ドイツ人のこころ (岩波新書 新赤版 262)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004302629

感想・レビュー・書評

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  • 四半世紀前の本であるが、ドイツをテーマごとに分けて説明しているので読みやすくてわかりやすい。

  • 私はカフカの小説や彼の残した手紙が割と好きなのだけれど、あの後ろ向きなカフカの人となりとドイツ人とのイメージが中々重ならず、ドイツに住む今も彼のあの姿のルーツを捉え損ねていた。けれど本書に度々出て来るドイツ人のメランコリックで内省的な性格とそれを育んだ土壌という観点を得て少しカフカとドイツが繋がった気がした。

  • 文学に現われたドイツの国民性について論じたエッセイです。

    「ライン河とローレライ」「菩提樹とさすらい人」「われもまた南国へ、イタリア」「クリスマス―光と闇のドイツ的美学」「ドイツ文化は深い森のなかから」という5つのテーマに沿って、著者のドイツ文化に関する該博な知識を披露しつつ、「ドイツ的なるもの」に迫っています。

    もちろん著者は、こうした視点からの考察がステレオタイプ化に陥りやすいことを留意していますが、それはともかく、ドイツ人にとって、そして私たち日本人にとって、「ドイツ的なるもの」として受け取られてきた伝統を知る上で、興味深く読むことのできる内容だったように思います。

  • 良書! 買って損はない。

  • 結構難しかった

  • 図書館の本

    内容(「BOOK」データベースより)
    統一をへて世界の目の集まるドイツ―その国民性とは何か。ライン河とローレライ、菩提樹とさすらい人、南国イタリアへの憧憬、クリスマスの楽しい風習、緑ゆたかな森、という五つの視角から、日本人になじみ深い文学や音楽にもふれつつ「ドイツ的なもの」を描く。ゲーテ、ベートーヴェンからナチス、緑の党にまで説き及ぶドイツ文化案内。

    ドイツ的なもの このフレーズに惹かれて読んでみました。やっぱりベースにはイタリアへの憧憬、菩提樹や森に対する愛情、そして内に秘めるメランコリーなんかが大きな要素なんだと改めて思わされた。
    キリスト教とゲルマン信仰のすりあわせはもうちょっと知りたいと思った。
    ドイツ人の散策が1時間以上歩くことっていうのも納得。
    なんとなく、こうかな?と思っていたことをかなり裏づけしてもらったような気がします。

  • シューマンやブラームスの音楽からは,ときに「ためらい」とも「あこがれ」ともつかない様な,なんとも形容しがたい暖かな息遣いが聴こえてくることがある。2人がともに19世紀ロマン派の作曲家であり,それまでの作曲家よりもドイツという国家を強く意識していたことを想うと,その息遣いのなかに「ドイツ的」なるもののヒントが含まれているのかもしれない。

    その息遣いは,外面的な華やかさとは対極にあるものだと思う。一人,物思いに耽っているときにふと流れ出てくる旋律。内と外の均衡が崩れたその音楽は,しばし内省的で瞑想的な時のなかに沈潜し溺れていく。

    本書は,そのようなドイツ人のこころについて,「メランコリー」というキーワードから語りはじめていく。ヨーロッパの精神的伝統のなかにある「白いメランコリー」と「黒いメランコリー」,1514年に画家デューラーによって描かれた《メランコリアⅠ》,ドイツでしばしば「内面性」と呼ばれる瞑想的なメランコリーの獲得の過程・・・。

    18世紀後半のドイツ古典主義には,まだ「内」と「外」は均衡を保っていた。モーツァルトの音楽はときに悲しみが疾走するが,そこに溺れることはなく,すぐさま明るさを取り戻す。ベートーヴェンは精神の限りない苦悩のなかで,深くメランコリーのなかに心を閉ざした作曲家だったが,幾度となくその苦悩を打ち破った。新しい時代の鳥羽口に立っていた彼は,「外なる」政治にも積極的に関心を向け,それにより「内」と「外」の均衡を保ち続けた。

