憲法とは何か (岩波新書 新赤版 1002)

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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310020

感想・レビュー・書評

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  • とても分かりやすく憲法や政治制度について書かれている。
    主に憲法改正論議の矛盾を突く内容。
    日本の統治構造、という中公新書の本を読んだ後だったので議院内閣制がなぜ大統領制より優れているかと言った問題については非常に興味深かった。

  • 「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」から。

  • 憲法は危険物です。取扱い要注意!
    って岩波新書も思い切った帯付けますね。
    内容も凄く読みやすい。

    憲法9条の解釈論はともかくだけど。

    最近の憲法改正論議って、何か怪しいとは感じつつ、まあ変わるのが世の流れか、新しい人権とか書き加えるくらいは、と思っていた自分のアホさを痛感。

    最近発表された自民党案は、なぜ思ったほど復古調ではなかったのか?という疑問にも納得いく答えがあたえられました(わかって無かったのは私だけ?)。

    成る程、憲法は取扱い要注意です。

  • 憲法については、左右どちらかの立場から感情的に論じられることが多く、左の立場からは、憲法改正は絶対に認めない、まして9条改正などもっての他、右の立場からは、アメリカが短期間で書き殴った憲法など改正するのが当然、軍隊の存在を認めない9条など真っ先に改正すべき、という論議になりがちです。

    この本は、左右どちらの立場にも偏らず、きわめて冷静に、論理的に憲法改正の無意味さ、大統領制よりも、議院内閣制がいかに優れている制度か、を論じています。

    9条に関しては、「たしかに自衛のための実力の保持を認めていないかに見えるが、同様に、「一切の表現の自由」を保障する21条も表現活動に対する制約は全く認められていないかに見える。それでも、わいせつ表現や名誉毀損を禁止することが許されないとする非常識な議論は存在しない。 21条は特定の問題に対する答えを一義的に決める「準則(rule)ではなく、答えを一定の方向に導こうとする「原理(principle)」にすぎないからである。9条が「原理」ではなく「準則」であるとする解釈は、立憲主義とは相容れない解釈である。」との一文に目を開かれる思いがしました。

    単なる感情で改憲を主張する人達(実を言うとこの本を読むまでは、私もその一員でした)に是非一読してもらいたい本です。

  • 32冊。

  • 長谷部先生の本です。

    とても読みやすく内容もしっかりしていると思います。
    立憲主義の成立から冷戦の終結、民主主義の台頭と順を追って述べてあります。

    章ごとに著者の書きたい内容や目的などが明確にまとめられており、読んでいて
    流れるように頭に入ってくるような気がします。
    ですが、読みやすくても書かれている内容は深く内容も濃いので繰り返し読むのが
    一番よいと思われます。

    憲法の本の中でも比較的よい本だと思います

  • 憲法改正については慎重にすべし、というのが著者の基本的な立場であるが、その理由は、ありがちな「護憲派」の主張のように、憲法の価値観を礼讃し、すばらしい憲法だから守るべき、というのとは少し違う。むしろ、立憲主義というものの危うさや、憲法という存在の特質にかんがみて、安易な改正をすべきではない、というのが著者の考えのようである。憲法の内容の善し悪しではなく、憲法や立憲主義というものの性質、本質から憲法改正を考えるという点で、著者の主張は一般の憲法論とは異なる水準にあると思われる。
    http://d.hatena.ne.jp/hachiro86/20061215#p1

  • 「立憲主義とは、こうした永続する闘争に終止符を打ち、お互いの違いを認めつつ、なお社会全体に共通する利益の実現を求めて、冷静に討議と決定を行う場を切り拓くプロジェクトであった」(p179)という前提のもと、国家の構成原理としての「憲法」とテクストとしての「憲法典」を区別し、テクストを改正するだけの「憲法改正」(=「憲法典」改正)を戒め、「憲法」をいかにするか個別具体的に、しかも熟慮をもって考えるべきと主張する一書。

