読書のとびら (岩波文庫)

制作 : 岩波文庫編集部 
  • 岩波書店
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本棚登録 : 109
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003500255

作品紹介・あらすじ

読書の効能は、「事後的にしかわからない」(鹿島茂)。面白かったりつまらなかったり、役に立ったり立たなかったり、人生に決定的だったり…。だから、読書のとびらは人それぞれ。開け閉め自由でいつも誘惑的です。読書とのかかわりを綴る三二人によるエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 学者さんや作家さんたち32名の読書エッセイ。
    ハードな読書の合間に読んだ「軽読書」である。
    目次に贔屓の書き手さんのお名前があり興味を持った。
    前書き・後書きなし。巻末に執筆者の紹介はあるが、登場する本の索引はない。
    岩波文庫編集部さん、つまり各自で探して読めってこと?
    よろしい、受けて立ちますとツッコみながら読んでみた。

    あいうえお順の掲載で、最初は赤川次郎さんから。
    胸がすうっとしてくる清々しい言葉が並ぶ。

    「読書というのは、通り過ぎてしまうものではなく、一旦自分の内へ取り込めば、眠り続けていても消えることなく、何かのきっかけがあれば時間を超えてよみがえってくるものだ」

    「私はエンタテイメントの書き手にすぎない。ただ、遥かな高みに素晴らしい果実があることを知っている。自分がそこに到達する日は永遠にやって来ないにしても、一歩でもそこに近づきたいという気持ちだけは持ち続けている」

    これが冒頭の作品よ、皆さん。続きも読みたくなるでしょ?
    さすがの書き手さんたちで、テーマが明快。似通ったものがひとつもない。
    特に心に残ったのは亀山郁夫さんの「人生が本のようにあるうちに」の一篇。
    本のようにある人生にひたすら憧れながら、なぜか手当たり次第に本を読むことが出来ないという。思い当たることはひとつ。
    「本を読むことより、生きている実感の方がはるかに心地よかった」からである。

    思わず膝を打つこの表現。
    「本と私」の中にもこういう言い方をした人がいた。
    青空のもとで美しい海を見ていたら、本を読むことなどすべて忘れたと。
    時間をつぶす必要もなく静かに穏やかに、ここにいることに心身ともに満足している。
    私にもこういう時間がよくある。
    わずかな幸せの時間がいつも自分を支える。
    読書の喜びとは別種の愉しさだが、生きる喜びという意味では通底している。

    鹿島茂さんの「理由は聞くな、本を読め」も爽快だ。
    「読書の効能は事後的である」とし、「事後性を自覚したひとによって書かれているのだから、本来は事後的にしか知りえないことを事前に知ることが出来る」というもの。
    これがタイトルの意味に繋がる。ちょっと強引で笑える。

    家族が全く読書をしなかったのに、本好きで作家になった川上未映子さん。
    アラマタさんは「岩波文庫で学んだ博物学」のお話。
    速読に凝った久間十義さんは、岩波文庫全制覇をめざすが万葉集で挫折。
    日高敏隆さんの「生物から見た世界」もたいそう興味深い。
    ロバート・キャンベルさんは「現代小説は粒が小さくてスカスカ」と手厳しい。
    前田英樹さんはアランの『プロポ』から、読者には歴史家(historien)と実際家(pragmatiste)があるとしたこと。私は「幸福な実際家」でありたい。

    読書の効能を説いたり、本をお勧めしたり、あるいは既視感のある言葉が並ぶのかと思ったがまるで違った。
    2011年に出た本で、読書好きな方におすすめしたい一冊。
    自分にとっての読書とはなにか、心に響く言葉に出会えるかと。
    本書がきっかけで「受けて立ちたい本」を見つけるかもしれない。