    しかしロマン派の音楽家は,次第に内と外の平衡感覚を失っていく。なかでも,もっとも「ドイツ的」な音楽を作ることを強く意識していたのはブラームスだろうと著者は言い,ブラームスの音楽を次のように描写している。

    「ブラームスの音楽を聴いていると,ドイツのもの悲しい秋の気配や,うす暗い森の情景が目の前に彷彿と浮かんでくる。イタリア人のように青空に向かって高らかにうたうのでもなければ,フランス人のように華麗に着飾るのでもなく,この世の無常を嘆きつつ,しみじみと自分の内なる心情をつづり,孤独にして甘く,メランコリックにして瞑想的な世界を繰り広げているのがブラームスの音楽,つまりは「ドイツ的」な音楽なのである」(p20)

    本書は序文で「ドイツ人とメランコリー」について考察した後,「ドイツ的」なるものを理解するために次の5つの主題を挙げている。(括弧のなかはそれに対応する日本の風物)。

    1,ライン河,とりわけローレライ(東海道,とりわけ富士山)
    2,菩提樹(桜)
    3,南国イタリア(中国文化)
    4,クリスマス(正月)
    5,森(海)

    国土の70%が森に覆われている日本を理解するためには,森と海はどちらも欠かせないんじゃないかしらん,と思ったけれど,この5つはとても分かりやすい対比になっていて,その後の章がぐっと読み易くなった。

    その中でも,2と3がとりわけ興味深かった。

    菩提樹はドイツの町や村のなかだけでなく,町や村をでたところの野原に1,2本立っている。そこは若者たちの逢引の場所になっているだけではなく,その町からでていった「さすらい人」が遠く離れた故郷や恋人を思い浮かべるときに登場する心の原風景になっている。さすらい人の側から菩提樹を見た有名な歌に,シューベルトの『菩提樹』がある。また,マーラーの『さすらう若人の歌』は,菩提樹をモティーフとしつつ,生と死の相克のドラマを描いたそうだ。

    また,南国イタリアは,一般のドイツ人にとって格別の意味を持っている。なかでもドイツ人のイタリア志向を決定付けたのは,ゲーテの『イタリア紀行』だそうだ。今でもイタリアを旅行するドイツ人は,多かれ少なかれゲーテのイタリア旅行を意識しているという。(もっとも「ドイツ的」な作曲家であったブラームスもイタリアに魅了され,生涯に8回イタリアを訪れた。また,ウィーン在住のフロイトさんもイタリア好きだったそうで,『フロイトのイタリア』という本があることを最近知った)。

  • (2006.07.29読了)(2005.04.09購入)
    ドイツ文学者が、「ドイツ的なものとは何か」ということについて考察した本です。
    「メランコリー」、「ローレライ」、「菩提樹」、「イタリアへ」、「光と闇」、「深い森」、などのキーワードを挙げて考察しています。ゲーテ、トーマス・マンが多く取り上げられています。「飛ぶ教室」のケストナーも取り上げられています。

