レ・ミゼラブル 1 (岩波文庫 赤 531-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003253113

感想・レビュー・書評

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  • 飢えた家族のためパン一切れを盗んだジャン・バルジャンは投獄され、脱獄を繰り返し、19年の刑期で仮出獄となり、そのまま身分を隠して逃走する。
    人を信じられなくなったジャン・バルジャンを神の愛で包んだ神父、男に逃げられ娘のために娼婦になったファンティーヌ、ファンティーヌの子コゼットを預かりいじめるテナルディエ夫妻、コゼットとその恋人になるマリウス、マリウスが身を投じる学生運動家たち。そして逃亡したジャン・バルジャンを執拗に追い続けるジャベール警部。

    作者がその時代を書いているので、歴史背景から学生たちの議論、フランス地下道の説明、バルジャンが成功させた産業の説明などでかなりのページを割いていたり、人々の暮らしが読み取れて興味深いです。

    小説としても面白くて深い。ラストではバルジャンのあまりのストイックさにボロ泣きしながら読みました。

  • 読了してから20年以上経ってからの再読。
    若いときにはうざったいと思った脱線や、知識がなくて訳がわからなかった戦争のシーン、そして何よりくどいとすら感じていた心理描写が、泣けるほど胸に迫ってきた。

    最後の、ヴァルジャンがコゼットの幸福を祝い、一方ではひどい失望を覚えているシーンは、読んでいて苦しかった。
    彼女の幸せこそが彼の望んだことだったのに、それを完全に叶えるには、ふたたび孤独と日陰に身を置かなくてはならない。何度も善悪や是非について葛藤してきたヴァルジャンですら、耐えられないほどの苦悶。
    コゼットが無垢で輝いているからこそ、読んでいてとても苦しかった。

    豊島与志雄の訳は古臭いと言われがちだけれど、この風格こそが、突飛な展開のままあるこの作品を地に足がついたものにしてくれていると思う。
    あと、青空文庫でタダで読めるのもお得。

  • 大部全4巻の初巻であり、大河小説の序盤だから少々退屈かも、と思いつつ読み始めた。だが、意外にも第1巻からグイグイ引き込まれた。面白い。
    慈父の如き慈愛の人ビヤンヴニュ司教の章や、ファンティーヌら4人娘の幸福時代の章は少々紙幅を費やし過ぎという感じもある。だがそれらは、後段ジャン・ヴァルジャンの過酷な生を描く舞台背景となっている。かようなサイドストーリー描写の分厚さに対して、読み進むうちに作者への信頼感を抱くようになった。
    ドラマチックである。ジャン・ヴァルジャンの生き様、変転というか復活と言おうか、劇画的にドラマチックである。極悪人から聖人君子へ。この展開は少し出来すぎな感もあるが、許す。なぜか許せる。
    心理描写をこってりしっかり書き込んでゆくので、人物像に説得力を感じてしまうのかも。自身の代わりに冤罪を負わされ法廷に立つ老人。マドレーヌ市長は本当の自分を告白するのか…。このくだりスリリングでグイグイ読ませる。この巻で最大の見せ場だ。
    第2巻も楽しみである。

    ※ひと切れのパンで何年もの懲役刑。量刑がめちゃくちゃであることよ。司法手続きも雑。19世紀半ばはまだこんな状況だったのか…。

    名著の誉れ高い小説なのだが、思えば未読であったし、映画化作品もなぜか観たことが無かった。展開も結末も知らずに味わえること幸いなる哉と感じている。

  • ミリエル氏という貧民、病人の為に尽くす司祭のらところにジャン・ヴァルジャンという19年間牢獄にいた徒刑囚が訪ね、彼を厚くもてなす。彼は銀の器を盗むが憲兵に連れられた彼に司祭は銀の蝋燭立てもあげる。それを善なる心で贖えと。
    ファンティーヌは父のないコゼットをテナルディエ夫妻に預ける。が、彼らは彼女に金を要求するばかりでコゼットを虐めている。
    モントルイェ・スュール・メールではマドレーヌと名乗る人物が市長となった。彼は工業を発展させ教育の場を作った。ファンティーヌは故郷のそこで針子をやるが貧しくなるばかりで病気になる。マドレーヌ氏を恨むが、彼は彼女を保護する。ジャヴェルは市長をジャンと疑っていたが別人がジャンとして逮捕されたことで一旦は悄然とする。しかし別人に冤罪がいかないようマドレーヌ氏は自身がジャンであることを名乗り出る。そしてファンティーヌは死に、ジャンは逮捕される。が逃げる。