    ただ戦前の明治憲法下の日本を、丸山真男の論を引きつつファシズム体制と断ずるのは少し単純化にすぎるような気も。戦前は明治憲法制定以来国家の構成原理としての「憲法」運用が破綻しかけながらも、議会も停止しなかったし社会民主勢力の成長も(萌芽的ではあるが)みられていたことをどう評価するのだろうか。現憲法のみが現在の日本のリベラル・デモクラシー状況を作り出したようにも読めてしまうのは、少し気になった。

    それから。
    「首相公選制は、この結びつきを分断することになるであろう。首相を生み出す役割から解放され、全国規模で勝利する意味を失った政党は、有権者全体にアピールすることに利益を見いだすこともなく、またそうした責務も感じないであろう。公選制で選ばれた首相は、それぞれの地元利益の実現に血道をあげる、まとまりのない議会と対峙することになりかねない」(p102)という指摘は、なるほど参考になった。

  • 憲法を護持しようと考えている人にも、改正すべきと思っている人も、日常生活で憲法と自身の関係性を見いだせていない人にも、参考になる指摘の多い本だと思います。憲法学者としてメディアへの登場も昔に比べれば増えてきた感のする著者ですが、その思考や発想の基礎を知る上でも良いと思います。

    憲法そのものへの問いかけではなくて、立憲主義という思想を理解してそれを現代の日本国憲法(正確には憲法典)が掲げる主義・思想とのバランスに議論の焦点がさだめられているところが特徴と言えます。立憲主義が前提する「違い」を当然視して受容し、相違を前提とした社会形成が実現するまでの途方もなく長い旅路を想起させる内容にはなっていますが、その長く平坦ではない道を進みだせてもいない、むしろ諦めて背中を向けているともいえる今の憲法論議を学問的視点から理解するきっかけを与えてくれると思います。

    さらにこの本が面白いと感じられる点は、各章の末尾に記載されている『文献解題』であると個人的に感じています。大学のゼミ生向けに書かれたことを意識させて、そこからさらに憲法論の古典や現代の世界的な憲法論議への扉を開いている意味でも、この本が出色であると思わせます。また、単なる紹介だけにとどまらず著者自身が推挙する本の重要性や感想、そしてこの『憲法とは何か』という書籍との貢献部分にまで触れられている点も憲法論への招待的位置づけを意識した構成と言えるかもしれません。

    変えるのか、変えないのか。「変化」そのものへの視点ばかりが強調される日本の憲法改正論議に足りないものが何かを知らしめてくれます。著者の長谷部氏は、NHKで放送されている『爆笑問題のにっぽんの教養』で最近出演していたのを見ていました。そのときに太田氏とかわしていた長谷部氏の憲法論が勉強になったところもこの本を読む事になったポイントだと思い返しています。

    いずれにせよ、これから先も政局において憲法論を展開されていくでしょう。その中で、一人一人が改正論議に声を発し、投票行動を通じて意志を表明する場に直面したとしても、大切な点は著者が本書冒頭で引用しているニーチェの言葉に帰結するのです。読み終わって、また最初にこの文章を読めば、その真たる意味に近づける気になるのです。

    「怪物と戦う者は、そのため自身が怪物とならぬよう気をつけるべきである」
    フリードリッヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』

    『文献解題』から派生して、私は長谷部氏の『憲法と平和を問い直す』を買いました。あと、いまさらながらルソーを読んでいないことに気づき、『社会契約論』にも読み進みたいと思います。だんだん国家と国民の関係性について考える方向に進んでいるような気がしますが、仕事におわれて自分のありようと法的に社会的に定義づけることについて考えを巡らすのも良いでしょう。

  • 日本中心大学蒲田キャンパス高木教授の本

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著者プロフィール

早稲田大学教授

「2022年 『憲法講話〔第2版〕 24の入門講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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