    ●ローレライ(37頁)
    ローレライとは、マインツからコブレンツまでのライン下りのほぼ中間点にある高さ132メートルの岩山である。昔はルールライと呼ばれていた。ルールとは中世ドイツ語で「精霊」を、ライは「岩」を意味している。
    ●ドイツロマン派(58頁)
    ホメーロスの「オデッセイア」において主人公がセイレーンの歌声の魅力を巧みに脱したのに対し、ドイツロマン派の詩人たちはむしろ好んでローレライの魅力の虜となり、破滅への道をたどってゆく。
    ●「ローレライの上での逆立ち」ケストナー(62頁)
    第一次大戦後の疲弊と貧困の中でドイツ人は英雄待望論に取りつかれた。そして実際に英雄が現われた。その名をヒトラーという。しかしこの英雄は真の英雄ではない。ローレライの岩山の上で逆立ちしている英雄。それは善と悪、正と邪を「逆さに」取り違えたいつわりの英雄の姿である。
    ●大ドイツ主義(71頁)
    ヒトラーが最初に手がけた侵略政策は、ドイツ人国家であるオーストリア、及びドイツ人の数多く住むチェコのズデーテン地方の併合であったが、それに対してオーストリアやズデーテン地方に住む多くのドイツ人は反対するどころか、むしろ諸手を挙げて賛成した。むろん民族と国家を同一視する限り、他民族の排除は不可避である。
    ●死への誘惑(93頁)
    トーマス・マンは「ドイツとドイツ人」のなかで、「ロマン主義の深い本質は誘惑であり、それも死への誘惑である事は否定できない」と指摘し、いわゆるドイツ的「内面性」の淵源をこのロマン主義的な「死への誘惑」に求めている。
    ●ドイツにおける美人像(96頁)
    ドイツにおける美人像の一つのタイプは、青い眼、金髪、赤い唇、白い肌をした女性である。例えばゲーテの「ファウスト」第一部に出てくるグレートヒェンがそうだ。グリム童話の白雪姫のように、黒い眼、黒髪、白い肌をした女性はもう一つの美人のタイプである。
    ●イタリア(106頁)
    ドイツ人にとって、旅心を誘われる異国の地は、18世紀後半から今日に至るまで、何といってもイタリアである。旧西ドイツの人で、イタリアに行ったことのない人はほとんどいないといってもよいほどだ。
    ●クリスマス(152頁)
    キリスト教が広まる前から、12月25日にヨーロッパでは冬至の祝祭が行われていた。冬至、それは太陽の誕生する日である。キリスト教が伝来するとともに、キリストの誕生日は太陽の誕生日と重ねあわされ、またマリアの受胎告知は、それから9ヶ月前の春分の日(すなわち世界の第一日目)であるということになった。
    ●サンタクロース(154頁)
    サンタクロースの語源は「聖ニコラウス」であるが、聖ニコラウスは12月5日の深夜から12月6日の未明までの間にやってくる。日本やアメリカでは12月24日の深夜から25日の未明までの間にサンタクロースがやってくる。
    ●森(180頁)
    ドイツ人は森をこよなく愛している。ドイツ人にとって、森は散策をする場所である。ドイツ人は特に春の散策を好む。

    著者 高橋 義人
    1945年 栃木県生まれ
    1968年 慶應義塾大学文学部卒業
    専攻 ドイツ文学・思想

    ☆関連図書(既読)
    「ナチス裁判」野村二郎著、講談社現代新書、1993.01.20
    「ドイツの見えない壁」上野千鶴子・田中美由紀・前みち子著、岩波新書、1993.12.20
    「ヒトラーとユダヤ人」大澤武男著、講談社現代新書、1996.05.20

    (「BOOK」データベースより)amazon
    統一をへて世界の目の集まるドイツ―その国民性とは何か。ライン河とローレライ、菩提樹とさすらい人、南国イタリアへの憧憬、クリスマスの楽しい風習、緑ゆたかな森、という五つの視角から、日本人になじみ深い文学や音楽にもふれつつ「ドイツ的なもの」を描く。ゲーテ、ベートーヴェンからナチス、緑の党にまで説き及ぶドイツ文化案内。

  • 授業ない発表のために読みましたが、それに関係なく楽しめました。

  • ドイツ文化が様々な例を元にわかりやすく解説されている。
    なかなかオススメの一冊。

    ドイツ人ってほんと「遅れてきた国民」だったんですね。でもそんなドイツが好きさ。

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著者プロフィール

高橋義人(たかはし・よしと)
1945年、栃木県生まれ。1968年、慶應義塾大学文学部卒業。慶應義塾大学助手、京都大学教養部助教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、現在は、京都大学名誉教授。平安女学院大学特任教授。文学博士。
主な著書
『形態と象徴─ゲーテと〈緑の自然科学〉』(岩波書店、1988年)/『ドイツ人のこころ』(岩波新書、1993年)/『魔女とヨーロッパ』(岩波書店、1995年)/ゲーテ『色彩論【完訳版】』(共訳、工作舎、1999年)/『グノーシス 異端と近代』(共編著、岩波書店、2001年)/『グリム童話の世界』(岩波新書、2006年)などがある。

「2011年 『教養のコンツェルト』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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