- Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003343715
作品紹介・あらすじ
もっとも内気といわれる歴史の女神クリオにささげた随想集。現代社会における自由な言論の問題を論じた「説得か暴力か」など7篇を含む本書から、世界史家にして日本研究者ノーマン(1909‐1957)の、すぐれた教養人像が浮かびあがってくる。巻末に、マッカーシズムの犠牲となった著者への追悼文「ノーマンを悼む」(丸山真男)を収録。
感想・レビュー・書評
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岩波文庫
E.H.Norman
「クリオの顔」
歴史家 EHノーマン
著者の歴史観を示したエッセイや講演のほか「ええじゃないか」についての論考、丸山真男 の追悼文 など
著者は、歴史の価値を「人間性を深め、文明を進歩させる」ことに 見出し、歴史の中心問題を「変化の発見と説明」と捉えている
戦争や暴力に対して、説得や理性で対抗すべしとする考えを持ち、GHQの経歴を持っていても、オリエンタリズム的な西洋目線は感じない。グローバリズムの先駆けという感じ
「事実をやたら並べても、歴史は出来上がらない。歴史とは〜顕著な特色を選び出して、排列し強調すること」という言葉は、フィクションとの境目の問題もあるが、歴史の面白さをうまく表現していると思う
*クリオの苑に立って
歴史の中心問題は、変化の性格を発見し説明することである
歴史は全ての糸が〜結びついている継ぎ目のない織物に似ている
*説得か暴力か
世界史において明らかなことは〜自由は確実なものではないということ
自由こそ自主政治の本質であり活力である
自主政治社会は、人民が政府を主人でなく代理人とみなすこと〜政府が定めた法律は自主政治社会の成員に対して道徳的拘束力を持つ
自主政治社会にとって、脱税者は公共財産の破壊者であり非国民
表現の自由は 自主政治社会の本塁
世界が退歩する宿命にないのなら〜暴力は説得と理性に道を譲らなければならない〜説得せよ、さもなくば破壊あるのみ
*クリオの顔
歴史の女神クリオは〜内気であって、最もたゆまない理解力のある献身者に対してでなければ、顔を見せようとしない
歴史の大きな動きそのものの一部として、微妙に変化し変質するものを見ることを学んだ学徒に、彼女は顔を現すだろう
*歴史の効用と楽しみ
歴史は過去の人々の行動を系統的に研究する学問である
事実に関する知識をやたら並べても歴史は出来上がらない。歴史とは、関連した事実を選び出して、その相互関係を評価すること
歴史家の仕事は写真屋の仕事より画家の仕事に似ている。歴史家は与えられた歴史の問題のなかから顕著な特色を選び出して、これを排列し強調しなければならない
歴史で大切なのは全体の輪郭と肝要な細部である
歴史は、どんな教訓にもまして、われわれを寛容に、人間的に、おそらく賢明にする
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世界史研究者にして日本学者、外交官の顔も持つ碩学の歴史論考・エッセイ集。巻末丸山真男の追悼文では著者を自死に追い詰めたレッドパージに対する怒りが印象に残る。
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巻末の丸山真男による「E.ハーバート・ノーマンを悼む」の文章が、著者の人となりを余すところなく伝えていて心を打つ。個人的には、「ジョン・オーブリ」と「ええじゃないか考」がたんへんにおもしろかった。
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世界史読書案内でその存在を知る
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ノーマンの7篇の随筆に加え、丸山眞男の追悼文が収められている。エキサイティングというわけでは無いが、じんわりとしみる随筆集だ。
歴史学者であり外交官であったエドガートン・ハーバート・ノーマンは1909年カナダに生まれ、1957年カイロで自殺している。その人生は、残された随筆よりもエキサイティングなものを伝えてくれる。 -
14夜
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エドガートン・ハーバート・ノーマンは、今から53年前の1957年4月4日に、47歳で非業の死を遂げた、カナダの外交官で日本史研究の歴史家。彼こそ、まさに歴史に弄ばれた人物といっても過言ではないかもしれません。在日カナダ人宣教師の子として誕生して
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内容(「BOOK」データベースより)
もっとも内気といわれる歴史の女神クリオにささげた随想集。現代社会における自由な言論の問題を論じた「説得か暴力か」など7篇を含む本書から、世界史家にして日本研究者ノーマン(1909‐1957)の、すぐれた教養人像が浮かびあがってくる。巻末に、マッカーシズムの犠牲となった著者への追悼文「ノーマンを悼む」(丸山真男)を収録。
目次
クリオの苑に立って―序文にかえて
説得か暴力か―現代社会における自由な言論の問題
クリオの顔
歴史の効用と楽しみ
イギリス封建制に関する若干の問題
ジョン・オーブリ―近代伝記文学の先駆者
「ええじゃないか」考―封建日本とヨーロッパの舞踏病
E・ハーバート・ノーマンを悼む―丸山真男
解説―大窪愿二