豊かさの精神病理 (岩波新書 新赤版 125)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004301257

感想・レビュー・書評

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  • 少し寂しい気分になった。
    自分がこれまで大切だと思ってきたことについて考えさせられた。

  • バブル時代だったんだな、というのがよくわかる。

  • 33045

  • 精神に病を抱えているのではなく人生相談のために著者のもとを訪れる人びとを、本書では〈よろず相談の患者〉と呼びます。そうした人びとの相談内容と、それに対する著者の応答を紹介しながら、人間関係をモノとの関係として語ろうとする現代人の精神のありように迫っています。

    精神科医としては当たり前のことなのかもしれませんが、豊かなモノに囲まれて暮らし、ひととひととの関係をモノとの関係に託して語る〈患者〉たちの精神の貧しさを頭ごなしに批判するのではなく、彼らの語りにどこまでも寄り添いながらともに解決をめざしていこうとする著者の姿勢に好感をいだきました。もちろん、プライバシーの観点や紙幅の制限もあるので、じっさいの診療をそのまま再現したものではないのでしょうが、〈患者〉たちが著者の問いかけに答えていくなかで、自分から問題の核心に近づいていくところに興味を惹かれます。

  • ある精神科医のもとに、様々な<モノ語り>の患者たちが訪れる。彼らは病名がつくような症状は何一つなく、至って健康だ。彼らの特徴は、モノ、時計や服、食べモノ、付き合ってきた恋人を、まるで頭の中にカタログがあるように順番に述べられることだ。彼らはモノを通して「ポリシー」「本物」「個性」を主張してくる。

    本書は、大半が<患者>と精神科医である著者との対話で成り立っている。1990年の本なので、ブランドに執着するバブルな人々がたくさん登場する。ちょっと理解し難かった。「現代の精神病理」というより「バブル期の精神病理」という歴史的資料だと思った。
    しかし、本書後半の著者の評論は、現代にも十分通づるものであり、はっとさせられた。ブランド物でアイデンティティを保つ人も随分減ったが、SNSでの「充実した人生」アピールなど、現代社会でも似たような現象は起きている。「充実度」で他人を判断し、自分にも物差しをあてがう。バブル期の話だからといって他人事ではない。
    あと、この本を書いている精神科のお医者様は、本当に機転が利いて、その都度最適な方法で患者の悩みを解決していくので、読んでてすごく感心した。ぼくもこの人に会って診察してもらいたい(笑)

    以下、引用

    「<モノ語り>の人びとは、人づき合いにおけるナマナマシイ感情、「ドロドロ」したものを洗い流し、言ってみれば人づき合いを丸ごと消毒しています。」

    「<モノ語り>の人びとが、自分の''個性''や''能力''について語る時、その''個性''や''能力''という概念は特殊な意味を帯びています。」

    『いい物をじっくり選んで買う。そこに個性が出ると思うんですよ。他人が同じ物を持っていても気にしませんよ(25歳会社員男性)』

    『いい物、本物、確かな物を持っていると、自分がしゃきんとするんです。ほら、馬子にも衣裳って言うでしょ。あれ、内面的にも言えてると思うんです(27歳一流ホテル係長女性)』

  • 経済的には豊かで恵まれ、高価な〈モノ〉に囲まれる人々も精神科を訪れる。バブルの頃のエピソードなのであろうが、時代性を差し引いてもちょっとコミカルにそしてグロテスクな感覚を覚える。あの頃から30年近く経ち、世の中の価値観は大分変わったかもしれない。でも、あの時代を謳歌した人間には、多かれ少なかれ、こうした精神病理の傷跡があるのかもしれない。

  • バブルの頃って、皆びっくりするほどお金があったんだなぁ。ここに出てくる「患者」は、多くが両親の世代。両親にこの本のことを話したくなった。

    「豊かさの精神病理 2015ver.」とかあったら絶対に面白いと思うけど…いまは果たして「豊か」なのかな。

  • ここに出てくる人たちの悩みが関係の貧困さ、踏み込めなさからきてるというのは禿同。ちゃんと踏み込めあえる関係の人とは踏み込んで生きていきたいと思う

  • 20年以上前に書かれた本だけど、現在でも通じるものがあるんじゃないかと思います。でも、バブル時代の本なので、バブリーな話がいっぱいありました。

  • 本文より・・・自分をその心身両面にわたってモノ化する《モノ語り》の人びとは、自分自身をプラグマティック(実利的)にコントロールする可能性を持っているので、“自信”に満ち、ネアカです。