    二章、イギリスとフランスの戦争のこと。そこで出会う将校と平民。

    面白い。ぐいぐい読める。続き楽しみです。

  • 「最高の法は良心」
    この言葉の意味を考えるに至るまでに、主人公ジャン・ヴァルジャンは人生の長い時間を費やすことになる。
    ロマン主義フランス文学の名著である本作『レ・ミゼラブル』は、1つのパンを盗んだことから始まる。
    19年間投獄され、社会の壁を乗り越えようと何度ももがくが、その度にジャン・ヴァルジャンは自身を阻む根深い抑止力に足を止められる。
    当時のフランスと現代日本とでは、まったく環境が違うと感じられるかもしれないが、
    本質的なところでは何も変わらないということが、本作を読むと理解できる。
    特に、法律・社会教育を学ぶ者にとっては、社会正義とはなんなのか、を考える良き機会を与えてくれる。

  • この物語は、如何様にも読める幅、許容が広い。
    ボクは、ジャンバルジャンが好きだ。

    そのジャンバルジャンの一生が提起した問題は何なんだろうか。
    1つは、正義とは何か、何に従うことが正しいのか、ということだと思う。
    法に従うことが正義なのか?
    良心に従うことが正義?
    いやいや、神の教えに従うこと?
    それとも、世間の常識に従うことが正しい?

    答えは簡単に出ないが、ジャンバルジャンとジャベール警部の設定は、
    良心・神の教えに従うことが正しいのか、
    それとも法に従うことが正しいのか、
    それを考えさせる、ユーゴーの問題提起ではないか。

    法に従うことは社会的正義を実践することになる。
    しかし一方で、法に縛られ自由を犠牲にすることでもある。
    ジャベール警部はその法の束縛に苦しみ、
    最終的に自死してしまう。

    良心や神の教えに従うジャンバルジャンは、
    確かに魅力的だ。
    しかし、社会的には危うい立場にあり、
    その危うさに常に苛まれながら生きていた。
    ジャンバルジャンもまた、その社会的危うさに
    縛られ、苦しんでいた。

    法であれ、良心・神の教えであれ、
    どちらに従っても、
    人間は完全な自由にはなり得ない。

    ということは、
    人間は結局、不自由な存在なのか。
    絶対的な正義など、この世には存在し得ないのではないか。
    そのことを問いかける物語が
    この『レミゼラブル』なのか。

    ユーゴーの意図の解明に
    正解はないが、
    意図の1つに
    正義とは何か、
    人間の自由は可能なのか、
    それらを提示することにあったのかもしれない。

  • 何気なくNHKの放送ドラマを見て、その内容に触発され一度じっくり読んでみようと思い、この本を手に取った。放送の方も原作に忠実に良く出来ていることがわかった。
    小説は、場面によっては詳し過ぎて眠気を誘うところもあるが、今更ながらに歴史的名作としての存在感を味わせてくれる、その強烈な迫力に舌を巻く。ストーリーはもとより表現が緻密・丁寧で誠実、テーマとともに秀逸である。普遍的で本質的な人間の精神世界の確執・思惑の物語に引き込んでくれる。時代がかった文語調の翻訳も味わい深い。このような、心の内面を深く抉り出し、あらゆる角度から解析し、人間の在り方に迫る小説は久しぶりに経験する。
    ジャベルをして「凶猛に満ちた狂信者の正直な無慈悲な喜悦のうちには、痛ましくも尊むべきある光耀がある---」と表現するくだりは印象的。

  • フランスの地名、人名に苦戦していますが、ストーリーはシンプルなので、しっかり入ってきます。ワーテルローの記述や当時のフランスの気風、哲学などは、ジャン・ヴァルジャンの波瀾万丈の生き方だけではない、レ・ミゼラブルが評価される側面なのだろうと思って読んでいます。

  • 人が人を思う気持ちの深さは、愛おしく至上のものである。やはり名作ですね。 

  • 雑談が楽しい。

  • 長い!

