永遠平和のために (岩波文庫 青 625-9)

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  • Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003362594

感想・レビュー・書評

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  • へーゲルやエンゲルスが、カントを否定していましたが、そこまでひどい内容だとは思いませんでした。
    むしろヘーゲルとカントは補完関係にあるような気もしました。
    「具体的な示唆」を与えたのがカントで、「抽象的な理論」を与えたのがヘーゲルと云った感じでしょうか。

    カントは政府が存在することで、人間の利己的な心に均衡をもたらす。のようなことを云ってました。これは理解ができます。
    ただ、国際政治の場では、その国家の代表になる人物は、利己的な心を持ち合わせているのでしょうから、「国際政治の場では、道徳的な心を持たねばならない」とするカントの言い方は、少し無理があると思いました。

    また「人間の理性にそぐう体制は共和制。なぜならば、国民の理性の意志を代表する国家であれば、戦争の負担をする直接背負う国民は、そのような大博打にはでない。」とするカントですが、ワイマール共和制からナチズムへ転化した事実を、どう説明するのでしょうか。国民は容易にイデオロギーに感化されてしまう存在なのかもしれません。
    ただ逆に言えばカントは、「国民は馬鹿じゃダメだ。(理性を獲得するために)学べ。」と示唆しているのかもしれません。
    民主主義ですからね。

    またカントは、商業を奨励しました。「平和でなければ商売はできない。」というのがカントの言い分でしたが、彼は「死の商人」や「帝国主義段階」を予見できなかったのでしょうか。そこも理性があれば克服できると考えていたのでしょうか。
    一見当たっているように見えて、よく考えると「?」と思えるところが少なくありませんでした。

    但し、「政治的な道徳家」は存在しない、や、「哲学者に耳をかたむけるべきだ。しかし哲学者が王になってはならない。」といっているところは、言い得て妙であると感じました。

    「自然が人間を平和に仕向ける」というのは、どうなんだろうとも・・・。

  • 何度も読み、何度も内容を確認するべき本の一つ。ある意味一つの示唆を与えてくれる本だと思う。

  • 世界平和の実現は可能なのか。可能ならばそれはどのように達成されるのか。この問いに哲学者カントが出した一つの答えが本書です。カントの哲学は難しいという思いがあって、私も手をつけてはいなかったので、本書は私にとっては初めて読むカントの著作でしたが、意外と分かりやすい論理構成だったように思いました。
    「永遠平和」実現のためにカントが設定したのは予備条項4項目と確定条項3項目の計7項目。とくに有名なのは予備条項第3の「常備軍の段階的廃止」と確定条項第1の「あらゆる国家において共和的体制を担保すること」でしょうか。しかし、なかには予備条項第4のような面白い条件も付与されています。これには「戦争に関わる国債発行の禁止」が記されていて、殲滅戦を回避するための現実的な方途として今でも通用しそうな気がします。そして確定条項第2の「国際的な連合体制の樹立」にいたっては、カントは実は予言者だったのではないかという邪推までしたくなるほどの説得性を持っているようです。
    これらの条項を考えたカントの中にあったのは、「自然状態」にある人間はそのまま放っておくと殲滅戦に突入してしまうという人間観だったようです。本書を読んで私は、こうしたカントの思想にホッブズの社会契約論ととても近いものを感じました。永遠平和の実現のためには、人間とその属する国家すべてが「法的状態」とならなければならないというカントの主張は、まさに「リヴァイアサン」の目的そのもののように思えます。さらにカントは、倫理学から導き出したこのような工程表が政治家に受け入れられる可能性についても論じています。実際に、本書をヨーロッパの歴代政治家が真剣に読んでいれば、20世紀の世界大戦も回避できたのでは、と思うと、人間にとって「戦わない」ことがいかに難しいことであるかと痛感されられるようです。
    驚かされるのは、本書の書かれたのが18世紀末であるということでしょうか。まさか、フランス革命の渦中にあったヨーロッパでこのような先見的な主張がなされていたとは。それどころか、本書の掲げる7つの条項は、そのまま現在にも適用できるような気がしてきます。将来、この世界に永遠平和の訪れる姿が、鬼籍に入って時間という束縛から解かれたカントに見えていることを、願うばかりです。宇都宮芳明訳。

    (2009年3月入手・11月読了)

  • 面白くは無いよ。
    ひとつの、永遠平和を目標に据えた際のなすべき事の、
    極めて一般的な一つの考え方として。

  • カントという哲人の偉大さを感じさせる一冊。永遠平和は義務であり、それは人間の理性によって保障されている。理性は道徳として生活で現れ、政治として国の制度になっていく。よって永遠平和は政治によっても保障されなければならない。
    都合のいいときに道徳を持ち出す政治家には平和は作り出すことは出来ない。錯覚してはいけないのは、他との間に軋轢がない状態が平和なのではなく、お互いが積極的に理性の導き出す方向に進んでいきながら平和が創出されていく。理想論であっても私達が忘れてはいけない定義だと思う。国家とは個人に極めて似ている性質があると感じた。


    09/1/18

  • 短くて読みやすい。おすすめ!
    最近新訳出たのでそちらもぜひ。

  • 未読

  • 1989,11刷

  • 政治学安藤先生のすすめ

  • 俺が発表担当だった学志会第一回課題図書。
    基本的には新訳である光文社古典新訳文庫のほうが優れているように思われるが、
    予備条項最後の原注である、純粋理性の許容法則があり得るかについての部分は少なくともこっちの訳の方がわかりやすかった。

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I.カントの作品

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