反貧困: 「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書 新赤版 1124)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004311249

感想・レビュー・書評

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  • これは必読です。
    弱者への差別がなきようにぜひ読んでほしいもの。
    これを読んだら「自己責任」と言う人は
    働いても~の人にはいないというのが分かるはずです。
    (浪費なんかする状態にもない)

    しかしながら腹立たしいのは役所の対応です。
    一人では突っ返すくせに第三者がいるとそうでない。
    変ですよね。
    (中には本当にインチキする愚か者はいますが)

    それと派遣会社のあれは
    すごくひどいですよ。
    実際に行った人が言っていましたもの。
    こういった待遇が消えることを願うばかりです。

  • 貧困・・・自分には関係ないと思ってしまうかもしれないけれど、明日は我が身、と言えなくもない日本。

    この本を読んで、ホームレス、ネットカフェ難民と言われる人々への見方が変わりました。
    と同時に、私たちは何も知らされていないということ、政府や経財界の人たちは、国民を見捨てても、自分たちが潤うことしか考えていないということがよく分かりました。

    http://glorytogod.blog136.fc2.com/blog-entry-940.html

  • 貧困が社会の安定のために解決しなければならない大きな問題になっていることを再認識。
    「溜め」の理論は興味深かった。貧困だけでなく、社会全体にも当てはまる話。内部留保への考え方など。

  • やっぱり貧困問題に関わりたいと思った。日本の貧困問題はまだまだこれからだと思う。

  • 前向きな気分と憂鬱な気分、両方を感じた本だった。

    著者の主張は「貧困は自己責任ではない」という点に貫徹していて分かりやすい。
    なんといっても現場での活動に従事している人だから、
    出てくるエピソードが生々しくてこれまた興味を誘う。
    「生活保護を申請にしに役所に行ったら、役人に嘘を言われて帰された」
    ということが常態化しているとするなら、少なくともこの国はまともではない。
    そして状況を変えよう、と頑張ることへ素直に拍手を送ってよいのではと感じた。

    一方で、人の意識を変えることの難しさに頭が痛くなる。
    貧困の渦中にある人に対し、「自己責任だから放っておけ」という言説が通用するのは
    「自分には関係ない」という考えがあるからではなかろうかと。
    自分が転落することが想像できない、あるいは想像できるとなおのこと、
    「他の人に配慮している余裕はない」となってしまうのかもしれない。
    ともすれば余裕が欲しくてしょうがないので、やっぱりリソースの分配ということには
    ならない気がするのです。
    どうすればいいんだろうな。

    恐らく、貧困の問題を解決していくためには、もっと身近なイシューとして
    自分に引き付けて考えるための仕組みが必要なのではなかろうかと思う。
    金だけでなく、金で解決しきれない部分をフォローするための仕組みが必要で、
    それはやがて自分を支えるものでもある、というような。

  •  「年越し派遣村」の村長としても話題になった貧困問題のエキスパートによる本。日本は一度足を踏み外すとどん底の生活を余儀なくされ、自力で這い上がることのできない「すべり台社会」になっていることを説く。

     その原因は「五重の排除」にあると著者は述べる。曰く、

     ①教育課程からの排除(高等教育を受けられない)
     ②企業福祉からの排除(雇用保険、社会保険に入れない)
     ③家族福祉からの排除(親や子に頼れない)
     ④公的福祉からの排除(生活保護など公的扶助を受けられない)
     ⑤自分自身からの排除(自責の念に駆られ、生きる希望を見出せない)

     である。政府としては貧困を認めたくないという考えがあるので、表には出にくい面もあると主張する。生活保護の濫給(不正受給)が1万4669件(2006年まで)に対して漏給(必要な人が生活保護を受給できない)は600~800万人分にも及ぶらしい。

     小泉改革以来のことか、日本には貧困者に対して「自分の意思で派遣やフリーターをやっているんだろう」とか「怠け者」と言葉を投げかけ、貧困の問題を「甘え」であるとして自己責任論に矮小化しようという風潮が見られる。

     確かに私も貧困問題について自己責任を完全に否定することはしません(生活保護費を酒やパチンコに使うのはさすがに…)が、この本で紹介されている奥谷発言はさも派遣労働者が簡単に会社を休んだり、正社員への道を選べるかのようにとれる。実情を無視した見識の狭い発言だと思った。

     著者は「溜め」があれば生きていけることを主張する。「溜め」とは溜め池の水のようなものであり、それは貯金であったり、職業資格であったり、頼れる家族や友人であったりする。アマルティア・センの「潜在能力(衣食住を満たすための個人的・社会的自由)」と同じような概念である。貧困は「溜め」を奪われた状態と解釈することもできる。

     私にとってはこうした問題は他人事として看過することはできない問題である。生活保護受給世帯が増えつつある中で、豊かな社会とは何か、ということを考える上で繰り返し読みたい本。

