琉球王国 (岩波新書 新赤版 261)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302612

感想・レビュー・書評

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  • 個人的に沖縄のルーツに興味があります。

    実際に沖縄に行ったときに思ったことなのですが、中国的な遺跡もあれば、アメリカ人と思しき人間がいて、しかも現時点で日本である、いろんなものが混ざって、しかも沖縄らしさというものも確固として存在している不思議さ。自然とその歴史には以前から興味がありました。

    本書の中心は、沖縄が日本でも中国でもなく、琉球王国として独立していた時代です。それは交易のハブとして繁栄した時代です。著者は、占領や戦争という暗い影がつきまといがちな沖縄の歴史に対して、もっと広い視野で沖縄の歴史を知ってほしいといいいますが、海を舞台にアジア各地と交易する沖縄の人々の姿のほうが、沖縄らしいなんて思うのは、私の勝手な思い込みでしょうか。

  • 一五世紀初頭,琉球に統一王国が生まれた.以後四百年に及ぶ琉球王国である.博多・釜山,福州・広東,さらにルソン・アユタヤ・マラッカを結ぶ「海の道」を支配した王国の最盛期とはどのようなものであったか.気鋭の歴史家が,成立・展開・衰退の過程をたどりつつ浮かび上がらせる王国像は,まことに興味深い.

  • 古琉球時代を中心に琉球史を概説。
    琉球史を、琉球王国をどのように位置付けるかという問題は、日本史を、日本をどのように捉えるかという問題と表裏一体なのだなぁ。

  • 琉球、沖縄の歴史を概観できる良書。
    14世紀に北部、中部、南部に三つの王国ができそれぞれに明国に対して進貢(明国に従う「国」として認知を受ける)するようになった。
    その後、尚氏が15世紀半ばころ沖縄全体を統一する。しかし、1470年に金丸がクーデタを起こし「第二床氏王朝」を築く(明との関係から、クーデタではなく政権を引き継いだとするため尚の名を引き継いだ)。
    このころから、秀吉、家康の時代まで琉球王国の東アジアでの活躍と繁栄の時代が続く。明と倭国とアジアの広い範囲の国々との間を航海しながら交易によって栄えることができた。
    秀吉の時代になり朝鮮出兵への協力を求められ、家康の時代になると薩摩藩が琉球を攻める。明との関係を続けながら、徳川幕府とその名を得た薩摩によって支配が始まり弱体化してゆく。
    明治になり10年に廃藩置県により尚氏は江戸へ移住し沖縄県となった(琉球処分)。

  • 古琉球史を中心とした沖縄の歴史と、著者が古琉球王国の構造を研究した内容について。中国との冊封関係を利用して海洋文化を花開かせた時代の琉球の独自性を知ることができる。ただ、どちらかといえば本書は琉球史と古琉球王国という時代を広く喧伝し、読者の興味を喚起することが目的であろうと思われる。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    自分にとっては沖縄が日本であることは当たり前のことだが、150年前は日本とは異なる琉球王国という独立した国家だったのだということがよく分かる本だった。
    一般的には余り知られていない琉球王国の誕生や中国王朝との関係性、東アジアの各国間との交易などが書かれており、沖縄の知らなかった事を知ることができた。

  • TK2a

  • 2018年10月読了。
    東シナ海を内海とする貿易圏の南東に琉球王国があり、
    それは福州を起点に中国大陸、東南アジア、マラッカ海峡までを範囲とする広大な交易を持っていたという視点から見れば、琉球はなんと豊かな歴史を持っていたことよという話になる(83ページの地図)。
    他方で島津侵入から始まる日本との支配・被支配の関係、
    1945年の沖縄戦以降にはアメリカが支配したこと、
    歴史を単線で描かれない複数の要素があり、
    なかなか評価が定まらないのが沖縄だと思う。
    著者が歴史学者でありながらもアメリカ由来のハードロックに共感を得るあたり(184ページ)、
    ありきたりな感想だが「チャンプルー」で独特なものを感じた。

  • 明治政府による琉球処分。そして、太平洋戦争での壮絶な
    戦場。ひめゆり部隊を思い出すまでもなく、戦争に巻き
    込まれて戦場になり、多大な被害を受けた沖縄。

    加えて、戦後のアメリカ軍による統治。日本であって、
    日本ではなかった沖縄。

    だが、薩摩藩による侵攻以前、沖縄は独自の文化と習慣を
    持った王国であった。

    暗い歴史ばかりではない。実は500年の歴史を誇る琉球王国
    があったではないか。歴史学者の著者が、隆盛を誇った時代
    の琉球王国の足跡を辿ったのが本書だ。

    「父や母から聞く沖縄の歴史は、いつも苛められてきた歴史
    ばかり。どうして、沖縄の歴史はこうも暗いのですか?もっと
    おおらかに生きた歴史があるはずです。それを知りたい」

    著者が地元・沖縄の短期大学で講義をしている時の、学生の
    アンケートには、こう書かれていた。

    この問いかけをなした学生と同じように、私も時折考えて
    いた。薩摩による侵攻以前、沖縄はどんな歴史を辿って来た
    のだろう…と。

    本書は入門書として、また琉球王国の概要を掴むのには
    もってこいの1冊だった。「素晴らしい」の一言に尽きる。

    中心になっているのは豪族が群雄割拠し、薩摩による侵攻まで
    の古琉球の時代。特に面白かったのは貿易の話。

    まるで中世に栄華を誇った地中海の女王・ヴェネツィア共和国
    のようだ。中国・朝鮮のそれぞれの王朝との貿易は勿論、
    遠くはマラッカ王国までに船を出し、交易を行っていたって
    凄いわぁ。

    「海のシルクロード」の一大拠点として成り立っていたのだ
    もの。それも王国国営貿易なのだもの。

    そして、もうひとつ特筆したいのは現存している琉球王国の
    辞令書から王国の職制を読み解いていること。

    これぞ歴史学者としての仕事でしょう。僅かの手がかりから
    同じ部分、異なる部分を抽出して王国の変化を解説している。

    1993年発行だが、内容がまったく色褪せてないのがいい。
    本書の内容のような作品こそ「ザ・岩波新書」だろう。

    沖縄独立論でもなく、反沖縄論でもない。理性的に自身の
    故郷である沖縄の歴史を掘り起こした良書である。

  • 1983年刊。著者は琉球大学法文学部教授。◆沖縄の前近代を通史的に解説。詳述書とは言い難いが、沖縄戦で焼失・散逸した文書を収集し、その中(辞令書など)から琉球王国の制度を解読し、同国の独立性・自律性を詳らかにする点は新奇(4~5章)。沖縄を含む日本の一体性を所与の前提とする発想へのアンチテーゼが本書で提起される点は、本書刊行頃の沖縄の立ち位置を雄弁に語る。◆あくまで個人的な感想だが、地域史において、中央との関係は時代・場所によって濃淡があるのは当然であって、本書で書かれるほど意固地にならずとも、とは思う。
    とはいえ、「日本の外としての沖縄」という視点と、薩摩支配・沖縄県設立・米軍施政下という変遷から、沖縄の文物・美術品が沖縄より散逸してしまい、未だその回収・返還作業が手つかずで、不十分なままに推移している事実は十分認識されるべきことのように思う。

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著者プロフィール

琉球大学大学院人文社会科学研究科教授

「2010年 『東アジアの文化と琉球・沖縄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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