日本の神話・伝説を読む: 声から文字へ (岩波新書 新赤版 1078)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004310785

作品紹介・あらすじ

古事記、日本書紀、風土記などに載っている上代の神話・伝説は、日本霊異記、今昔物語など平安時代以降の説話とはまったく違う特徴をもっている。スサノオノミコトの大蛇退治等の神話・伝説を読みながら、音の連想や書き手・聞き手の想像力がストーリーに反映する、その特徴を明らかにし、豊かな口承の世界の深層に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 古代の音節は88種もあったということにただただ驚き。元が口承なのに同音異字の書き分けが多いなぁと思ってはいたけど、そういう背景があったからできたことだったのか。
    ざっくりまとめとしては、以下のような感じ。

    -----

    古代の神話・伝説
    ・思想的なまとめの欠如
    →誰が何をした、いつどのようなことがあった、のみを淡々と語る
    ・一つの語がもつ音韻から類似の音韻をもつ別語への連想
    ・登場者のもつ名と話の内容との対応
    ・内容的に逆転したかたちの話の対応 など



    中世以降の説話
    ・外国の説話からの影響
    →思想的なまとめの付与
    ・話の展開やその内容がもつ奇抜さやひねり
    →すじ立てのおもしろさ

    -----

    丁寧に解説されていたので、古代の神話・伝説の連想関係については、口承文学ならではのものだったんだな、というのがとてもよくわかった。
    連想関係の事例として登場したなかでは、「すがる」という語の連想、蛇と刀と雷の連想関係やなんかの話は勾玉三部作好きとしてはやっぱりとてもテンションがあがってしまった。というか、あがった結果、また読み返したくなった(いつものパターン)。

    あと、以前に古事記の置目伝説の部分を読んだ時に、兄弟の名前が紛らわしいなぁと思っていたのだけれども、それについて古代は「o」と「wo」がはっきり別物だと区別されていたんだよ、という説明があったので納得がいった。他の話についてもそんな感じ。

    現代もやっぱり昔に比べて神様や天皇への畏敬が薄れて〜、という話をきいたりはするけれども、終章で最後に出て来た中世以降の説話の時点で既に古代に比べると神の霊威も天皇の威厳・権威も見受けられないという話は興味深かった。

  • 一つの音にいくつもの意味が込められている。
    言葉の持つ意味的な重層性が、伝承を文字化することによって失われてしまうことがある。
    漢字のもつ意味から離れて音に注目しなければならない。

    一つの語の由来を探っていくと、それと同じか類似する音韻を持つ別の語に行きつくことがある。
    だから古代の伝承に出ている語の意味を考える際には、柔軟な発想が必要である。

    引用している様々な資料を読んでみたくなる。

  • 人が死ぬのは、昔、黄泉の神と生者の神が夫婦げんかし、
    黄泉の神(妻)が「お前の国の人間を1日に1000人殺す」
    といったのに対し、生者の神が「なら、こっちは1日に1500人の産屋を建てるわ」といったから、1000人死んで1500人生まれる体制になった、という話が、なるほどと思いました。

  • 西暦700年代に「古事記」「日本書紀」や諸国の「風土記」が書かれている。それより以前に中国から文字(漢字)が伝わってきている。日本という国のあり方を他国に示すためにも、語り継がれてきたことを、文字化する必要があったのだろう。神話は神々の話である。人類の誕生についても語られる。人々にかかわりの深い穀物などの発生についても書かれている。実際にはありえないような話が多い。でも、それを非科学的だというだけで片付けてしまうわけには行かない。人間の脳の仕組み自体は2000年くらい前であってもほとんど差はない。たまたま現在は、科学技術の発達のため、見えなかったものが見えるようになったというだけのことだ。にもかかわらず、どうしてあり得ない話を書いているのだろう。そこに当時の人々の精神世界を見ることができるのだろう。本書ではどちらかというと細かな言葉の意味を調べているところが多い。少し読みづらい部分もあるが、初めて日本の神話に触れることができた。私のパートナーの実家は島根である。毎年、盆正月の2回出雲を通る。せっかくなのだからしっかり勉強してみようと思う。神話を知ると、いろいろな地名や川の名前・神社のなまえなどにも興味が持てるようになる。世界が広がるようだ。

  • S164.1-イワ-R1078 000499327

  • 平安時代以降の説話集は、神について触れられない、中国の説話や仏教観の影響を受けているに納得。
    神話や説話を言語学的に解説したような本。

  • もうちょい、日本神話や伝承の細かい内容に突っ込んでくれてるのかな、と思ってたから、全体としてちょっと物足りなかった。著者の研究範囲について知るためか、ある特定のエピソードについてのみ掘り下げる場合には適切な本だと思いますが、神話全体について包括的に知るにはやや狭い。

    序盤は、文字が無い時代の神話・伝説の記録方法が口承のみだったため、その受け手・語り手の連想・想像次第で内容が少しずつ変容した、という論を展開。音の似た別名をたくさん持っている神が存在するのは、それによって説明できるというのは首肯。

    後半は、完璧に各論です。
    序盤と繋がる部分もあるけど、関心が無い分野については正直あんまり楽しくない(笑)

    全体的に、趣味の範疇を超えない本ですね。「日本の神話・伝説の背景を読む」とかにしておいた方が、より適切なタイトルになったのかもしれません。でも、タイトルにするにはやや長いか。

  • 「物語」の原点である語り伝えが、どのように物語に影響を及ぼすのか。
    文字のない時代、耳で聞いて語り伝えることで、人々の想像力を膨らませ、物語自体が成長していく。
    「古事記」「日本書紀」についての本を読むのはこれが初めてだったが、とても読みやすく初心者向き。
    音韻からみた言語学的視点も面白かった。

  • 日本の神話伝説が言葉の音やイメージをふくらまわせて、重なりあわせて作られたもの、という解説は面白かった。
    ただ、なにか大胆で新しい発想は特に無かったので、ふーんという感想に止まってしまった。

    ちょっと感心したのは、天皇にとって国讃め(その土地を褒め称える言葉を口にすること)が重要な責務であったこと、そしてそれは多分、日本各地への行幸として今も続いているのだなということ。

  • 古代日本語学の見地から神話・伝説を読む。音の連想や聞き手の想像力が物語に反映しているということである。
    神話や伝説はそれ自体とてもおもしろい。そして、その成立過程や内容に含まれた謎がまたたいそう魅力的である。が、本書は、その謎のごく周縁部をかすめているだけだ。「音の連想」では、世界中に類話が分布していることが説明できないし。
    書いてあることは間違いないのだろう。が、たいした例がない。「そうだとしてそれが何?」と思ってしまう。

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