ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書) (岩波新書 新赤版 1225)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004312253

感想・レビュー・書評

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  • 貧困層から金をむしり取るアメリカの経済システムについて綴ったドキュメンタリーの第二弾。読めば読むほどへこむ内容。
    TPPに参加するとISD条項により国保が攻撃されて国民皆保険制度が崩壊すると言われているが、本書に書かれているような地獄がこの日本にも訪れるのだろうか?
    「刑務所ビジネス」ってもの21世紀の奴隷制度そのもの。これも未来の日本の姿だろうか?

  • 医療、教育が崩壊、または資本主義を軸に
    まわり若者や弱者が這い上がれないアメリカ。

    やばいね。

  • 刑務所ビジネスの話に驚愕。前著は戦争経済だったが、今回は犯罪者を生み出し、固定化する構造に斬り込む。

    構造の変革は、リーダー任せでは無く、たえず運動を組織化し、働きかけていく、選挙だけではない、民主主義のあり方が求められる。

    自己責任という名の分断工作、人を崖っぷちに追い込み、食い物にする。そこにノーと感じさせる世論の形成が大事だと感じた。

    ・アメリカの医療費はGDPの15%
    ・歯と貧困
    ・最低賃金は3ドル
    ・囚人生活にも借金
    ・ 赤の他人と関わることができる場こそが、社会。
    ・犯罪を減らすのは厳罰ではなく教育
    ・失業統計の見方

  • いやぁアメリカはひどい。
    企業ってどうもこう信頼を置く?

  • 行き過ぎた市場原理主義。自由競争。公共サービスの民営化による弊害。その結果…。

  • 今回の舞台はオバマ大統領初当選後のアメリカ。大学の授業料と奨学金の利息が増加し続け、若者が貧困に喘ぐ。企業年金の崩壊。前作の課題点だった医療保障(保険)の改革。最後は、現在の日本では考えられないが、刑務所ビジネスのしくみ。心配なのは、これらアメリカで生じている問題が、将来の日本で起こり得る可能性があるのだという事。金融、保険、医療、法律家だけに都合の良い社会なんかは不健全だと思う。201307

  • アメリカでは社会の貧困化が加速している。
    貧困大国アメリカの現状をルポした第2弾。
    刑務所の民営化というのも、アメリカらしいというか、巨大ビジネスとして成り立っているそうです。

    一番こわいことは、市民がいろいろなことに疑問を持たなくなり、気がついたら声すら自由に出せない社会となっていること、まさにいまの日本もこのような状況なのでは?

    著者曰く「民主主義はしくみではなく、人」

    ひとりひとりが深く考え声をあげていくこと。ということで、大変刺激となる一冊でした。

  • 「市場に任せ過ぎると、こうなる」、ということが、よくわかった。

    官がダメなら、民という考え方は、ケースバイケースでよく検証しなければならない。

  • 第1章は『教育と借金地獄』について。急上昇する大学の授業料と急速に膨らむ学資ローン負担。卒業後も定職に就けない学生にとって、ローン負担は極めて重い足かせとなる。働いて返済するはずのローンが、逆に社会に出てからもどんどん膨らんでしまうのだ。学資ローンは、消費者保護法から外され、自己破産しても免責されず、厳しく取り立てられる。そして、巨大マーケットと化した学資ローンビジネスに参入する民間企業が、この傾向に拍車を掛ける。大学教育に期待を持つ中流階級が犠牲者となる。

    第2章は『崩壊する社会保障』について。未整備な社会保障、物価上昇、高齢化の中、クレジットカード文化、消費大国アメリカの問題点が噴出している。

    第3章は『医療問題』について。製薬業界と医療保険業界によって事実上支配される米国の医療。その中で、米国の医療制度は疲弊し崩壊しつつある。患者との接点になるプライマリケア医師は、(相対的に低い所得水準と過酷な労働条件から)医学生に人気がなく、より高給が得られる専門医への志願者が多いという。高い学資ローンを抱える医学生が、高収入を期待できる専門職医師を選ぶという傾向が見られる。また、2009年に医療費が払えず破産申請した国民90万人のうち75%が医療保険を持っているという。破産の原因は、高すぎる医療費と保険料にある。

    第4章は『刑務所と巨大な労働市場』について。刑務所内の囚人は、第三世界の安価な労働力よりも安くて質の高い労働力になっている。また、民営刑務所は1990年の5箇所から、現在では100箇所以上に増えており、刑務所REITまであるという。確かに、民営の刑務所は、州の財政難を解消する上で魅力的なオプションである。しかし、刑務所は社会復帰に向けた職業訓練の場ではなく、単なる巨大な労働力の供給源と化しているようだ。社会復帰の可能性が絶たれ、刑務所内でしか労働の場が見出せず、刑務所内でしか生活できない「仕組み」が構築されつつあるとしたら、空恐ろしい。囚人は、刑務所にいる間も一定の生活費を負担する必要があり、服役期間中も借金が膨らむ。歯磨き粉1本入手するのに、50時間も働かなければない。

    学位がないと良い職につけずワーキングプアになるという恐怖(=教育への期待)、病気への恐怖、テロへの恐怖(=ホームレスや軽犯罪の取り締まり強化)。こうした『恐怖』によってアメリカ国民がコントロールされ、そこから様々な『歪み』が生み出される。

    この『歪み』を市場と捉えて、市場原理によって解決しようとするのがアメリカの姿。しかし、社会的に見て望ましくない『歪み』も、市場参加者にとっては、魅力的な『市場』に映るだろう。そして、この『市場(=歪み)』は、市場原理では決して解決しないことは想像に難くない。

  • 第二段。今回はオバマ以降、アメリカはどうなったのか、が主眼。当選当初の国を挙げての大熱狂以降、カの国に関して、特に何が変わったって話も聞かないな、ってのが実感だったけど、本当にそうだったんですね。でも再選まで果たしたってことは、それなりに実績が上がったからなのかと思ってました。change we needも絵空事だった訳でしょうか。刑務所まで民営化されて、そこで熱いビジネスが繰り広げられてる、ってのもビックリだけど。

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著者プロフィール

堤 未果(つつみ・みか)/国際ジャーナリスト。ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業。ニューヨーク市立大学院国際関係論学科修士号。国連、米国野村證券を経て現職。米国の政治、経済、医療、福祉、教育、エネルギー、農政など、徹底した現場取材と公文書分析による調査報道を続ける。

「2021年 『格差の自動化』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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