    映画版(2012)を見た後にこの小説版を読むと、一層長く感じる。
    一人一人の人物の描写に割くページ数が数百ページ単位に及ぶからだ。

    それぞれの登場人物が当時のフランス社会の様々な歴史を背負って、または翻弄されたために、その人物のキャラクター、心象が出来上がったことを表現している。
    そのため、前提の歴史、文化、社会の描写が長かったり、細かかったりする。
    この一巻でおよそ600頁あるが、映画版(2012)のそれでは最初の約30分というところだろう。
    ただ、その膨大な情報量のため、非常に登場人物の細かな心情の変遷が、その当時の社会的背景とリンクしながら伝わってくる。
    例えば、ジャンヴァルジャンが社会を憎む心情とその当時のすさんだ下層階級の社会がリンクする。

    とはいえ、やはり長い。
    いや、長いからこそ読み切った後の満足感はそれそれであるのだが。

  • 20年前に機会を得、一揃えを購入。けれどこれまで、一度も解かれることがなかった。20年が数えるでもなく過ぎ、確たる理由も無く漸く始めてみれば、思いの外読み易い:打ち捨てたままに置いたのは、偏に読む側の、心境の遠く在った故と判る。

    確かに、途方に暮れそうな大著ではある。一つの筋や一人の人物を偏に追おうとするなら、逸る足を妨げるかのように、伏線にしては仔細に過ぎる文脈は道中幾つも立ち現れ、時に煩わしく思えるかも知れない。だが、これはつまり或る一時代の、或る大陸の、或る一国の、或る都市の、寒村の、否人類の、憐れむべき足跡の記であり、故に何を採ったとて伏線などでは終わらない——そういう姿勢を、長い時間正対するに当たって、まず私は採用することに決めた。タイトルとして掲げられた『レ・ミゼラブル』、乃ち『悲惨なる人々』とは、天に見放され尽くした特殊な人々を云うのではなく、又身分の高低、生活の貧富、健康の有無を問わず広く魂の在り方として、著者歩く街のそこここ、路地裏のどこにでも容易に見出された、“ありふれたる人々” なのだろうと想われる。

    数々の挿話の中で最も心動かされたのは、嘗て町の、慈悲の、功徳の主であった処のバルジャンを匿う為、生涯ただひとつの嘘もついたことがなかった老修道女サンプリスが、法に対し僅かの一時に二度までも虚言を働いた行であった。既に、人生の岐路に立ち恐るべき葛藤に飲食も睡眠も忘れたバルジャンが懊悩する場面にて、著者の姿勢は明かされてあるが、それら行は同時に、私にとっての正義/信仰/神とは何かをも質す:
    「悲しいかな、彼が室に入れまいとしたところのものは、既にはいってきていた。彼がその目を避けようとしたところのものは、既に彼を見つめていた。」—— ‘何’ が?


    [余談]
    巻末、物語に於いては第二部の冒頭に当たる “ワーテルローの戦い” に関する長い語りに在っては、退屈するどころか一層丁寧に文字を追った。時も国も規模も陣形も異にしているが、それはこれまで軍記物をまともに読んだ試しのない私に “川中島第四次合戦” を想起させる:我等がウェリントンは “甲斐の虎”、傑物ナポレオンは “越後の龍”、である。
    きっと私は軍記物を好むだろう。新たな物語をゆく間に、新たな分野がまた拓けた。

  • 全然関係無さそうな話からだんだん核心に迫っていく手法。その丁寧な描き方は好きだ。
    ビアンヴニュ閣下がどういう人物であるのか、誇張するのでもなく、淡々とその姿を描き出すことによって、ジャン・ヴァルジャンとの邂逅の場面に一際奥行きが出てくるのだと思う。実際、ビアンヴニュ閣下の「あなたは名前を名乗る必要などない」云々の言葉には感動した。
    一巻最後のワーテルローの戦いの話も、フランス史に詳しくないので、正直なところ良く分からなかったのだが、ファンティーヌの話に入る時に、一八一七年のことを詳しく書いていたのと同じく、この時代の底辺の人々を活写するのに必要な部分なのだろうと思う。
    そして、この作品は、まさに今現在の日本の状況の、遠い隠喩のように感じた。

