ポスト戦後社会: シリーズ 日本近現代史 9 (岩波新書 新赤版 1050 シリーズ日本近現代史 9)

著者 :
  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784004310501

感想・レビュー・書評

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  • すごく面白かった!!

    歴史を知ること、社会を知ることってのは、それだけで終わっちゃだめだね。その連続性の延長に、あるいは空間的な社会の形成過程に自分の存在を見なきゃいけない。
    メディアの報道では遠隔地の出来事の「同時性」がむしろそれを画面の中のイベントのように見せるけれども、本当に大事なのは、その出来事のどこに自分がいるかを考えることなんだと思うんだよね。
    そしてそれは歴史も一緒ですな。この本を読んで、この国、この社会の成り立ちと自分との連続性を少し見れた気がするんですよ。とても勉強になりました。

  • '70s以降をポスト戦後と位置づけ、そこに表面化している諸々の問題を敷衍しながら、日本というネイションとしての共同体の解体の進行を仄めかす。

    個別に、入れ替わり立ち替わり俎上に上がってくるような直近の社会的問題、例えば公害や凶悪犯罪、開発の失敗等々を、一冊のうちに見取り図的にまとめたという点では良書。また、「昭和を知らない」平成生まれ世代が昭和後期を知るための格好の一冊とも言える。とかく、われわれ平成生まれ≒ゆとり世代は「常識知らず」と言われるが、それは昭和のあらゆる重大事を体験していない以上、昭和の「常識」を共有していないのは当たり前なのだ。ゆえにこの本を読んで知っておくのもいいかもしれない。

    付け加えれば、この本はまだリーマンショックや9.11、政権交代など21世紀の大事件ににほとんど触れていないし、無論3.11に触れていない。ゆえに、この先はこの本から得られるものと共通しつつもまた大きく違った未来が展望されることだろう。昭和を体験せず、20世紀を忘れつつある我々は、それらをもう一度棚卸しし吟味しなくてはなるまい。いわばこの書はポスト戦後といいつつも、最も新しい歴史への入門書である。

  • 9784004310501 240+6p 2009・1・20 1刷

  • ▼戦後は1945年に始まり、1989年は冷戦の終わりだった。確かにそれも一つの歴史認識である。
    ▼しかし、いわゆる「失われた時代」は1990年の幕開けとともに始まったのだろうか。答えは否である。少なくともそのきっかけはそれよりも前にあったハズである。それが、本書で言うところのポスト戦後社会、つまり1970年代(後半)に遡るというわけだ。
    ▼ちなみに現在GDP世界第2位となった中国だが、その生活水準はと言えば、平均的には70年代の日本程度らしい。この事実をもって「日本もまだまだ」と、傷口を舐めあおうとするのではない。原発、反原発、そしてその補填(ほてん)という議論は盛んにされるが、誰がその分の電力が本当に必要かどうか提起したろうか(つまり、現在の「豊かさ」を捨て「十分に暮らせる」1970年代の生活水準に戻ってもいいのではないかという発想)。
    ▼もしかすると、私たち自身が必死に守ろうとしているものは虚構でしかなく、その「始まり」と「終わり」を見つけるためには、歴史を顧みることが一番の良薬なのでなかろうか。たとえそれがどんなに苦くとも。

  • 通史的なものではありませんよ。だから読み手を選んでしまうのかな……「社会学的な」ものへの拒否感がある方にはおすすめできません。「日本史の終わり?」というキーワードに興味がある人には、おすすめ。

