三人の乙女たち (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003255735

作品紹介・あらすじ

信心ぶかくて純潔なクララ・デレブーズ。情熱的でまっすぐなアルマイード・デートルモン。愛らしくて傷つきやすいポム・ダニス。三者三様に美しく清らかな乙女たち。「処女のゆらめく美しさをわたしほどに感じとった人が今までにいたとは思えない」とジャムは言った。自然と愛の詩人が描く、散文詩のように美しい3つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • フランスの詩人 Francis Jammesが1899年、1901年、1904年に発表した短編小説、いわゆる"少女もの"をまとめたものです。最初は詩集だと思っていたのですが、散文的な感じでした。どのエピソードも純真無垢、あるいは無知であるがゆえの悲劇、内容的には目新しい所は少ないですが、ジャム描くヨーロッパの田舎の自然と3人の脆くすぐに壊れてしまう可憐な乙女には、不純物がなく、キラキラと輝いています。

  • 「クララ・テレブーズ」
    クララ・テレブーズは名家の娘で、みんなに可愛がられ割とわがままに育っている。ある時今は亡きジョシュアン大叔父様の手紙を盗み読んでしまう。手紙によると叔父様は仕事で赴任した外国の街で知り合った女性と婚約していたが、彼女が結婚前に妊娠してしまう。叔父は実家の近くに彼女の住む家を見つけ、そこに住まわせる。しかし彼女は慣れない土地での生活、一人で出産する不安から自殺してしまう。

    この手紙を読んでクララはショックを受ける。しかし友達の兄と親しくなるとときめきがショックに勝って来たのだが…
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    無垢というか無知な女の子の話。現代人からすると17歳にもなってそんな事も知らないの?!と驚く。これは無知故の悲劇。

    「アルマイード・デートルモン」
    アルマイード・デートルモンは、クララ・テレブーズの学校の先輩で、詩の才能があってクララから憧れられていた。早くに両親を亡くし、学校を出た後は陰気な叔父と事務的な使用人達と暮らしていた。

    聡明で美人だったが、気難しい叔父の所には誰も近づかず出会いがない。年下の娘達が次々と結婚していく中、焦燥感にさいなまれる。自由に恋愛出来る羊飼いの若者や娘達を羨ましく思う。

    年下の羊飼いと仲良くなり、密かに恋を育むようになると彼女の焦りは幸せへと変わる。しかし、山の事故で彼は亡くなってしまう。その上彼女は妊娠している事がわかる。
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    個人的には3人の中で一番好感を持てるヒロイン。ハッピーエンドとは言えないが、終わり方も一番いい。

    「ポム・ダニス」
    ポム・ダニスのポムは林檎を意味するあだ名。そばかすのある紅いほっぺたからそう呼ばれた。生まれつき脚が悪く杖をついて歩いている。

    ポムは友人の兄のジョアネスに思いを寄せているが、親友のリュスが彼を好きだと告げると自分は好きではないと嘘をついてしまう。しかし彼のほうはリュスよりもポムが好きな事が自分でも何となくわかる。

    ある日ジョアネスから思いを告げられ結婚を申し込まれると断ってしまう。ポムは脚の事を気にしていて自分は彼にふさわしくないと思っている。
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    私はこの手の話が嫌い。彼が親友を好きならば身を引くべきでしょうが、明らかに自分のほうを好きなのをわかっているのに…彼の気持ちにも応えていない。体が不自由だって幸せになる権利はあるのに…

    自己犠牲みたいな事を美しいと評価する人がいるのも知ってるの。でも私は心の狭い人間だからか、こういうの読むとイラッとしてしまう。
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    あらすじだけ辿ると少女漫画のようですが、流石に詩人だけあって表現がとてもきれいです。

