- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003279212
作品紹介・あらすじ
夢と現実のあわいに浮び上る「迷宮」としての世界を描いて、二十世紀文学の最先端に位置するボルヘス(一八九九‐一九八六)。本書は、東西古今の伝説、神話、哲学を題材として精緻に織りなされた彼の処女短篇集。「バベルの図書館」「円環の廃墟」などの代表作を含む。
感想・レビュー・書評
-
ボルヘスはアルゼンチンの詩人・作家で、文字通り万巻の書を読み込むところから、独自のスタイルの文学を生み出した人で、『伝奇集』(元のタイトルはFicciones)は彼の代表作の一つです。彼のスタイルをよく表す「チェス」という詩では、「プレイヤーがチェスの駒を動かすが、そのプレイヤーは神に駒のように操られていて、その神はさらに上の神に操られていて...」という、不思議な世界観が繰り広げられています(なおこちらは『伝奇集』ではなく、『創造者』(こちらも岩波文庫刊)という別の本に収録されていて、翻訳では「将棋」となっています)。ラテンアメリカの作家はボルヘスとガルシア=マルケス以外にも素晴らしい作家さんが沢山いて、コルタサルやバルガス・ジョサ(リョサ)、フエンテスらの作品がお勧めです。
(選定年度:2024~)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトルから受けるイメージとはずいぶんと違った作品群。小説あり、メタフィクションあり、哲学的思弁でのエッセイありと、バラエティに富んだ構成。カトリックの知識、それも聖書解釈の知識がないとなかなかついていけない作品も多い。そして、どんでん返しがない展開で結末が曖昧にされて、読者がこの後どう読んでいくのかと思考力と想像力にゆだねる作品なんかはなかなか楽しめる。
-
20世紀アルゼンチンのスペイン語作家、ホルヘ・ルイス・ボルヘスによる幻想的な短編をまとめた自選短編集。収録された作品はいずれも小説形式そのものを問うようなメタフィクショナルで読者を惑わすテクストばかり。特に「バベルの図書館」では、相同的な六角形の部屋の無限集合からなる図書館=宇宙を舞台とした思考実験という、幼少期の夢想を誘うような無限への連想が引き出される作品だった。
-
memo
ボルヘス
→あえて理知的な振る舞いをする感じや、文章の外(我々)に対してパフォーマンス的に書いている感じが、ひねくれてて良いが、そういう気分じゃないときは嫌い
→スノッブ, cero -
http://booklog.jp/item/1/4766425626
単行本は枕頭の書としていつでもパラパラ開いていたが、岩波文庫版は持ってなかった。上記で訳文が結構変わってるそうなので入手。正直、違いは並べないとわからない。 -
エーコ『薔薇の名前』を読んだ際に、本作の登場人物のモデル(盲目の老人ホルヘ)や、迷宮図書館の元ネタである、とあったので手に取る。
アルゼンチンの作家の本を読むのは、コルタサルの『動物寓話集』以来。
「バベルの図書館」はとんでもない発想。全ての書物は既に書かれ宇宙に所蔵されたものであるのだ。
存在しない本について語る数編は、「つまりどういうことだってばよ?」となる感覚が楽しい。
ミステリーのような読ませ方をする「八岐の園」「死とコンパス」。特に後者はそのまんま、『薔薇の名前』の血肉になったのではないか。 -
・どの短編も10ページちょっとの長さしかないのに、途方もなく奥深くて呆然としてしまうな。
・奇想天外な発想やら、メタい仕掛けやら、エンタメとしての読書のおもしろさがたくさん詰まってる。物語を読み解くのって楽し〜。
・それにしても難解。短編をひとつ読み終えるごとに再読して、ようやく物語の全体像がぼんやりと理解できた(気がする)。
・お気に入りは「トレーン」、「『ドン・キホーテ』」、「バビロニアのくじ」、「バベルの図書館」、「南部」。 -
左脳と右脳を最大活用しながら読む、新しいタイプの作家。脳がフルスロットルされる感覚が気持ちいいのと、分からないものは分からない。
-
《目次》
◇八岐の園
・ プロローグ
・ トーレン、ウクバール、オルビス・テルティウス
・ アル・ムターシムを求めて
・ 『ドン・キホーテ』の著者、ピエール・メナール
・ 円環の廃墟
・ バビロニアのくじ
・ ハーバート・クエインの作品の検討
・ バベルの図書館
・ 八岐の園
◇工匠集
・ プロローグ
・ 記憶の人、フネス
・ 刀の形
・ 裏切り者と英雄のテーマ
・ 死とコンパス
・ 隠れた奇跡
・ ユダについての三つの解釈
・ 結末
・ フェニックス宗
・ 南部 -
難解だった。