  • 東京大学大学院情報学環教授・吉見俊哉(社会学)による岩波日本近現代史シリーズの第9巻。

    【構成】
    はじめに
    第1章 左翼の終わり
     1 あさま山荘事件と1970年代
     2 「運動」する大衆の終わり
     3 ベ平連とウーマンリブ、反復帰論
    第2章 豊かさの幻影のなかへ
     1 高度経済成長の頂点で
     2 消費社会と都市の若者たち
     3 重厚長大から軽薄短小へ
    第3章 家族は溶解したか
     1 変容する日本人の意識
     2 郊外化と核家族の閉塞
     3 虚構の世界へ
    第4章 地域開発が遺したもの
     1 反公害から環境保護へ
     2 地域開発とリゾート開発の結末
     3 農村崩壊と地域自治への模索
    第5章 「失われた10年」のなかで
     1 震災・オウム・バブル崩壊
     2 国鉄民営化から郵政民営化へ
     3 拡大する格差
    第6章 アジアからのポスト戦後史
     1 企業の海外進出と産業空洞化
     2 「海外」の経験・「日本」の消費
     3 「戦後」の問い返しと日米関係
     おわりに

     岩波の日本近現代史シリーズの第9巻は「ポスト戦後社会」がテーマである。ここまでくると既に歴史学の範疇からは外れ、完全に社会学的アプローチになっている。
     実証的な歴史学の手法からすれば、本書のような個別具体的な各論をもって時代の象徴的な事件・現象と位置づけるのは暴論と言っても過言ではない。
     本書で抽出される現象が、本当にその時代の表象であり、時流を具象化したものなのかということはかなり疑問であるが、そうでもしなければ分裂症の現代社会を論じることは不可能なのかもしれない。本書の中でとても首肯しがたい言説は数多くあるが、それが社会的潮流であると論じられると、明確に否定しがたい指摘も数多くあるのも事実である。

     歴史学の手法からは大きく外れてはいるが、本書の存在そのものが従来の歴史学・政治学的的手法に対する問題提起であるということも受け止めねばならない。本書の末尾において著者は以下のように語っている。

    「近代のいずれかの段階で、国民国家や帝国、植民地、資本主義と、諸々の巨大なシス
     テムが地響きを立てて蠢いていくなかで、たとえば日本史という、連続的な時間性と
     しての歴史が浮上してきたのだと思う。だから日本史は、その存立の根底にあるある
     種の虚構性というか、抽象を抱え込んでいる。日本史を語る者は、その抽象の危うさ
     に敏感でなければならない。
      本書がテーマにしてきたのは、そうして構築されてきた日本近現代の時間や主体が
     自壊していく過程である。」

  • [ 内容 ]
    バブルとその後の長期不況、深まる政治不信、そして高まる社会不安。
    列島が酔いしれた高度成長の夢のあと、何が待ち受けていたのか。
    崩れゆく冷戦構造のなかで、この国は次第に周回遅れのランナーとなっていったのではないか。
    六〇年代半ばから現在まで、政治・経済・社会・家族…すべてが変容し崩壊していく過程をたどる。

    [ 目次 ]
    第1章 左翼の終わり
    第2章 豊かさの幻影のなかへ
    第3章 家族は溶解したか
    第4章 地域開発が遺したもの
    第5章 「失われた一〇年」のなかで
    第6章 アジアからのポスト戦後史

    [ POP ]


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    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 図書館1階の学士力支援図書コーナーでは、大学の建学の精神に基づいた図書を3つのテーマに分けて配架しています。
    ・アイデンティティを求めて
    ・いかに生きるか
    ・視野を広げる、世界を知る力

    この本は→「視野を広げる、世界を知る力」

    配架場所はこちら→http://libopac.josai.ac.jp/opac/opac_details.cgi?lang=0&amode=11&place=&bibid=2000037898&key=B129965412011275&start=1&srmode=0

  • 膨大な内容を、よくまとめたな。というか、こうまとめてしまっては、なにもわからない。

  • 2010.10.02 60年代以降の日本についてとてもよくまとめられておりわかりやすい。ただもう少し、日本のポスト戦後とは、なんで、それは未来に向けてどう位置付けられるのか?などなど、解説があると良かった。そのようなことを語るべくシリーズではないのかもしれないが。

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著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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