)
イギリスに支配され続けた歴史。
イギリス系富裕層のプロテスタントに迫害され続けた中下層階級の
カトリック系アイルランド人に歴史。
1800年代中頃のじゃがいも飢饉によって、人口が半減し
仕事、結婚すら安易で無くなってしまった歴史。
第一公用語『アイルランド語』が衰退し、実質、支配国であった
イギリス『英語』が支配した歴史。
独立運動、内戦、現在もイギリス自治権下北アイルランドとの関係。
ジョイスの描く『ダブリン市民』達は、『麻痺』という名の無気力と
閉塞感の中、日々を生きている。
登場人物達の関係や、言動、行動はそのまま
支配国イギリス対被支配国アイルランドの関係でもあり
時にプロテスタントとカトリックの関係を内包しつつ描かれていく。
市民達の名前や、場所、言動が尽く哀しいアイルランド=ダブリン
の歴史を投影する手法は、流石!と思う反面、その歴史を深く
読み込まなければ決して理解出来ないと感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ダブリン市民の生活の音やリズム、匂いが伝わってくるお話、15編