肝っ玉おっ母とその子どもたち (岩波文庫 赤 439-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003243930

作品紹介・あらすじ

"叙事的演劇"を唱え、"異化効果"など数々の実験的な手法を取り入れ、演劇の革新を精力的に実践したドイツの劇作家・詩人ブレヒト。ブレヒトの数ある戯曲の中でも『三文オペラ』と並んで最もポピュラーなこの作品は、三十年戦争を背景に、「肝っ玉おっ母」と呼ばれる一庶民の目線から戦争を捉えた反戦劇である。

感想・レビュー・書評

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  • 無名塾の舞台を見る前に予習で見て、舞台も見て、という経緯。解説によると、ブレヒト自身は主人公を戦争に拘泥して生きていこうとする無能な人物だ、みたいな感じで否定的にとらえていたそうですが、世間はその反対で、戦争に翻弄されつつも力強く生きる女性、悲劇のヒロインとして見てきたようです。本書は戦争そのものの是非に答えは出さない、あらゆる問答によって、市井ではどのように言われているのかを提示するもので、劇作というのはそういうものなのかもしれませんが、唯一セリフのない娘の一連の不可解さというのは、作家の「人であればこうあるべきだ」という姿を見るようだね。

  • 反戦の思いと戦争商売人としての気持ちの矛盾がうまく描かれている。

  • ブレヒト演劇の特徴として何かと言及される「叙事演劇」「異化効果」。その醍醐味を分かりやすく味わえる一作。

    この場合の「叙事演劇」とは、「歴史上の出来事を」扱ったと言う意味のみならず、およそ「(登場人物に感情移入してカタルシスを体験することを拒み、むしろ舞台を出来事として(批判的、冷ややかに)鑑賞することを狙った演劇」とでも理解してよいだろう。ヒロインのアンナの造形は魅力的だが、その内面に立ち入るしかけはほとんどないといっていい。

    「異化効果」も、現実世界の常識や人々が抱く期待を、反転して観客や読者に提示することだといってしまっていいと思う。本作の場合は、もちろん「戦争あっての平和」という観点。訳者が解説で適切に指摘しているように「平和が勃発」すると商売がうまくいかないと右往左往するアンナが愚かしくも興味深く描かれている。

    さすがの名作といったところ。

  • 肝っ玉おっ母は商人、戦争に乗じて一儲けしようと企み戦地をかけまわる。
    彼女は戦争の中で子供をひとりまたひとりと失うが、最後のひとりまで失って、戦争を罵りながらもまた戦地へと商売に行くのだ。
    ブレヒトの目的とするところである異化、それは充分このテキストで実践されている。
    これは子を亡くした母親の悲劇などではなく、学ばない愚かな母親としての像が意図されていることが伝わってくるからだ。
    理論上は異化はスバラシイことだとは思うが、実際問題として叙情的演劇は観客に対してどれほどのメッセージ性を持つのか?
    行動を促すということだったが、人は自分に身近な問題だと感じた時以外は腰の重いもの。
    可能性が充分にある演劇だということは伝わってきましたが、実際に可能なんでしょうかね。

  • まだ読んでないけど、いいタイトルですね。

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