日本の刑務所 (岩波新書 新赤版 794)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004307945

感想・レビュー・書評

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  • 日本の刑務所ってどんなの?ということを知るときにはとてもいい本だと思います。
    なぜか著者のサイン入り(爆)

  • ほとんどの人が、ドラマや小説の中くらいでしか知ることができない刑務所の中。筆者は関係者への丹念な取材から日本の刑務所内の実態を調査し、「囚人とは言え」その人権が蹂躙されていたり、不可解な規律があるなどを糾弾している。

    2002年に書かれた本だが、本書で書かれていることが実態なら「これは戦前戦後頃の話なのか」と驚くことが多かった。入浴の手順が細かく決められている、その入浴も毎日ではない、労務中に汗を拭ってはいけない、よそ見(チラッと横を見る程度)もダメでいずれも懲罰の対象になる、などなど。冷暖房がほぼ設置されていないというのも驚きだ。

    筆者も「罪を犯した者への懲罰」ということ自体を批判しているのではないことは繰り返し延べている。しかし刑務所の本来の目的である矯正、社会復帰を目指すという理念からは程遠い閉鎖的で人権を無視した実態を批判している。筆者か死刑廃止論者であることも大きな要素に思えた。

    本書を読んでいて、ふと「ブラック校則」を思い起こした。かつて程ではなくても、日本の学校の校則は刑務所のような「人権と価値観を無視した」ことがまかり通っている実態が今もあるということを。目的と手段を履き違えた管理者がまだまだ大勢存在しているのでは、と。

  • 2002年刊。著者は明治大学教授。

     例えば、刑罰たる罰金刑を科されても、他の法の保護や適用、規制を免れるわけではない。もし科刑を理由に他の法規範の適用・保護がないとなれば、同人の猥褻行為を処罰できないことになるし、あるいは同人への恐喝を適法とせざるを得ない。民法や消費者契約法といった法規範の適用がないとすれば、物を買うことすら違法と化してできないことになってしまう。もちろんかかる事態は許容出来ない。
     すなわち、刑罰を科されただけでは他の法の適用は免れないのは当然の理なのだ。
     そうであれば、別種刑罰のたる懲役・禁錮の科刑が、他の法規範の規制や保護を否定することにはならないのである。

     ところで、本書は、大多数の懲役刑案件が覚醒剤他の薬物犯と窃盗で、問題の実が累犯等頻回受刑者・高齢化現象と指摘する。いうなれば、現在、再犯防止という刑罰目的の不奏効が浮き彫りになってきているのだ。

     もちろん、再犯防止には、受刑者に対する規範意識醸成が必要なのは確かだが、それと同程度に、それよりも肝になるのが、社会復帰の援助・助長。後者のこの重要性を本書は示していると言えそうだ。
     そういう意味で、いわゆる社会保障制度の利用が受刑により切断されるという問題が大きくクローズアップされざるを得ないのは間違いない。
     すなわち、社会保障制度関連法の適用の否定が、法的に矛盾を来たしているだけではなく、その事実上の不適用が、刑事罰制度の目的を阻害している事実に気付かされる。

     さらに本書で浮かび上がる問題点は、海外との比較で見た不具合や国連人権規約違反。あるいは告知・聴聞・弁明の機会がなく、ブラックボックス化している懲罰制度だ。
     後者に関しては、受刑如何が対審構造の中で決定されても、その内実をブラックボックスの中で行刑側が変更できるなら、対審の実は絵空事と化そう。
     こういう気づきも生まれてくる一書である。

  • 吉村さんの「仮釈放」が更に生々しく感じられた。

  • 日本の刑務所における入所者は、繰り返し入所,高齢化,覚せい剤/暴力団関係が多いというのが特徴とのこと。
    日本の刑務所における懲役の賃金の低さを知った。

    より詳細な各国の比較が必要であることが分かった。

  • 筆者の見解についていろいろ意見があるようですが、それを考慮しても読む価値はあった。もちろん、この一冊の情報で全てを判断するのは危険ですが。

  • 日本の刑務者の生活の状況を外国と比較しながら報告し、改善すべき点の指摘がなされている。
    確かに諸外国と比べたら受刑者の人権が軽く扱われている面もあるのだろうと感じた。
    ただ、ここまで並べ連ねられると、逆に日本のほうがいいところってないのかな?と素朴に感じた。

    受刑者の人権をどこまで扱うかは、被害者重視の風潮になってきた最近では、ますます難しいテーマになっているのだと思う。

  • 徹底的に国際水準を満たしているか否かという研究者視点で書かれた一冊。行刑側の主張はほぼ公文書のみ。弁護士は意外と刑務所のことを知らないので勉強になる。こういうのは地味だが意味のある研究だと思う。勿論色んな反論は予想されるけれども,筆者の言うように批判のための批判ではないように思う。

  • 漠然としか知らない、というか公に知ることがない刑務所内生活の諸々。食事、入浴、出役、外部との交信、不服申立制度等。それぞれ形式にしかすぎず、人権もくそもない。特に懲罰に関しては濫用されているとしか言いようがない。大学の講義で「カンカン踊り」という身体検査について触れたので一読。読み進めるうち、こんな酷い監獄にもかかわらず在監者で累犯が多いのは何故かと思うが、出所後の待遇の問題なのでそれについても知りたい。著書には刑務所のとりわけ酷い現状をとりあげているのではなく、ごく平均的な内容が書かれているが故に驚くことが多い。

  • [ 内容 ]
    刑務所に入るとどんな権利が剥奪され、どんな日常生活を送るのか。
    面会、通信、刑務作業、累進制度、懲罰などは、実際どのように行なわれているか。
    受刑者からの聞き取りや、獄中から待遇改善を訴えた裁判例に基づいて実状を紹介し、国際的な人権規約や諸外国の例に照らして、日本の受刑者処遇の問題点を検討する。

    [ 目次 ]
    はじめに
    第1章 受刑者とはどのような存在か
    第2章 刑務所の日常生活
    第3章 外部世界とのつながり
    第4章 刑務作業は労働か
    第5章 規律と懲罰
    おわりに 受刑者の社会復帰を妨げるもの

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著者プロフィール

1934年生まれ。1957年中央大学法学部卒業。1964年明治大学大学院博士課程修了。1963~64年カリフォルニア大学犯罪学部留学、大学院在学中より法務省法務総合研究所研究官補(1962~67年)を経て明治大学法学部教授(2004年定年退職)。
現在 弁護士、明治大学名誉教授、法学博士(明治大学)。
[主要著書]
『犯罪学』(成文堂、1971年、現在八訂版)、『アジアの非行少年』(勁草書房、1985年)、『刑事政策の問題状況』(勁草書房、1990年)、『死刑廃止を考える』(岩波書店、1990年)、『死刑〈新版〉――その虚構と不条理』(明石書店、1999年)、『死刑廃止に向けて――代替刑の提唱』(明石書店、2005年)、『刑務所改革』(日本評論社、2007年、編著)、『社会のなかの刑事司法と犯罪者』(日本評論社、2007年、編著)、『死刑制度──廃止のための取り組み』(監訳、ピーター・ホジキンソン、ウィリアム・A.シャバス編、明石書店、2009年)、『日本の刑務所』(岩波新書、2010年、アンコール復刊)、『刑事司法――逮捕・裁判・服役そして社会復帰』(勁草書房、2011年)、『概説 少年法』(明石書店、2013年)、『受刑者の法的権利』(三省堂、2016年、改訂版)等。

「2016年 『Q&A 日本と世界の死刑問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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