サルトル: 「人間」の思想の可能性 (岩波新書 新赤版 948)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004309482

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  • 思想界において一時代を築いたサルトルを長年読みつづけてきた著者が、サルトルのヒューマニズムの思想の意義を力強く肯定している本です。

    本書の前半では、サルトルの哲学的著作や小説、戯曲が、人間の自由という観点から読みほどかれています。定型的なサルトル解釈でありながら、サルトルのあげる例や具体例にそって人間の自由の具体的なかたちを描き出していく著者の行論は、通俗的な解釈の図式を当てはめただけという感じを抱かせません。「各人をそれぞれのアンガジュマンへと送り返す」サルトルの志向を自家薬籠中のものとしている著者ならではの仕事ではないでしょうか。

    構造主義以後、アンチ・ヒューマニズムが思想界の主流となり、サルトルのヒューマニズムはもはや時代遅れのものとみなされることが多くなっています。著者はそうした風潮に抗って、「現代において倫理は不可欠であると同時に不可能である」と述べたサルトルの希望を、高く評価しています。このような著者の描くサルトル像は、最後の知識人と呼ばれるにふさわしいヒロイズムを感じさせますが、けっきょくのところどれほど有効な倫理思想を彼の仕事から引き出すことができるのかという疑問に答えが示されているようには思えないのも事実です。

  • [ 内容 ]
    現代に「参加」して生きるとはどういうことか?
    サルトル生誕百年。
    世界的に血なまぐさい暴力が繰り返される今こそ、「人間とは何か」を問い続けた二十世紀最大の知識人の思想が、新たなリアリティとともによみがえる。

    [ 目次 ]
    まえがき
    I 『嘔吐』から─出発点(1 私にとっての『嘔吐』 2 <人間>の思想の萌芽 サルトルの肖像─1)
    II 戦争、収容所、占領─戦時下の思想形成(1 <奇妙な戦争>と戦中日記 2 『存在と無』を読む 3 <アンガジュマン>思想の形成 サルトルの肖像─2)
    III 自由の実現は可能か─戦後の展開を読む(1 実存主義宣言 2 自由と連帯─小説『自由への道』と戯曲群 3 『聖ジュネ』または非人間の復権 4 家族論として読む『家の馬鹿息子』 サルトルの肖像─3)
    IV 闘うサルトル─知識人としての〈参加〉(1 マルクス主義との格闘─『方法の問題』から『弁証法的理性批判』まで 2 「サルトルを銃殺せよ」─アルジェリア戦争 3 五月革命と毛派 4 葬儀の日 サルトルの肖像─4)
    V サルトル再審─二十一世紀へ(1 < 父親殺し>の後に 2 破壊者/建設者、サルトル 3 友愛と暴力、そして倫理 4 人間化の運動─二十一世紀のサルトル)
    あとがき/参考文献/略年譜

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著者プロフィール

1959年、東京大学仏文科卒業、1966年、同大学院博士課程単位取得退学、同年より一橋大学勤務、のち教授。1996年、定年退官、関西学院大学教授。2002年退職。ジャン=ポール・サルトル、フランツ・ファノンなど、左翼抵抗思想の文学を専攻、翻訳し、評論活動をおこなう。また1986年、独身生活を勧めた『シングル・ライフ』がベストセラーとなる。訳書にサルトル『実存主義とは何か』(人文書院)、共訳書に、F.ファノン『地に呪われたる者』(みすず書房)、J・ジュネ『恋する虜』ほか多数。

「2015年 『家の馬鹿息子 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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