黄金虫/アッシャー家の崩壊 他九篇 (岩波文庫 赤 306-3)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003230633

作品紹介・あらすじ

均整と統一という明確な方法意識を持っていたポオ(1809‐1849)は、短篇小説に絶妙な手腕を発揮した"スタイリスト"であった。胸躍る痛快な暗号解読の物語『黄金虫』、夢幻的雰囲気と緊迫感にひたされた『アッシャー家の崩壊』-。『ボン=ボン』『息の紛失』等、ノンセンス物も収録した、ヴァラエティゆたかなアンソロジー。

感想・レビュー・書評

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  • ミステリーファンならお馴染みの短編集ですね。
    若い頃クラシック喫茶店で音楽が聴こえない位に没頭して読みふけりました。

  • 何十年ぶりかの再読。
    表題作を含め11の短編を所収。やはり「黄金虫」と「アッシャー家…」は再読してもまた面白い。

    「黄金虫」は、米国サウスカロライナ州チャールストンにほど近い、サリヴァン島という小さな砂州から物語が始まる。「僕」は、親友であるルグラントの小さな家を訪ねる。大人の男同士の、飾らない交流、友情がそこにある。読んでいて心和む。大人の男同士で、かような交情があるのはうらやましい。旧い城砦があったり、男同士で宝探しにでることから、ふと映画「冒険者たち」の、優しくもせつない手触りを思い出した。

    「陥穽と振子」は、“拷問もの”。刃物を仕込んだ振子という壮大な構造物、という奇想である。一方で、中世スペイン・トレドで異端審問の凄惨な拷問が行われていた史実を下敷きにしているという。それを考えると怖ろしい。そういえばカフカの「流刑地にて」の処刑機械の奇想を思い出した。

    「『ブラックウッド』誌流の作品の書き方/ある苦境」は初読。秀逸である。「ブラックウッド」誌というのは、19世紀アメリカで実際に発行されていた大衆向けの読物雑誌だという。大胆に翻案するなら、今でいう「週刊実話」やかつての「GON!」のような下世話な雑誌か。その編集者や読者に受ける小説の書き方を指南される、という構成。メタフィクションというか、なんというか、小説として相当ぶっ飛んだ実験を試みている。

    さてところで、改めて、江戸川乱歩がポオの精神を濃厚に踏襲していることを実感したのであった。例えば「赤死病の仮面」で公爵が築いた、7つの色彩で構築した舞踊広間をもつ荘厳な宮殿という奇想も然り(乱歩の「パノラマ島奇譚」を想起した)。そして、「アッシャー家」の屋敷の“崩壊の美学”もまた“パノラマ島の崩壊”に繋がっていると感じた。

    同じ岩波文庫のポオ短編集「黒猫/モルグ街…」も良いが、私は、この「黄金虫…」の短編選のほうが、よりエンタメ度が高いように感じた。

  • 図書館で借りた。

    高等遊民について百科事典を調べたら、ポオの『群衆の人』が紹介されていたので読んでみた。
    誰と話す訳でもなく、ただ人ごみの中にいないと不安になる人物を追跡する話だった。何故雑踏のなかにいようとするのか、についての記述はない。

    『ボン=ボン』『息の紛失』のようなふざけた作品を書く人なのだと初めて知った。
    『赤死病の仮面』はぞっとする話だった。

  • 黄金虫:測量って大事だね! 特に基準点!
    ブラックウッド:アンジャッシュっぽい

  • 「メッツェンガーシュタイン」Metzengerstein, 1832「 ボン=ボン」Bon-Bon, 1832
    「息の紛失」Loss of Breath, 1832
    「ブラックウッド」誌流の作品の書き方/ある苦境
    「リジーア 」Ligeia, 1838
    「アッシャー家の崩壊」The Fall of the House of Usher, 1839
    「群集の人 」The Man of the Crowd, 1840
    「赤死病の仮面」 The Masque of the Red Death, 1842
    「陥穽と振子」The Pit and the Pendulum, 1842
    「黄金虫」The Gold Bug, 1843
    「アモンティラードの酒樽」The Cask of Amontillado, 1846

  • 怖い。ナンセンスものも収録。

  • 「リジーア」「アッシャー家の崩壊」「赤死病の仮面」「黄金虫」が面白かった。
    特に「リジーア」に引き込まれた。物凄く怖い話だった。

  • 美女の死と再生がテーマの「アッシャー家の崩壊」と「リジーア」が特によかった。
    伝統的ゴシックホラー風の「メッツェンガーシュタイン」と「赤死病の仮面」もいい。
    「陥穽と振子」は一つの場面をずっと描いてて、他のポー作品にはない面白さがあった。
    「群衆の人」は、主人公の人間観察から当時のロンドンの世相が見えてくる。

  • 表題作あたりは昔違う文庫で読んでるんですが、この岩波版は短編1作ごとに解説があってわかりやすく、当時のイラストも収録されているのでちょっと得した気分。

    収録作はバラエティに富んでいて、『ボン=ボン』『息の紛失』『ブラックウッド誌流~』あたりはかなりコミカル。ポーってこういう作品群もあったんだ、って新発見。

    とはいえ個人的に好みなのはやはりゴシックな作品群のほう。『アッシャー家~』は言わずもがな、この本の収録作の中では、死んだ妻が甦る『リジーア』や、「死」が擬人化されたような『赤死病の仮面』、中世の伝説めいた『メッツェンガーシュタイン』なんかのほうが断然好きです。

    『アモンティラードの酒樽』は、どちらかというと『黒猫』なんかに近い完全犯罪(を喋らずにいられない・笑)もの。『陥穽と振子』は、以前シュヴァンクマイエルの映画も見たんですが、最近の作品でいうなら『ソウ』とか『キューブ』みたいな、目が覚めたら謎の密室に監禁されていて突然拷問にさらされる…みたいな不条理ホラーはある意味この系譜なのかなと思ったりしました。

  • ポーの笑劇ものは「ボン=ボン」くらいしか読んだことがなかったが、「息の紛失」をよんでみたらこちらも面白い!
    言葉あそびのセンスがかなりいい。

    そして、「息の紛失」にも「アッシャー家の崩壊」にも似た形で“墓”が登場するが、このへんはホラーといか、幻想文学的だと感じた。
    生と死や、現実と非現実の画然たる差異を揺るがすところに、これらの作品の特徴がみられる。

    「黄金虫」は、坂口安吾の「桜の森の満開の下」を連想してしまった。

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