医学的根拠とは何か (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004314585

感想・レビュー・書評

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  • "医学と仮説"とセットの本とのこと。
    まだ飲み込み切れてないし、疫学以外の医学の価値をあまりに低く見てる気もするけど、そこを割り引いてもとても大事なことを言ってるっぽい。自分がまさにメカニズム派あるいは病態生理派であるだけに、なおのこと響く。



    例えば、

    メカニズムがわからないと環境因子の効果自体を認めないってのは全くおかしい。

    日本の医学部がラボ的な実験医学にあまりに傾倒しており、本来なら医学部で多数行われてよい臨床研究ができていない。臨床研究あるいは医療統計の教育環境が貧しい。

    食中毒の原因が細菌でもウィルスでもなく、先行する知見のない毒物だった場合、病原体探しは無意味、あるいは、判断を遅らせるならば有害。原因物質の同定はあとでやればよく、速やかに疫学的な判断を行い人々を原因から遠ざけねばならない。


    ただし、個々の患者を治療しようとする臨床医と、疫学あるいはEBMの相性が微妙なところなのは逆によくわかった。原因のわからない高血圧の患者を前に、減塩と降圧剤だけ勧めて終わりにするのは、EBM的にはOKかもしれないが、やっぱり医療としては違う。何か妙な原因を隠しているかも、、という直感を元に行った別の検査で真の治療標的が見つかり的確な処置が可能になることもあるし、その意義はこの本では十分に論じられてない。このあたりは"不確かな医学"に記述あり。
    他方、集団のふるまいを論じる上では、個別の患者が別の原因で発症している可能性を全て排除する必要はない。それは2×2図で結論すること。


  • 医学的根拠つまりエビデンスには三つあり、それぞれ直感、メカニズム、数量化に分かれる。大学の経営や高等教育研究にも通じる記載が多くとても参考になった。大学のIRは疫学から学ぶことが多いかもしれない。

  • 日本において統計学的分析が広がらない現状を警鐘を鳴らす。

  • 疫学/EBM(エビデンスベースト医療)の入門書。入門書ではあるけれど、口が悪いw 「辛口批評」というよりは怨念。とはいえ、津田氏の他の本に比べれば怨念の顕在度は小さいので、さすが岩波新書だなと思ったw

  • 歴史的には医学的根拠は3つ存在する。個人的経験を重視する直感派、生物学的研究結果を重視するメカニズム派、疫学を重視する数量化派。国際的には、数量化が直感やメカニズムよりも優先すべき科学的根拠と合意されている。日本ではまだこの優先順位についての合意がない。そのために被害が拡大した水俣病、O157、SIDS、PM2.5、タバコとがんもしかり。そして福島。実態は日本では疫学を知らず、メカニズム信者の医師が多数を占めているからという事実。

  • 痛快な本。一気に読み切った。これまでの、そして現在も続いている医学研究や教育についての問題点を痛快に書かれている。ここまで書いていいのだろうかと実名で色々な研究者を批判もしている。数量化の著者による直感派やメカニズム派への批判であるが、数量化が現在の科学的根拠となっている。水俣病や放射線の問題も直感派やメカニズム派の意見のために間違った結論しかでていないと手厳しい。EBMもこのように説明されると理解しやすいが、素人のような読後感となってしまった。

  • 日本の医学界の閉鎖性をエビデンスを軸に追及しているのだが、これだけ国際的な学術交流というものが盛んでありながらそこまでガラパゴスになれるものかという疑問も拭えない。

  • 日本でいまだに続いている医学的根拠の混乱について、疫学者の立場からするどく問題提起している。
    自分の中にも、直感的判断、メカニズム重視の思考、統計学的根拠それぞれが混在しているのを思い知らされる。
    「真実とは何か」に一歩近づくことができる。

  • 疫学の入門として読みやすいんではないかな。

    疫学史や、日本へ近代医学が導入された歴史を ①直感派、②メカニズム派、③数量化派のキーワードを用いながら概観して最近(2014現在)の医学研究に絡む時事問題まで至り、そこから日本の医学部教育の問題点(非科学性)を明らかにしていく。

  • 知人に統計の勉強をしたいと言ったら、貸してくれた本。気軽に読める本ではないけれど、目次を見ると、理解しておきたいとても重要な内容であると思われる。早く読みたい。

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