  • 浮世の芥にまみれて暮らしているので、たまには清浄なものに触れようと思い読みました。
    タイトル通り、3人の清らかな少女が美しい田園地帯に暮らす物語で、読後にはどれほど心清らかになってしまうんだろうかと期待に胸膨らませて読み進めました。
    が、作者ジャムおじさんの好みが炸裂した、ある意味濃いい物語の3連発で、第一話のクララの話で、ぬぉーマジか?となり、アルマイードの話では清らかな少女?いや、おフランスだからこれでいいのか?そうなのか?と自問自答し、ラスト、林檎ちゃんの話の王道の不幸展開ではむしろ安堵しました。
    心洗われたというよりは、まあ面白かったという感じですが、ジャムおじさんは詩人なので文章や表現は簡潔でありながら抒情的で本当に綺麗でした。特に草花や季節の眩いばかりの描写は一枚の絵画のようで素晴らしいです。それとあと少女も。
    巻末の年表を見たらジイドやコクトーと交流があったりと意外と最近の人やんと知ったのは勉強でした。

  • クララ・デブレーズ、アルマイード・デートルマン、ポム・ダニスを主人公とした三部作。
    どのオナゴも純粋過ぎて思い込みが激しい。とはいえ病的な激しさではなく、清らかな美しい心を持っている。
    またフランシス・ジャムは詩人とあって、表現がとてもきれい。最初のクララは詩の要素が強かったが、最後のポムは完全に散文となっており小説としてのおもしろさもあった。
    とても満足のいく文章ともども内容でした。

  • ピレネーの美しい自然に抱かれた、悲劇的なまでに純真な少女たちの魂。
    それぞれ異なる境遇の少女を主人公にした3つの短編です。ジャムの昇華された少女への愛と優しい眼差しが素敵です。現代の方には、クララ・デレブーズより、次のアルマイード・デートルモンの方が解りやすいかも知れません。もし、読み難さを感じられたら詩を読み飛ばしてアルマイード→クララ→ポムの順でチャレンジするのもアリかとwwそれから、ページ通りに読み直しても遅くはありませんww
    ポエティックな少女の世界を嗜む方には、是非vv

  • 三人の乙女たちが、どこまでも甘美に細やかに、優しい筆づかいで描かれています。

    個人的には、2話目の「アルマイード・デートルモン」、3話目の「ポム・ダニス」、1話目の「クララ・デレブーズ」の順に好きだなと思いました。

    決してハッピーエンドとは言えない終わり方も多いですが、そこに暗さは無く、作者フランシス・ジャムが彼女たちを心から愛し、優しい眼差しを持っていたからこその…優しく清らかで「こんな世界観もあるのだなぁ…」としみじみと感じさせる小説でした。

  • 清らかな三人の乙女たちの三編の物語。透明で残酷。

  • 花の薫りが仄かに漂う吐息で紡がれた、儚くも悲しい三篇の物語。草花や動物に温かな眼を注ぐ詩人ジャムの綴れ織りは、全編が散文詩のようで花々が美しく咲く繊細な世界だ。描かれる三人の清らかな少女達に訪れる悲しみは、愛を求める乙女心や優しさ故であったと思う。少女達を取り巻く大人も様々だが、ジャムの分身のようなダスタン侯爵の慈愛溢れる庇護には心洗われる。悲しくも生命への讃歌に溢れている。

  • 草木や花、植物の名前がふんだんに登場する3篇の乙女たちの物語です。読み終えて思うのはやはり男性は女の人よりもうんと繊細でロマンチストなのだな。という事です。クララ・デレブーズ、アルマイード・デートルモン、ポム・ダニス、登場する3人の乙女が純潔すぎて、これはむしろ男性にしか描けないでしょう。無知であるがゆえの無垢さなどに、処女信仰というか汚れた欲望のない少女愛を感じます。女性が書くとどうしてもドロッとしたものがちらついてしまう世界ですが、そういうのがない綺麗なお話です。間に挟まれているイラストも素敵。

  • 思ったよりも悲しい物語だった。純粋で無垢な三人の乙女たち。それ故に彼女たちは悲しい運命を辿る。生きるための狡猾さや裏切りの心を持たないのだ。風景の描写も美しい。

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