    • 夜型さん
      Don子さんこんばんは。
      ではさっそく……
      エッセイではなく書誌ですが、岩波つながりで、「岩波文庫解説総目録」と「岩波新書解説総目録」をぜひ...
      Don子さんこんばんは。
      ではさっそく……
      エッセイではなく書誌ですが、岩波つながりで、「岩波文庫解説総目録」と「岩波新書解説総目録」をぜひ!
      2021/02/16
    • nejidonさん
      夜型さん♪
      書誌のお勧めとは、さすがの渋さです!
      ありがとうございます。
      探してみますね!!
      花粉症の大きなくしゃみをしたDon子で...
      夜型さん♪
      書誌のお勧めとは、さすがの渋さです!
      ありがとうございます。
      探してみますね!!
      花粉症の大きなくしゃみをしたDon子でした。
      2021/02/17
  • 読書は人生の予防注射になる。挫折を知らない人は脆い。どんな悲しみも必ず乗り越えられる日が来る、と知っているのと知らないのとでは、大きな違いがある。必要なのは「強さ」ではない。時として打ち負かされ、絶望しても、またそこから立ち直る「しなやかさ」である。
    「世間が」ではなく、「あなたは」どう考えているのか、「私は」どう生きるのか
    思ったときに行動に移さない限り、だいたいのことは、後々に叶いはしない。
    目を見張るようなバカ話
    目に映った姿や、世俗の価値観で判断するのは無謀であること

  • 林望さんの書いた物をなんでもいいから読んでみたくて手に取ってみた。
    どうやら岩波文庫のフリーペーパー的な、本屋に行くとたまに置いてある小冊子のために書かれたエッセイ集らしい。

    林望さんは、旅行の時に持って行く本は文庫本に限る、文庫本と言っても、難しい古典とかではなく、夏目漱石の夢十夜だとか、正岡子規に否定されまくった古今集のような、読むのにあまり集中する必要のない短いものがいいと言っている。夢十夜と親しくなったエピソードは面白かった。長かろうと短かろうと、古典は何度も読むことで意味を見いだすことができるんだ。

    別の人のエッセイだけど、夏目漱石のこころの後に大江健三郎の水死を読んですごく良かったと言っていた人がいた。いいな。試してみたい。

  • 小説家や文学者による読書にまつわるエッセイ集。エッセイの中に出てくる小説に「これ読んでみたい!」と思ったり、読書論に「こんな読み方もあるのかあ」と思ったり、なかなか楽しめた。やっぱり、読書っていいなあと思った次第です。

  • 鹿島茂など。第四弾。

  • 著名人の読書体験にまつわるエッセイ集。
    多くの人が価値ある古典を限りある人生では読み尽くせないことを嘆いている。
    しかし多読に時を費やし、晩年になって書物の内容が思い浮かばず、多読を悔い熟読すべだったと後悔する人もいる。
    それらについてバスクの格言が紹介されていた。
    「学ばなければ忘れない」
    読み学んだからそれらを忘れるのであって、学ばなければ忘れることすらできない。
    私も昔読んだ本の記憶が薄れている。悲しくも思うが、素晴らしい本を読み触れたという記憶だけでも良い思い出かもしれない。

  • 読みたい本が見つかる。

  • 荒俣宏、日高敏隆を読んだ。

    荒俣宏は、日魯漁業(現マルハニチロ)を辞めたあと文筆家をめざし、博物学を勉強し始めた。子どもの頃から生物好きで、分類学の歴史にも関心があった。東大周辺にあった古本屋で洋書を見て、失われた博物学を志すことを決めた。

    アリストテーレス「動物誌」
    プリニウス「博物誌」
    ジョン・ラバック「自然美と其驚異」
    ファーブル「昆虫記」
    ラマルク「動物哲学」
    クック「太平洋探検」
    デューラー「ネーデルラント旅日記」

  • 久しぶりに『読書のすすめ』シリーズを本にしたものが出版されたので、読み直しを含めて楽しみながらじっくりと読んだ。やはりその道で名をなした学者の文章は味わい深い。

  • 青春時代に読書をする習慣を身に着けたことが自分の人生にとって計り知れない効能をもたらしたことははっきりと認める。
    本というのは多かれ少なかれ事後性を自覚した人によって書かれている。
    乱読の喜びは偶然との出会いの喜びでもある。

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