  • [ 内容 ]
    うっかり足をすべらせたら、すぐさまどん底の生活にまで転げ落ちてしまう。
    今の日本は、「すべり台社会」になっているのではないか。
    そんな社会にはノーを言おう。
    合言葉は「反貧困」だ。
    貧困問題の現場で活動する著者が、貧困を自己責任とする風潮を批判し、誰もが人間らしく生きることのできる「強い社会」へ向けて、課題と希望を語る。

    [ 目次 ]
    第1部 貧困問題の現場から(ある夫婦の暮らし すべり台社会・日本 貧困は自己責任なのか)
    第2部 「反貧困」の現場から(「すべり台社会」に歯止めを つながり始めた「反貧困」)
    強い社会をめざして-反貧困のネットワークを

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    [ 参考となる書評 ]

  • 有名な湯浅氏の本。
    今更ながら読む。
    貧困について様々な角度からほりさげている。
    一度踏み外すと奈落の底まで落ちていくすべり台社会。
    溜めという表現で、お金だけでなく人間関係などの貧困についても触れる。
    北九州がかなり批判的に書かれているけど、生活保護行政というのはここまで自治体格差があるものなのか。
    最低賃金と生活保護、介護保険、医療保険、年金、憲法25条、さらには9条まで、政策の根底は繋がっていて、ややもすると底下げのスパイラルがおきがち。
    それは、私もそうだけど、日本人の生活保護に対する偏見も一因のようだ。
    わかりやすいけど難しい。
    もう一度読み込む必要があると感じている。

  • 湯浅氏は東京大学の博士課程在籍の後、野宿者や生活困窮者の支援活動を続けてきた人。本書は、日本社会に「貧困」が厳然と存在しているという事実を伝え、貧困問題を我々市民及び社会がどのように捉えるべきか・そしてそこから如何に脱却するかを、著者自身の活動経験を踏まえて論じている本。

    日本社会は、「雇用」「社会保険」「公的扶助」の三層のセイフティネットが適切に機能せず、一旦足を踏み外すと一気にどん底の貧困状態まで転落してしまう「すべり台社会」だという。発端は90年代の長期不況の中で、財界の主導下に労働者の非正規化が進み、雇用が不安定化したことだ。更に非正規の労働者ほど社会保険のネットからも零れ落ち、最後に役所で生活保護を申請しようとしても違法に却下される。こうして貧困層に転落した者が、最悪の場合には犯罪(児童虐待、親殺し etc.)や自殺に走ってしまう。「先進国」の中で教育費の家庭負担が極めて高い日本社会では、親世代の貧困が子世代へと引き継がれてしまう。挙句、日本政府はこうした貧困問題を調査・認知しようとしない・・・。

    湯浅氏は「貧困」という概念を単なる所得の低さではなく、"望ましい生活状態にアクセスできる現実的な可能性"としての"溜め(経済的な"溜め"としての金銭や資産だけでなく、いざとなったら助けてくれる親族・友人等の人間関係上の"溜め"、自分に対する自信等の精神上の"溜め" etc.)"が総合的に欠如している状態であると捉えなおす。つまり「貧困」とは、"望ましい生活状態"が現実的な選択肢とはなり得ない状況であり、この観点から「貧困=自己責任」論を明確に批判している。もっといえば、「貧困」とは、「貧困」を生み出せてしまうほどに"溜め"を欠いた社会の側の問題である、とする。こうして、「誰に対しても人間らしい生活と労働を保障できる」「人間が人間らしく再生産されて」いく「強い社会」が目指される。

    興味深いのは、先日取り上げた堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』と同様に、本書でも貧困と戦争の関係に触れていることだ。貧困に免疫のない社会は戦争に免疫のない社会でもあると言い、「憲法九条(戦争放棄)と二十五条(生存権保障)をセットで考えるべき」だとする。

    冷静かつ知性的な文章の下に流れている血の温かさが、本書の随所に感じられる。「生を値踏みすべきではない」という湯浅氏の言葉は重い。堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』と併せて読みたい。

  • 年越し派遣村で有名な湯浅氏の本である。
    派遣村への反発もあったのでどちらかというと貧困問題には興味がなかったし、貧困問題に取り組む人は必ず小泉改革=悪の論調で私の考えと合わないので敬遠していたが、とりあえず読んでみることにした。
    読んでみて思ったことは、「かわいそうだからお金つぎ込んで何とかして」という論調では決してないことだ。わずかな支援で社会生活を営むことができる人たちがいることと、それで健全に働くことができる人が増えれば社会トータルとしてプラスになる、という点に共感できた。また、湯浅氏の現状分析も優れており、納得させられるものがあった。
    また、湯浅氏の行動は一方的な正義感を振りかざすものではないことが分かり、好感が持てた。
    一度読んでみることをお勧めする。

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著者プロフィール

「反貧困ネットワーク」事務局長、「自立生活サポートセンター・もやい」事務局長。元内閣府参与。

「2012年 『危機の時代の市民活動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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