- Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003362594
作品紹介・あらすじ
世界の恒久的平和はいかにしてもたらされるべきか。カント(1724‐1804)は、常備軍の全廃、諸国家の民主化、国際連合の創設などの具体的提起を行ない、さらに人類の最高善=永遠平和の実現が決して空論にとどまらぬ根拠を明らかにして、人間ひとりひとりに平和への努力を厳粛に義務づける。あらためて熟読されるべき平和論の古典。
感想・レビュー・書評
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■書名
書名:永遠平和のために
著者:カント
■感想
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カントの晩年の代表作である「永遠平和のために」、やっと読むことができました。本書は訳注や解説を含めても150ページ程度なのであっさり読めるかと期待していましたが甘かったです。一行一行噛み砕きながら読み進めたものの、カント特有の婉曲的な表現なども多数散りばめられていて苦戦しました。そして本論よりも付録を読み解くことにさらに苦戦し、これは全体の3割くらいしか理解できていないのでは?と怖れを抱いていましたが、最後の訳者による解説によって理解度が一気に8割くらいに上がった気がします。おかげさまで腹落ちしてきた感じがするのですが、少し時間を空けてまた最初から一読しようと思っています。単なる理想像としての永遠平和ではなく、リアリズムの視点からも永遠平和がなしうることを説いた本として、とても興味深く読みました。
以下、備忘録としてカントの述べている永遠平和のための条項です。
<国家間の永遠平和のための予備条項>
第1条項:将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない。
第2条項:独立しているいかなる国家(小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できることがあってはならない。
第3条項:常備軍は、時とともに全廃されなければならない。
第4条項:国家の対外紛争にかんしては、いかなる国債も発行されてはならない。
第5条項:いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力を持って干渉してはならない。
第6条項:いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。
<国家間の永遠平和のための確定条項>
第1確定条項:各国家における市民的体制は、共和的でなければならない。
第2確定条項:国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。
第3確定条項:世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない。 -
・カントの永遠平和論。国家間の連合による世界平和構想。
・カントは、社交的だったという人物評があるが、カントの平和論もさもありなんという感を覚えた。
・自分は、人と仲良くするのが苦手なので、カントの議論のようにうまくいくのかと思った。 -
あまり意味が理解できなかったが、平和の当たり前、のことを提唱し、示したという意味で意義深いのだろう。ある事象でのパワーバランスに触れていたり、こうしたらこうなる、という当たり前を書いている。解説書とか見ながら中身が理解できるようになりたいな、、、
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長い間、文章を正しく理解する、ということをなおざりにしてきた。
小説の文章は、その風景が、会話が、心情がすぐに自分の中で分かる文章だが、
こういう国語の現代文のような文章は、論理的に述べられているので、読むだけでは分からない。
読んで、もう一度読み返して、そこに述べられている論理が自分の中で分かるまで立ち止まって、ん?ん?とやらなければ、それを踏まえた次の文には進めない。
読めば分かる文章ではない。
その論理の把握作業を、逐一やりながら、頭の中にその著者の述べている世界を組み立てながら、組み立てたものを忘れずに、どんどん複雑になっても積み重なっても全体を作っていかなければ、この本を正確に読むことができない。
まずカントの書き記したことを正確に受け取りたい。
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カントの政治哲学(?)、国際法のありかた、政治と道徳(倫理)のあり方などが書かれている。
難しいけど、完全にわからないわけではない。
現在にも十分通じる部分が多くあるように感じた。 -
イマヌエルカント 永遠平和のために
永遠平和のための9条項(予備条項6と確定条項3)を論じた本。一つの世界共和国を作るというより、それぞれの国家の独立を維持しながら、平和連合体制を作るイメージ
ソンタグの「世界平和を信じる人間などいない」という諦めの論調より、カントの「世界平和のために9条項に着手せよ」というメッセージの方が 読む価値がある。
永遠平和は人間の利己的傾向から自然に導かれるとする第一補説を入れたあたりが、永遠平和が空想でなく実現可能であることを証明したいカントの哲学者としてのプライドを感じる
9条項の中で最もハードルが高そうなのは「常備軍の全廃〜自衛軍は認めるが、段階的に常備軍はなくせ」という条項。カントは「平和とは、一切の敵意が終わることであり、軍事力による均衡は 平和につながらない」と考えていることがわかる
6つの予備条項
1.平和条約は将来戦争の種を残さない
2.国家は 他の国家に取得されない
3.常備軍の全廃
4.戦時国債は発行しない
5.暴力により他の国家に干渉しない
6.戦争の最中においても卑劣な行為はしない
3つの確定条項
1.共和的な市民体制
2.諸国家の連合制度に基礎を置いた国際法
3.友好をもたらす世界市民法〜外国人が入っても敵意を持たれない
共和的体制
*自由と平等の権利が確保された国民が、共同の立法に従っている
*代表制を採用し、国家の立法権と執行権が分離している
*共和制の下では戦争をするには国民の賛同が必要〜戦争という割に合わない賭け事を国民は求めない
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目次でみる、章立てや「平和」を維持するための要件、端々にある一文など、響くことばは複数ありますし、そこを拾いながら読むだけでも、ロシアがウクライナへの侵攻を続ける今、考えさせられることが多いように感じます。
第1章の第5条項「いなかる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない」などは、まさに今日の事件が「誤った選択」によるものであることを明快に示しているように思います。
とはいえ、一つひとつの文章が難解で、大変に読みづらいという印象を受けました。自分の読解力がないから、といえばそれまでなのですが、「で、結局何が言いたいの?」となるところが多く、最終的には「解説」のぶぶんをざっと読み、なんとなくわかったようなわからないような、というところです。
立憲君主制の国家が多かった十八世紀末に書かれた論文だということも理由なのでしょうが、「共和制」という体制がいかに理想的か、という部分についても多くのページが割かれており、単純に「どのようにして「平和」を実現し、継続させるか」という具体的な姿が(特に現代の世界において)イメージしづらい、というのも個人的には読みづらさを感じた理由だと思います。