     人びとが、“自信”を失うのは、その可能性を生かせない時です。人々は「自分への投資」つまり、“自己実現”や“健康維持”に欠かせないモノの購入を惜しみません、あとは実行する“意志”の問題だけです。“意思”はまだモノ化されていません。それ故、自分の“意志”に“自信”をもつことのできる人は少ないのです。・・・
    ――
     この本の主役は「《モノ語り》の人びと」です。「《モノ語り》の人びと」の中には、根深い劣等感を持つひがみ根性がとても強い人たちがいます。彼らは人の好意を素直に受け入れることができません。人に親切にされると、自分が劣っていると言われているような気さえするのです。
    この本を読んで感じたことは、私自身にも「《モノ語り》の人びと」的な部分があるということです。自分自身に自信が持てなくて、その結果として、根深い劣等感がある。それを補うために、ある特定のモノに執着し、モノを持ち、モノが持つ背景・物語りを語れるようになることで、自信を保とうとしていることです。
    流石に資金的な問題もあって、ものへの執着は治まってきましたが、その代わりに頭をもたげてきたのが知識に対する欲求です。私の本好きは、「《モノ語り》の人びと」の物語りが第二章に突入したことに対する警鐘かもしれません。
    いずれにしても、冷静に自分を見つめ、「《モノ語り》の人びと」からの脱却を目標にしたいと思います。

  • 自分という存在に、確たる個性を与えるため、人との関係性を築くため、モノを介在させる「モノ語り」な人々がいる。ある側面では合理的であるが、それは満たされることのない渇きを生む。豊かな時代での幸せとは。

  • モノ語りの方々の話から、現代社会の人々の傾向を話す話。
    著者の淡々とした?文章がエラく気に入っていたので、スラスラと読めました!
    極端な事例の筈なのに、何故か共通点がある…
    一度皆さんに読んでみて欲しい本です!

  • バブル期に書かれた著書だが、今のこの時代にも言えることだと思った。
    豊かなのは良いことだが、モノが溢れすぎて大切なことを見失わないようにしたい。

  • [ 内容 ]
    燦然と輝くモノが溢れる現代。
    軽い精神的不調を訴えて精神科を訪れる患者の中に、人間関係の葛藤を、モノとの関係に巧みに置き換えている人たちがいる。
    ブランド品にアイデンティティを求め、マネキンのような恋人に囲まれ、人の心を味わうために高価な料理を食べにいく。
    豊かな社会特有の病像を描き、それを生む日本の社会を考察する。

    [ 目次 ]
    序章 「モノ語り」の人びと
    第1章 カタログ時代のパーソナリティ
    第2章 グルメ・ブームの精神病理
    第3章 不倫ゲームの構造
    第4章 ペットの両義性
    第5章 「幸せ」に似合う家族
    第6章 豊かさの精神病理
    終章 ジャパニーズ・ドリーム

    [ POP ]


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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 豊かすぎて節約できない人や物質的なものに頼りすぎてしまう人を通して現代社会の世相を反映しようとしている。

  • 再読。

    「診察室に来た赤ずきん」を読んだあと、
    そういえば、昔、この著書の新書を
    買ったなあと思い出し、読んでみた。

    ここに出てくるのは、
    「人間関係の葛藤」を「モノとの関係」に
    巧みにに置き換えている人たち。

    今から20年前、ちょうどバブル期に
    書かれた本なので、
    時代が反映されているなあと思った。

    私には理解不能だけれど、
    確かにそういう価値観がはびこっていた
    時代だったという気がする。

    今、この著書が新書を出すとしたら
    どんな病理を描き出すのだろう。

    ちょっと興味がある。

  • (2007.10.15読了)(2007.08.25購入)
    よろず相談の相談窓口にやってくるように、精神科医を訪れる人たちが多くなったとか。よろず相談の様子から現代社会の精神病理を読み解いた本です。
    この本で主に取り上げてあるのは、「モノ語りの人びと」と著者が名づけた人たちです。人そのものについて描写し説明することは苦手なのに、持ちモノについてのなら生彩を帯びた人物描写をする人たちです。
    「モノ語り」の理解のためには、モノの知識が必要です。いわゆるブランドのことです。