  • 人生で、はじめて泣いた本。

    帝国劇場のミュージカルを見る前に、
    予習として読みました。

    現代の聖書ともいわれる名作。

  • 読み終わるまで長くかかってしまった。つまらないとか、面白いとか、そういうことではなく、長い時間をかけてこの本を読み終えた。ジャン・バルジャンという1人の男の人生を一年という時の中で見つめた。
    100年前も200年前も、人の営みは変わらない。苦しい、悲しい、辛い、我慢ができない、そして嬉しい、愛おしい、守りたい。気持ちもまた変わらない。
    何百年と時を超える作品というものは、永遠不変の神秘に私たちを導いてくれる。物語というのは、人をそういうところへ連れていくべきものであると思うし、いや、べきと思う。コゼットを愛おしむジャン・バルジャンの哀切、小さな黒い服を抱きしめて涙にくれるジャン・バルジャンの姿に、私でない他人の人生の凄みに圧倒された。これが人か、人生か、1人の男の人生でしかないが、これが人なのかと。
    書物は100人の知己に勝る。

  • 最初に「岩波ジュニア文庫版」で読んで、あまりにも面白かったので
    これは普通の文庫で読まなくては!と思いまして、買いましたが何年経過したでしょう。
    読み応えあるのですが、その時の文化・風俗・歴史も合わせて知れることになり、とても時間がかかりました。

  • 小学生の時に岩波少年少女文庫で読んだきりだったのできちんと読もうと思って読み始めました。
    この作品のミュージカルが好きなので大まかなストーリーは知っていましたが、舞台では描ききれない細かな内容や描かれていないエピソードなどとても興味深かったです。特にジャベールの性格や生まれについては納得する部分が多かったです。というのも彼の性格が最後の自殺につながるのだなと改めて実感しました。初めて舞台を見たころはそれがなかなか理解できなかったので…他にもプティ・ジェルヴェーの事件や、司教に助けられた時のヴァルジャンの感情の変化、裁判所へ行くまでの葛藤など、細かな感情の表現に引き込まれて中盤一気に読んでしまいました。
    ただ、第2部に入ってから100ページ弱続く戦いの詳細は私はついつい惰性に…あまり世界史(特に近代は…)に詳しくないので、世界の動きがなかなかつかめず、また軍人の方のお名前も良く分からなかったので(きっとフランスでは有名な方だとは思うのですが…)、この部分は少年少女文庫のようにポンメルシー氏とテナルディエが出会うところだけで良いのになぁと思ってしまいました。それもまぁ舞台の話の流れに慣れているせいなのかもしれませんが。2巻も勢いよく読めたら良いなぁ

  • とりあえず2011年の読破目標小説に決定。
    仏文出身でありながら、「暗そう」「めんどくさそう」「大衆文学的」と敬遠しまくっていた打者とようやく対峙、
    読み終わったら やっぱり名作だなと思いました。
    大衆小説だし とか馬鹿にしてすみませんでした。

  • 美術館でユーゴーの絵や彫刻を見て、多才さを初めて知って読み始めました。

  • 昨年の夏からのろのろと進めていた再読がやっと終了。フランス革命後のナポレオン期から王政復古、そして七月革命を経た1830年代の学生蜂起まで、ジャン・バルジャンの生き様とユゴーの言葉を通して描かれる「ミゼラブル」な人々の物語。壮大で、かつ綿密で、ドラマとしてだけでなく当時の市民社会の記録としても深い内容を持ったこの作品は、まさしく読み応えのある名作であり、読む度に新鮮な刺激と感動を受けます。ただ単に、「みじめな人々」の象徴たるジャン・バルジャンという男の魂が練成されていくだけの物語ではなく、近代社会や政治についての考察、青春や美や愛の美しさ尊さに寄せる詩情、読者へ語りかける口調でユゴーが丁寧に綴る言葉一つ一つが、数度の再読を経てなお、新しく響いてくる、そんな名作。全四巻。

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