    ●ステップ・アップ(40頁)
    より品質のよいモノ、より高価なモノ、より高級なモノ、より有名なモノに買い換えることを意味しますが、持ちモノが上等になると同時に持ち主も上等になるかのようなニュアンスがあります。
    ●こんなに幸せでいいのかな(62頁)
    彼女は「いい人ばっかり」に囲まれて「幸せ」なのですが、実際には、人々に心を開くことをせず、仕事、料理、音楽と限定された範囲内でしか人と付き合っていないのです。これは確かに「付き合いやすい」やり方ですし、彼女は「快適な」わけです。
    ●高価なものを贈りあうのが愛(117頁)
    「彼は冬のボーナスでミンク買ってくれたんですよ。私も彼にダイヤのタイピン贈りました。私たち、愛し合っていると思います。」
    「何十万ものプレゼントをする、受け取るというのが愛し合っているってことでしょ。」
    ●安物の犬は世間体が悪い(132頁)
    夏に箱根の別荘へ行って過ごす際に、小学生の子供が、ペットショップで見つけた犬を欲しがるので買い与えた。(血統書つきじゃなかったのでだめだといったけど、安物なので買ってあげた。)新学期になって東京に戻るとき、ブランド犬じゃないので、ご近所の手前もあり、つれて帰れないので捨ててきた。それ以来、子供がうつ病になった。
    「私どもでは、基本的に安かろう悪かろうというモノは買わない主義でございますの。まあ、人様よりは多少リッチな暮しさせてただいておりますが、粗悪な安物に手を出しては、やはり、もったいのうございますでしょ。とくに、子供たちには最上級のよいものだけを与えるのが親の務めだと・・・。先生、あの子、あんな安物の犬のせいでうつ病になったんでございますか?」
    ●個性は持ち物で表現する(214頁)
    「個性はモノが表示してくれる。カタログ雑誌はさすがにこの辺りの事情には敏感で、「確かなモノで個性に自信」といった類のキャッチ・フレーズに富んでいます。個性を表示してくれるモノを選ぶときの方針はポリシーと呼ばれます。」
    ●幸せはモノが保証(226頁)
    カタログ雑誌の「幸せの定番グッズ」という文句の通り、幸せもまたモノが保証してくれるのです。したがって、より幸せになるためには、より「いいモノ、確かなモノ、ホンモノ」が必要となります。相対的に高価なモノが必要となります。
    (2007年11月14日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    燦然と輝くモノが溢れる現代。軽い精神的不調を訴えて精神科を訪れる患者の中に、人間関係の葛藤を、モノとの関係に巧みに置き換えている人たちがいる。ブランド品にアイデンティティを求め、マネキンのような恋人に囲まれ、人の心を味わうために高価な料理を食べにいく。豊かな社会特有の病像を描き、それを生む日本の社会を考察する。

  • 2007/10 読。

  • くれたスカーフのブランドの名前で男性を呼ぶ女性。
    スカーフ以上のものを貰わない主義。それは彼女のステータス。

    この本の中に出てくる患者たちはみんなモノ語りの人と呼ばれる。

    そしていたって見た目普通の人々。

    でもモノ語りを語らせれば際限なくしゃべり続ける。
    自分のモノ語りを…。傍から聞けば面白おかしいことも本人は真剣。

    現代のモノ語りの人々の現状を精神科医が見て書いた本。

    深く考えるのもよし、ただモノ語りを楽しむのもよし。

    関連本にはやさしさの精神病理がある。

  • 哲学のレポートのために選んだ本。

    新書は、くだけた文体で書かれたものは読みやすくて面白い。

  • やはりこの著者の本は、患者の例が面白い。
    その例に対してどういう考えでどう対応したのか、というところまできちんと書かれているのが、患者側である読者の心を掴むのだろう。

  • これも高校の倫理のテストで出題されて、気になって購入した。おもしろかった。

  • モノに意味を見出し、モノはモノではなく、記号化する。
    消費社会を生きる人は、記号としてのモノを消費することで
    自分にその意味を重ねていき、表層的な自己実現を果たす。
    しかし、それは外観上、表面的な自己実現でしかない。
    人は内面と外観のギャップに苛まれ、2重の自己を抱えている。

    共同体の崩壊以降の若者の精神病理シリーズ第1弾。

  • たいがいの人は自己紹介で、
    好きなブランド「モノ」、嫌いな食べ「モノ」、何かしら「モノ」を使って話そうとする。
    「モノ」に例えると簡単に説明できるのはなんでだろうか、説明した本。



  • 読みやすかったです。

  • 思ったほど堅くない。
    割とスラスラ読める(^o^)b

  • 読みやすいです 心理学好きには堪りません

  •  
    ゼミナール?主要テクストに、参考文献として取り合えげられていて興味を持ったので。

    消費社会を精神科医の視点から見た本。
     

  • ヒトとのつき合いにモノを介在させ、ヒトをモノのように扱い、モノによって「自己表現」を計り、モノとしての自分の身体の世話をする『モノ語り』の人たちについて書かれた本。
    僕には共感できる部分が全くなく、「ただこんな人もいるんだなぁ」という感想で、あまり自分に有益な本ではありませんでした。

  • 読了

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